ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode30

『404 Choice』

―「気になる」は、まだ恋とは限らない。―

Day:Tuesday(共同生活30日目)



Scene4

『いつもの家』

Tuesday|07:00 PM



404 HOUSE。



車がゆっくりと門の前で止まる。

夕暮れの空は茜色から群青へと変わり始め、

庭を抜ける風が昼間の熱を少しだけ和らげていた。



ジョンハンがトランクからキャリーケースを下ろす。



「着いた。」



チアキは家を見上げ、

小さく息をつく。



「……やっぱり落ち着きますね。」



ジョンハンは穏やかに笑った。



玄関のドアを開ける。



「ただいま。」



チアキの声が、

家の中へやさしく響く。



すぐにリビングから声が返ってきた。



「おかえり!」



足音が近づき、スングァンが真っ先に顔を出す。



「やっと帰ってきた!」



その後ろからスニョン、チェリン、ユナ、ソヨンたちも笑顔で集まってくる。



「おかえり。」



玄関は一気にあたたかな空気に包まれた。



チアキは思わず笑顔になる。



「ただいまです。みんな元気でしたか?」



「それはこっちのセリフ。」



スングァンが笑う。



「家、ちょっと静かだったよ。」



チェリンも頷く。



「副菜はちゃんと食べたけどね。」



「美味しかった。」



その言葉に、チアキはほっとしたように微笑んだ。



「よかった。」



その時、リビングの奥からミンギュが歩いてくる。

仕事から帰ったばかりなのか、シャツの袖を軽くまくっていた。

チアキを見ると、自然に表情が柔らかくなる。



「おかえり。フライトお疲れ様。」



短い一言。

けれど、その声には確かな安心が滲んでいた。



そして、チアキの横に置かれたキャリーケースへ自然と手を伸ばす。



「これ、持つ。」



キャリーケースを受け取るミンギュ。

その動きは、あまりにも自然だった。



チアキはその背中を見ながら、思わず口を開く。



「あ、ありがと……」



言った瞬間、自分ではっとする。



「あ……。」



耳まで赤くなり、照れたように笑う。



「ありがとうございます、でした。」



ミンギュは一瞬目を丸くしてから、声を立てずに笑った。



「別に。」



「そのままでいいのに。」



その一言に、チアキは照れ隠しのように小さく首を振る。



少し離れた場所で見ていたスニョンが、肘でスングァンを軽くつつく。



「……また出た。」



「出たね。」



二人の小さな会話に、チェリンもくすっと笑う。



ジョンハンはその様子を少し後ろから眺め、

静かに口元を緩めていた。



リビングへ向かう足音。

誰かがお茶を淹れる音。

テレビから流れる穏やかな音楽。



「おかえり。」



その一言だけで、

家の空気はまたひとつ完成した。



チアキはリビングを見渡し、

自然と笑みを浮かべる。



離れていた時間は短かったはずなのに、

帰ってきた安心感は、それ以上に大きかった。



【STAFF NOTE】



共同生活30日目。



「おかえり。」



毎日交わしてきた言葉。

けれど、少し離れたあとに聞くその一言は、

いつもよりずっと温かく感じられる。



気づけば、

迎える人も、

迎えられる人も、

この家を「帰る場所」と思い始めていた。



次回 Scene5

『404 Choice』

Tuesday|08:30 PM



夕食を終えた頃。



リビングのテーブルに、

一通の封筒が置かれる。



そこには、大きくこう書かれていた。



「404 Choice」



共同生活一か月。



それぞれが初めて、

“今、一番気になる人”と向き合う夜が始まる。




ノベルに戻る I Addict