ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode31

『昨日と同じ、今日じゃない』

― 一度意識した気持ちは、元には戻れない。―

Day:Wednesday(共同生活31日目)



Scene3

『静かなカフェ』

Wednesday|01:00 PM



住宅街の小さなカフェ。



木の温もりを感じる店内。



平日の昼間ということもあり、

店内にはゆったりとした時間が流れていた。



窓際の席に座る、

ジョンハンとチアキ。



店員が運んできたコーヒーとサンドイッチ。



「いただきます。」



「いただきます。」



二人は自然に笑い合う。



しばらくは、

静かな時間が続く。



窓の外を歩く人を眺めながら、

ジョンハンが口を開いた。



「休みの日って、普段は何してるの?」



チアキは少し考える。



「家でゆっくりすることが多いです。」



「映画を観たり、本を読んだり。」



「あと、旅行の動画を見るのも好きです。」



ジョンハンが興味深そうに頷く。



「仕事でいろんな国に行くのに?」



チアキは少し笑う。



「仕事だと、観光する時間はあまりないんです。」



「空港とホテルだけで終わることも多いので。」



「だから、いつかゆっくり行ってみたいなって思いながら見てます。」



「なるほど。」



ジョンハンはコーヒーを一口飲む。



「じゃあ、プライベートで一番行ってみたい場所は?」



「フィンランドです。」



「オーロラを見てみたくて。」



「あと、静かな湖とか森とか…そういう景色が好きなんです。」



「チアキらしい。」



ジョンハンが優しく笑う。



「ジョンハンさんは?」



「俺?」



少し考えてから答える。



「のんびりできる場所なら、どこでもいいかな。」



「景色を見ながら何もしない時間が好き。」



「分かります。」



チアキは自然に頷く。



「何もしない時間って、大事ですよね。」



「うん。」



短い返事。



それだけなのに、

不思議と会話は途切れなかった。



沈黙が流れる。



店内には穏やかな音楽。



窓から差し込む午後の日差し。



その静けさも、

二人には心地よかった。



食事を終え、

店を出る。



住宅街をゆっくり歩きながら、

ジョンハンが何気なく尋ねた。



「チアキって、ちゃんと休めてる?」



突然の質問に、

チアキは少し驚く。



「うーん……たぶん。」



言い終えた瞬間、

はっと目を丸くする。



「あっ……。」



思わず口元を押さえ、

照れたように笑う。



「またタメ口出ちゃいました。」



耳が少し赤くなる。



「すみません。」



ジョンハンは思わず笑った。



「謝らなくていいよ。」



「その方がチアキらしい。」



チアキは照れくさそうに笑い、

小さく頷く。



「……ありがとうございます。」



その笑顔を見て、

ジョンハンも穏やかに微笑んだ。



歩幅を合わせながら、

二人は404 HOUSEへの帰り道を歩いていく。



特別なことは何もない。



恋愛の話もしない。



ただ、並んで歩く足音と、時々重なる視線だけが、さっきまでのカフェの余韻を静かに残していた。



言葉にしなくても伝わるものがある。



そんな穏やかな親密さが、二人の間にそっと積み重なっていく。



だからこそ、この午後のやわらかさの先に待つものが、まだ見えないままでいることが少しだけ切ない。



静かな時間ほど、隠していたものの輪郭を際立たせる。



【STAFF NOTE】



共同生活31日目。



たくさん話すことだけが、

距離を縮める方法ではない。



同じ景色を見て、

同じ時間を過ごし、

沈黙を心地よいと思えること。



その静かな親密さこそが、

二人の関係が確かに近づいている証だった。



けれど次のScene4では、

このやわらかな午後とは対照的に、

ジョンハンがずっと隠してきた過去が明かされる。



穏やかな時間のあとに訪れる告白だからこそ、

その重さはより深く、静かに胸へ落ちていく。



次回 Scene4

『ジョンハンの秘密』

Wednesday|06:30 PM



夜。



スタッフから呼ばれたジョンハン。



これまで誰にも話してこなかった、

五年前の出来事。



彼が恋愛から距離を置くようになった、

本当の理由が明かされる。




ノベルに戻る I Addict