ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―
Episode32
『知らなかった横顔』
― 笑顔の裏側にある、本当の自分。―
Day:Thursday(共同生活32日目)
⸻
Scene1
『いつもの404 HOUSE』
Thursday|08:00 AM
⸻
共同生活32日目。
⸻
404 HOUSEの朝。
⸻
キッチンには、
淹れたてのコーヒーの香りがやわらかく広がっている。
⸻
トースターの軽い音。
⸻
鍋の中で静かに揺れる味噌汁の湯気。
⸻
窓の外から差し込む朝の光が、
テーブルの木目を淡く照らしていた。
⸻
「おはようございます。」
⸻
「おはよう。」
⸻
もう聞き慣れた朝の挨拶。
⸻
それでも、その声が重なるたびに、
この家がちゃんと“朝を迎えている”のだと感じる。
⸻
スンチョルはネクタイを締めながら、
スマートフォンで今日の予定を確認している。
⸻
画面を見つめる横顔は少し真剣で、
いつもの落ち着いた雰囲気の奥に、
朝特有の忙しなさがほんの少しだけ滲んでいた。
⸻
「今日は朝から会議続きなんだ。」
⸻
「大変ですね。」
⸻
チアキがコーヒーを手渡す。
⸻
マグカップの温かさが指先に伝わって、
それだけで少し気持ちが落ち着く。
⸻
「ありがとうございます。」
⸻
スンチョルは受け取ると、
小さく息をついてから一口飲んだ。
⸻
「チアキは午後からだったよね?」
⸻
ユナが尋ねる。
⸻
「はい。」
⸻
「今日は午後便なので、お昼過ぎに出ます。」
⸻
チアキはそう答えながら、
テーブルの上に置いた自分のマグカップを両手で包む。
⸻
まだ少し眠気の残る指先に、
じんわりとした温度が広がっていく。
⸻
チェリンはノートパソコンをダイニングへ運ぶ。
⸻
椅子を引く音が静かに響き、
そのたびに朝の空気が少しずつ“仕事の時間”へと切り替わっていく。
⸻
「私は今日は在宅だから、ここで仕事するね。」
⸻
「いいなぁ。」
⸻
スングァンが笑う。
⸻
「俺は朝から収録。」
⸻
「頑張ってください。」
⸻
「ありがとう!」
⸻
そのやり取りに、
まだ眠そうだった空気が少しだけ明るくなる。
⸻
玄関では、
ミンギュが靴紐を結んでいた。
⸻
しゃがみ込んだ背中が少し大きく見えて、
出かける前のわずかな緊張が伝わってくる。
⸻
「じゃあ、行ってきます。」
⸻
「行ってらっしゃい。」
⸻
チアキは自然に笑顔で送り出す。
⸻
その言葉を口にするたび、
この家での朝が少しずつ自分のものになっていく気がした。
⸻
ミンギュも軽く手を上げ、
家を後にした。
⸻
ドアが閉まる音のあと、
玄関先に残っていた外の冷たい空気が、
ゆっくりと室内のぬくもりに溶けていく。
⸻
続いて、
スンチョル、
ユナ、
スングァン、
スニョン、
ソヨン、
ジウォンもそれぞれ仕事へ向かう。
⸻
誰かがバッグの持ち手を整え、
誰かが髪を軽く直し、
誰かが「忘れ物ない?」と声をかける。
⸻
そんな小さな動きが重なって、
慌ただしいはずの朝なのに、
どこかやさしいリズムが生まれていた。
⸻
リビングは少しずつ静かになっていく。
⸻
残ったのは、
チアキ、
ジョンハン、
ウォヌ、
そして在宅勤務のチェリン。
⸻
ジョンハンはソファで本を開き、
ページをめくる指先だけが静かに動いている。
⸻
ウォヌはノートパソコンで作業を始める。
⸻
キーボードを打つ音が、
朝の静けさの中に規則正しく響いた。
⸻
チェリンはイヤホンをつけ、
オンラインミーティングの準備をしていた。
⸻
画面越しの相手に気づかれないよう、
少しだけ姿勢を正してから、
マイクの位置を確かめる。
⸻
チアキはマグカップを片付けながら、
ふと窓の外を見る。
⸻
忙しく出掛けていく仲間たち。
⸻
静かになったリビング。
⸻
けれど、その静けさは寂しさではなく、
誰かの生活の気配がちゃんと残っている、
あたたかな静けさだった。
⸻
それも今では、
404 HOUSEの”いつもの朝”になっていた。
⸻
【STAFF NOTE】
⸻
共同生活32日目。
⸻
誰が何時に家を出て、
誰が家に残るのか。
⸻
最初は覚えられなかった生活リズムも、
今では自然と頭に入っている。
⸻
朝のコーヒーの香り、
玄関で交わす短い挨拶、
出かける前に誰かがそっと整える椅子や靴。
⸻
そんな何気ないひとつひとつが、
この家の朝を少しずつ形づくっていた。
⸻
「行ってらっしゃい。」
⸻
その何気ない一言には、
一か月前より少しだけ、
温かさが増していた。
⸻
次回 Scene2
『女子だけの時間』
Thursday|12:30 PM
⸻
昼の404 HOUSE。
⸻
ユナ、
ジウォン、
チェリン、
チアキ。
⸻
久しぶりに揃った女子四人だけの昼食。
⸻
恋愛の話ではなく、
仕事や将来、
そして「自分らしさ」について語り合う時間が始まる。
→
ノベルに戻る I
Addict