ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode31

『昨日と同じ、今日じゃない』

― 一度意識した気持ちは、元には戻れない。―

Day:Wednesday(共同生活31日目)



Scene6【UNSEEN】

『変わったかもしれない』

Wednesday|11:30 PM



スタッフルーム。



404 HOUSEは、

すっかり静かな夜を迎えていた。



照明の落ちたリビング。



それぞれが自室へ戻り、

今日も一日が終わろうとしている。



その頃――。



Interview Room



ジョンハンが再び椅子に腰掛ける。



さっきまでの緊張は少しだけ解け、

どこか迷いを残しながらも、柔らかな表情をしていた。



スタッフが笑いながら尋ねる。



「ジョンハンさん。」



「少し変わりました?」



ジョンハンは、

すぐには答えない。



ほんの少しだけ視線を泳がせ、

言葉を探すように間を置いてから、

照れたように笑う。



「……変わったかもしれないですね。」



スタッフが続ける。



「どんなところが?」



ジョンハンは、

視線を少し下げながら答える。



「前だったら。」



「誰かと一緒に過ごす休日も。」



「こんなに自然には受け入れられなかったと思います。」



少し笑う。



「今日は、ただ普通に楽しかった。」



「それが、自分でも少し不思議でした。」



その言い方には、

戸惑いの奥に、ほんのわずかな高揚が混じっていた。



スタッフは静かに頷く。



「チアキさんとは、居心地が良さそうでしたね。」



ジョンハンは思わず笑う。



「そうですね。」



「気を遣わなくていい相手なんです。」



「無理に話さなくても沈黙が苦にならないし。」



「一緒にいると、自然に時間が過ぎていく。」



少しだけ間が空く。



「そういう人って、あまりいなかったかもしれません。」



その一言は、

気づいてしまった何かを確かめるようでもあり、

まだ認めきれない気持ちをそっと撫でるようでもあった。



スタッフが尋ねる。



「404 Choiceを書いたことで、何か変わりましたか?」



ジョンハンは、

ゆっくり息を吐く。



「名前を書いた瞬間に。」



「自分が思っていたより、その人を意識していたことに気づきました。」



言い切ったあと、

ほんの少しだけ目を伏せる。



「でも。」



苦笑いを浮かべる。



「まだ恋とか、そういうものかは分からないです。」



「焦って答えを出したくない。」



「今は、この時間を大切にしたいと思っています。」



その声は落ち着いていたが、

どこかで何かが静かに動き始めていることだけは、

隠しきれていなかった。



スタッフは最後に一つだけ質問する。



「三か月後。」



「今の自分を想像できますか?」



ジョンハンは窓の外を見る。



静かな夜。



404 HOUSEの明かりが、

やさしく灯っている。



「……まだ想像できません。」



「でも。」



穏やかに笑う。



「想像できない未来を、少し楽しみにしている自分はいます。」



そう答えた表情は、

五年前の過去に縛られていた頃より、

少しだけ前を向いていた。



画面は、

静かな404 HOUSEの夜景へと切り替わる。



誰もまだ、

404 Choiceの結果を知らない。



それでも、

一度動き始めた心は、

もう昨日には戻らない。



戻ろうとしても、

もう同じ昨日には触れられない。



【STAFF NOTE】



共同生活31日目。



人は、

過去を忘れたから前へ進めるのではない。



新しい誰かとの時間が、

少しずつ心の景色を変えていく。



その変化は、

本人が一番気づいていないのかもしれない。



次回予告

Episode32

『知らなかった横顔』



共同生活32日目。



いつも笑っている人ほど、

誰にも見せていない表情がある。



明るさの裏に隠された、

もう一つの秘密。



知らなかった横顔に触れた時、

404 HOUSEの空気は、

また少しだけ変わり始める。




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