ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode29

『離れて気づくもの』

― 人は、いなくなってからではなく、残していったものを見て気づく。―

Day:Monday(共同生活29日目)



Scene7【UNSEEN】

『ホテルの夜』

Monday|11:50 PM



海外。



一日のフライトを終え、

チアキはホテルの部屋へ戻ってきた。



制服をハンガーへ掛け、

窓際へ歩いていく。



大きな窓の向こうには、

異国の街並み。



高層ビルの灯りが夜空へ溶け込み、

車のヘッドライトが静かに流れていく。



何度も見てきた景色。



何度も泊まってきたホテル。



それなのに今日は、

少しだけ違って見えた。



ガラスに映る自分をぼんやり見つめながら、

小さく息を吐く。



「……静かだな。」



その言葉は、

部屋に吸い込まれるように消えていった。



ベッドへ腰掛け、

スマートフォンを手に取る。



画面には、

404 HOUSE グループチャット。



通知がいくつか届いていた。



スングァン。

『今日の夜ご飯!チアキのきんぴら最高だった!』



その下には、

食卓を囲むみんなの写真。



湯気の立つ料理。



笑い合う十人。



スニョンが大きくピースをして、

チェリンが笑いながらそれを見ている。



ジョンハンは少し照れたように笑い、

ウォヌはカメラから少しだけ目線を外している。



ミンギュは、

テーブルの上の副菜を指差しながら笑っていた。



その写真を見た瞬間、

チアキの頬が自然と緩む。



「もう……。」



「ちゃんと食べてくれたんだ。」



胸の奥が、

じんわりと温かくなる。



続いて、

スングァンから新しいメッセージ。



『ちゃんと寝てね!』



そのあとに、

スニョン。



『帰ってきたらまた皆でご飯!』



チェリン。



『お土産話、楽しみにしてる☺︎』



ユナ。



『気を付けて帰ってきてね。』



短い言葉。



それなのに、

一つひとつが、

疲れた心へゆっくり染み込んでいく。



チアキは画面を見つめたまま、

小さく笑った。



指先が、

自然とキーボードへ触れる。



『ありがとう。』



少し考えて、

もう一行だけ打ち足した。



『みんなも、ゆっくり休んでね☺︎』



送信。



すぐに既読が増えていく。



『はーい!』



『おやすみ!』



『また明日!』



画面いっぱいに並ぶ、

いつものやり取り。



チアキはスマートフォンを胸の上へ置き、

もう一度窓の外を見た。



異国の夜景は、

相変わらず美しかった。



けれど今、

心に浮かぶ景色は違う。



朝、

「おはよう。」

と声を掛け合うダイニング。



誰かが笑って、

誰かが料理をして、

「おかえり。」

という声が自然に聞こえるリビング。



あの家の灯り。



気づけば、

自分の帰る場所として思い浮かべていた。



「……早く帰りたいな。」



その言葉には、

もう迷いがなかった。



ホテルの窓に映る夜景よりも、

404 HOUSEのみんなの笑顔の方が、

今はずっと近く感じられた。



【STAFF NOTE】



共同生活29日目。



離れて初めて気づくことがある。



会いたい人。



帰りたい場所。



何気ないグループチャット。



短い「おやすみ」の一言。



そのすべてが、

いつの間にか日常になっていた。



人は、

“帰る場所”ができた時、

初めてその場所を「家」と呼ぶのかもしれない。



次回予告

Episode30

『404 Choice』



共同生活30日目。



初めて、

自分の気持ちを紙に書く夜。



けれどその前に、

404 HOUSEには、

もう一つの大切な一日が待っていた。



「おかえり。」



その何気ない一言が、

いつもより少しだけ、

特別な意味を持ち始める。




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