ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode34

『あの日の続きを』

― 大人になった今だから楽しめる、忘れられない一日。―

Day:Saturday(共同生活34日目)



Scene1

『制服の日』

Saturday|08:00 AM



404 HOUSE。



いつもより少し早い朝。



リビングには、

まだ眠そうな11人が集まっていた。



ソファに沈み込んだまま目をこする者、

テーブルに肘をついてぼんやりしている者、

すでに箱の前でそわそわしている者までいて、

朝の空気はまだ少しだけゆるんでいる。



テーブルの上には、

昨日スタッフから届いた箱。



名前が書かれた衣装ケース。



今日のための制服。



誰かが「開けていい?」と聞く前に、

もう一人が「待って、まず写真」とスマホを構える。





「本当にこれ着るの?」



スングァンが制服を広げながら、

少し困った顔をする。



その声には、戸惑いと同時に、

どこか子どもの頃に戻ったようなわくわくも混じっていた。



隣で見ていたメンバーが、

「もうその顔が一番楽しそう」と笑う。





スニョンが笑う。



「似合うと思うよ。」



「いや、年齢考えて(笑)」



「でも今日だけじゃん。」



「それはそうだけど……。」



言いながらも、

スングァンの目はどこか嬉しそうだった。



制服の襟を指でつまんで、

「サイズ大丈夫かな」と小さくつぶやく者もいれば、

「むしろちょっと大きいくらいがそれっぽい」と

妙に真面目に分析する者もいる。





「じゃあ、誰が一番似合うか勝負する?」



誰かがそう言うと、

一気に空気が軽くなる。



「え、やるの?」



「やるなら本気でやるけど。」



「そういうところだけ妙に張り切るよね。」



「いや、こういうのは勝ちたいでしょ。」



「勝ちたいのはわかるけど、基準は?」



「雰囲気。」



「いちばん曖昧じゃん。」



そんなやり取りに、

まだ眠そうだったメンバーたちの顔にも笑みが浮かぶ。





男子メンバーは、

少し照れながら着替えへ向かう。



鏡の前で自分の姿を想像して、

思わず肩をすくめる者もいれば、

「意外と悪くないかも」と

心のどこかで期待している者もいた。



ボタンを一つずつ丁寧に留める几帳面な者、

袖をまくって「これでいい?」と聞くせっかちな者、

ネクタイを持ったまま固まる者、

先にジャケットだけ羽織って満足そうにする者。



それぞれの反応が違うのに、

どこか同じようにそわそわしているのが面白い。





「ネクタイ、誰か結べる?」



「え、できるけど。」



「じゃあお願い。」



「近い近い、顔が近いって。」



「今さら何言ってるの。」



「いや、今さらだから余計に照れるんだよ。」



そんなふうに言いながらも、

結局はお互いに手を貸し合う。



結び終わったあと、

「うん、ちゃんと学生っぽい」と頷く者もいれば、

鏡の中の自分を見て「なんか変な感じ」と苦笑する者もいた。



普段は気を遣ってしまう距離も、

今日は少しだけ自然に縮まっていた。





一方。



女子部屋



制服に着替えた女性メンバー。



鏡の前で、

いつもとは違う姿を見る。



チェリンはスカートの裾を軽くつまんでくるりと回り、

ユナは襟元を整えながら「ほんとに戻ったみたい」と笑う。



ジウォンは髪を耳にかけて、

「前髪、これでいい?」と確認し、

チアキは少しだけ背筋を伸ばして鏡を見つめた。



その瞬間だけ、

少しだけ時間が巻き戻ったような気がした。





「なんか不思議。」



チェリンが笑う。



その笑顔には、

懐かしさと少しの照れが混ざっている。



「写真撮ったら、あとで絶対見返すやつだよね。」



「わかる。こういうの、案外いちばん残る。」



ユナも頷く。



制服の襟元を整えながら、

ふと昔の教室や廊下の景色がよみがえる。





「学生に戻ったみたい。」



ジウォンが言う。



「でも中身はちゃんと大人だから、そこは安心。」



チェリンがすぐに茶化す。



「それ大事。」



ユナが笑って、

「見た目だけ戻っても、朝の眠さはそのまま」と肩をすくめる。





ジウォンがチアキを見る。



「似合ってる。」





チアキは少し照れる。



「ありがとう。」



その一言に、

いつもより少しだけ声が柔らかくなる。



「普段より、ちょっとやわらかく見える。」



ユナがそう言うと、

チェリンがすぐに目を細める。



「今の、褒めすぎじゃない?」



「褒めてるよ。」



「え、やめて。」



チアキが笑いながら顔を隠すと、

ユナまで吹き出す。



「そういう反応、ずるいよね。」



「ほんと。普段落ち着いてるのに。」



「だから余計に照れるんだってば。」



「かわいいって言われると一番困るタイプだよね。」



ジウォンが笑えば、

チアキは「困ります」と即答して、

さらにみんなを笑わせる。



女子同士では、

もう自然な言葉が出る。





鏡を見る。



そこに映る自分。



少し懐かしい。



でも、

あの頃とは違う。



ただ制服を着ているだけなのに、

今の自分たちには、

あの頃にはなかった経験も、迷いも、優しさもある。



それぞれが違う表情で鏡を見ている。



少し誇らしげな顔。



少し照れくさそうな顔。



少し懐かしそうな顔。



だからこそ、

この姿がただの“懐かしさ”では終わらない。





「ねえ、襟ちょっと曲がってる。」



ジウォンがそっと手を伸ばして直す。



「ほんと? ありがとう。」



「こういうの、昔は友達にやってもらったよね。」



「わかる。なんか急に距離が近くなる。」



「今も自然にやってるじゃん。」



その言葉に、

みんな少しだけ笑って、

少しだけ目をそらした。





リビング



全員が集まる。



階段を降りてくる足音が重なって、

最後の一人が入った瞬間、

部屋の温度がふっと上がる。



制服姿の11人。



きっちり着る人、

少し崩して着る人、

袖をまくる人、

ネクタイを少し緩める人、

鏡の前で真顔を作る人、

スマホを構えて記録係に回る人、

「似合う?」と何度も聞く人、

「いや、似合いすぎ」と即答する人。



一瞬、

誰も言葉が出なかった。



「……やばい。」



「ほんとに学生みたい。」



「いや、でも全員大人なんだよな。」



そんな声がぽつぽつと落ちて、

ようやく笑いがこぼれる。





普段の仕事姿。



大人としての顔。



それとは違う、

少し幼い雰囲気。



けれどその幼さは、

ただ若返ったように見えるだけではなく、

それぞれの中に眠っていた素直さまで引き出していた。





スングァンが笑う。



「なんか変な感じ。」



その言葉に、

みんなも同じ気持ちだと気づいて笑う。



「でも、嫌じゃない。」



「むしろ楽しい。」



「こういうの、たまにはいいね。」



「たまにじゃなくてもいいけど。」



「それはそれで疲れるでしょ。」



そんな軽口が飛び交うたびに、

空気がどんどんやわらかくなっていく。





ミンギュも笑う。



「でも、楽しくない?」





「楽しいけど、ちょっと恥ずかしい。」



誰かがそう言うと、

「今さら?」とすぐに返される。



「いや、今さらだから恥ずかしいんだよ。」



「それはある。」



「朝からこんなに騒がしいの、逆に安心する。」



そんな言葉に、

また笑いが広がる。





その時。



チアキがリビングへ入ってくる。





一瞬。



何人かの視線が集まる。



「来た。」



「待って、ほんとに雰囲気違う。」



「先生っぽいのに、ちゃんと学生にも見える。」



普段は落ち着いた雰囲気のチアキ。



今日は制服姿で、

少し柔らかい印象になっていた。



その変化に、

見慣れているはずのメンバーまで、

思わず息をのむ。





スングァンが思わず言う。



「……雰囲気違う。」





チアキは少し驚く。



「そうですか?」



自分では気づいていなかったけれど、

そう言われると少しだけ胸がくすぐったい。





ミンギュが笑う。



「うん。」



「いつもより若く見える。」





チアキは照れて笑う。



「褒めてます?」





「もちろん。」





「じゃあ素直に受け取ります。」



「今の、ちょっと嬉しそうだったよね。」



「え、そんなことないです。」



「あるある。」



「今の返しもかわいい。」



周りがすぐに乗っかって、

チアキはますます困ったように笑う。



そのやり取りに、

周りが笑う。



笑いながらも、

どこか心の奥が温かくなる。



制服というだけで、

こんなにも空気がやわらかくなるのが不思議だった。





少し前なら。



こんな自然な会話もなかった。





敬語ばかりだった距離。



遠慮していた空気。





今は、

同じ家で笑える関係になっている。



誰かが「昔は、こんなふうに冗談を言うのも遠慮してたよね」と笑い、

別の誰かが「今は遠慮しすぎると逆に変だもん」と肩をすくめる。



その変化が、

今日の制服姿をいっそう特別なものにしていた。





「ねえ、写真撮ろうよ。」



誰かが言うと、

「まだ朝なのに?」と笑いが起きる。



「朝だからいいんじゃん。」



「朝だからこそ、光がきれい。」



「それっぽいこと言った。」



「でも正しい。」



「じゃあ、ちゃんと並んで。」



「え、真ん中誰?」



「そりゃ一番騒がしい人でしょ。」



「それ、絶対スングァンでしょ。」



「なんでそうなるの!」



そんなふうに言い合いながら、

自然と肩が触れ合う。



「ちょっと、押さないで。」



「押してない、寄ってるだけ。」



「それを押してるって言うんだよ。」



そのたびに、

「近い近い」と言いながらも、

誰も本気では離れようとしない。





スタッフから通知が届く。



STAFF



「準備ができたら出発してください。」





「行こう!」



スニョンが声を上げる。



その声には、

ただの移動ではない、

“今日は特別な一日が始まる”という高揚感があった。





11人が玄関へ向かう。





「ちょっと待って、靴下見えてる。」



「え、ほんと?」



「見えてる見えてる。」



「誰か早く言ってよ。」



「今言ったじゃん。」



「ネクタイ曲がってる。」



「今直した。」



「ありがとう、助かる。」



そんな小さなやり取りさえ、

今日は妙に楽しい。





今日だけは、

仕事も立場も忘れて。



ただ、

一緒に楽しむ一日。



制服を着た自分たちが、

どんな景色を見て、どんな気持ちになるのか。



その答えを確かめに行くように、

少し弾む足取りで外へ出る。





【STAFF NOTE】



共同生活34日目。



大人になると、

子どもの頃のように何も考えず遊ぶ時間は減っていく。





でも。



同じ時間を共有する相手がいるだけで、

忘れていた楽しさを思い出すことがある。





今日は、

404 HOUSEの11人にとって、

懐かしさと今の絆が重なる、

新しい思い出になる一日。



それぞれの笑い方で、

それぞれの距離で、

同じ景色を見に行く。



Scene2

『放課後みたいな時間』

Saturday|10:30 AM



制服姿のまま向かった先で、11人は思いがけず“あの日”の続きをなぞるような、少し甘くて少し騒がしい時間を過ごすことになる。






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