ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―
Episode33
『気づけば、隣に』
― いつの間にか、探してしまう存在。―
Day:Friday(共同生活33日目)
⸻
Scene4
『明日の予定』
Friday|Night
⸻
404 HOUSE。
⸻
夕食後。
⸻
窓の外には、夜の気配が静かに降りていた。
リビングの照明は少しだけ落とされ、
ソファの上や床のラグの上に、
それぞれが思い思いの姿勢でくつろいでいる。
⸻
リビングで、
11人がそれぞれ自由な時間を過ごしている。
⸻
スングァンはソファで動画を見て笑い、
スニョンはストレッチをしながら、
「そこ、もっと伸びるだろ」と自分に言い聞かせるように肩を回していた。
⸻
ウォヌは本を読み、
ジョンハンとユナはキッチンでコーヒーを淹れていた。
⸻
カップに注がれる湯気が、
静かな部屋の中でふわりと揺れる。
⸻
「砂糖、入れる?」
ユナが聞くと、
ジョンハンはカップを覗き込みながら肩をすくめた。
「今日はブラックでいく。眠くなるほど平和だからね。」
「それ、褒めてる?」
「もちろん。」
ユナはくすっと笑って、
「じゃあ、私は少しだけミルク入れようかな」と小さく呟いた。
⸻
いつもの夜。
⸻
その時。
⸻
スマートフォンに通知が届く。
⸻
404 HOUSEのグループチャット。
⸻
全員の画面に、
同じメッセージが表示される。
⸻
STAFF
⸻
「明日は全員で外出していただきます。」
⸻
⸻
「集合時間は午前9時。」
⸻
「指定された服装で集合してください。」
⸻
⸻
一瞬。
⸻
リビングが静かになる。
⸻
さっきまで聞こえていた笑い声も、
動画の再生音も、
コーヒーを注ぐ音さえも止まったように感じられた。
⸻
「……え?」
最初に声を上げたのはスングァンだった。
「明日? しかも朝9時? 早くない?」
⸻
スニョンがスマートフォンを見つめたまま眉をひそめる。
「指定された服装って、また変なやつじゃないよね。」
⸻
それを聞いたジョンハンが、わざとらしく肩をすくめた。
「変なやつだったら、スングァンが一番似合いそう。」
「なんで僕限定なの!」
スングァンが即座に食いつく。
「僕、そういうの意外と似合わないタイプなんだけど!」
「いや、似合うよ。うるさく似合う。」
「褒めてないでしょ、それ!」
⸻
ウォヌは本から目を上げ、静かに画面を確認する。
「服装指定があるなら、移動だけじゃない可能性が高いね。」
「イベントかな?」
ユナが目を輝かせる。
「全員で出掛けるの、久しぶりじゃない?」
⸻
チアキも画面を見ながら、少し首を傾げた。
「外出……ですか。しかも全員で。」
「チアキ、何か心当たりある?」
ミンギュがソファの背にもたれたまま聞く。
チアキは小さく首を振った。
「いえ。ただ、服装指定があるということは、動きやすさよりも見た目を重視する場面なのかもしれません。」
「お、分析が早い。」
ジョンハンが感心したように言うと、
チアキは少しだけ困ったように笑った。
「いえ……そういうの、少し気になるだけです。」
⸻
ミンギュは楽しそうにスマホを揺らす。
「でもさ、スタッフさん最近ほんと秘密多くない?」
「それは同感。」
ウォヌが淡々と頷く。
「前も急にミッションが来たし。」
「急に来るの、心臓に悪いんだよね……」
スングァンがぼやくと、
ユナが笑いながら言った。
「でも、そういうの嫌いじゃないでしょ?」
「……まあ、ちょっとは。」
「ちょっとなんだ。」
「ちょっとです!」
⸻
チェリンが、少しだけ期待を込めた声で言う。
「でも、みんなで出掛けるのって、なんだか楽しそう。」
「うん。」
ジウォンも頷いた。
「最近はそれぞれ予定があって、全員そろうこと少なかったし。」
⸻
その言葉に、
みんなが顔を見合わせる。
⸻
確かに。
⸻
最近は仕事や予定で、
11人全員が一日一緒に過ごすことは少なかった。
⸻
同じ屋根の下にいても、
朝から夜まで顔をそろえる機会は意外と少ない。
だからこそ、
こうして突然届いた「全員で外出」という一文が、
いつも以上に特別に感じられた。
⸻
「じゃあ明日は、遅刻した人は置いていく?」
スニョンがさらりと言う。
「え、待って、それ本気?」
スングァンが目を丸くする。
「本気。朝9時集合なら、8時半には準備終わってないと。」
「厳しすぎる!」
「でも、スングァンは絶対ギリギリになるでしょ。」
ジョンハンが笑う。
「いや、僕だってやる時はやるよ?」
「その“やる時”が明日来るといいね。」
「来るよ! 来るに決まってる!」
⸻
ユナはそんなやり取りを見ながら、楽しそうに笑った。
「なんか、もう明日の朝が目に浮かぶ。」
「寝ぼけた顔のスングァンと、無言で準備するスニョンと、余裕そうに見えて実は一番早いウォヌ。」
「ちょっと待って、僕だけ雑じゃない?」
スングァンが抗議すると、
ウォヌは本を閉じながら静かに言った。
「僕は早起きが苦じゃないだけ。」
「それ、余計に悔しい……」
⸻
ミンギュがにやりと笑う。
「俺は服装指定が気になるな。おそろいだったら写真映えするし。」
「そういう発想、ミンギュらしい。」
チェリンがくすっと笑う。
「でも、みんなで同じ方向を向いて歩くの、ちょっと素敵かも。」
「チェリン、そういうこと言うと明日もっと楽しみになる。」
ジウォンがそう言うと、
チェリンは少し照れたように視線を落とした。
「だって、本当にそう思ったんだもん。」
⸻
ジョンハンはカップを持ち上げながら、わざとらしくため息をつく。
「こういう時に限って、スタッフさんは何も教えてくれないんだよね。」
「教えてくれたらサプライズにならないでしょ。」
ユナがさらりと返す。
「それはそうだけど。」
「でも、楽しみは増えるよ。」
ユナの言葉に、
ジョンハンは少しだけ口元を緩めた。
「……まあ、確かに。」
⸻
チアキはスマートフォンを見つめたまま、静かに言う。
「明日、どんな場所でも、みなさんと一緒なら安心です。」
その言葉に、
一瞬だけ空気がやわらかくなる。
⸻
「チアキ、そういうのさらっと言うよね。」
ミンギュが目を細める。
「今の、ちょっとずるい。」
「ずるい?」
「うん。なんか、心が落ち着く。」
チアキは少し驚いたように瞬きをしてから、
控えめに笑った。
「……そう言っていただけるなら、嬉しいです。」
⸻
その後も、
「朝ごはんはどうする?」
「集合前に食べる時間あるかな。」
「服装指定って、動きやすい系かな。」
「いや、きれいめかもしれない。」
「どっちでも対応できるようにしておくか。」
そんな会話が、ぽつぽつと続いていく。
⸻
まだ誰も知らない。
⸻
明日、
どんな一日になるのか。
⸻
どんな景色の中で過ごすことになるのか。
⸻
どんな服を選び、
どんな表情で並ぶことになるのか。
⸻
⸻
ただ一つ分かること。
⸻
久しぶりに、
11人全員で過ごす時間が待っている。
⸻
⸻
【STAFF NOTE】
⸻
共同生活33日目。
⸻
同じ家で暮らしていても、
全員の予定が重なる日は多くない。
⸻
朝の支度の音、
食卓を囲む時間、
何気ない会話のひとつひとつが、
少しずつ「日常」になっていく。
⸻
だからこそ、
「一緒に過ごす時間」は、
少しずつ特別になっていく。
⸻
明日、
404 HOUSEの11人に、
新しい思い出が加わる。
⸻
次回 Scene5
『秘密の準備』
Friday|Late Night
⸻
翌日のイベント準備。
⸻
夜のリビングには、
さっきまでのざわめきの余韻がまだ残っている。
⸻
そこへ、
それぞれの名前が書かれた箱が運ばれてくる。
⸻
「え、箱?」
スングァンが真っ先に身を乗り出す。
「何入ってるの? もう開けていい?」
「待って、まだダメ。」
スニョンが即座に止める。
「こういうの、先に開けたら負けな気がする。」
「何に負けるの?」
ジョンハンが笑う。
「自分の好奇心に。」
「それはもう負けてるじゃん。」
ユナがくすくす笑う。
⸻
その中身を見た瞬間、
11人の反応が変わる。
⸻
笑う人。
驚く人。
少し照れる人。
⸻
「これ、俺のだけ妙に重いんだけど。」
ミンギュが箱を持ち上げて首をかしげる。
「中身、筋トレ器具だったらどうする?」
ウォヌがさらりと言うと、
「やめて、そういうの本当にありそうで怖い。」
ミンギュが苦笑する。
⸻
「……これ、似合うかな。」
チェリンが小さくつぶやく。
「似合うに決まってる。」
ジウォンがすぐに返すと、
チェリンは少しだけ目を丸くした。
「え、まだ見てないのに?」
「見なくても分かる。」
「……そういうところ、ずるい。」
⸻
そして――
チアキだけが見せた、
一瞬の表情を、
スタッフカメラは捉えていた。
「……これ、僕だけですか?」
そう漏らした声は、
驚きと、ほんの少しの戸惑いと、
それ以上に隠しきれない何かを含んでいた。
→
ノベルに戻る I
Addict