ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode34

『あの日の続きを』

― 大人になった今だから楽しめる、忘れられない一日。―

Day:Saturday(共同生活34日目)



Scene5

『集合写真』

Saturday|16:30 PM



ロッテワールド。



夕方になると、園内の音楽の向こうに、少し冷たい風が混じりはじめていた。



傾きかけた陽射しが、昼間のにぎやかさをやわらかく包み込んでいる。



一日歩き回った11人は、少し疲れた顔をしていた。



それでも、笑ったあとにこぼれる息まで楽しそうで、

今日をこのメンバーで過ごせたことが、静かな喜びとしてそれぞれの表情に残っていた。



「最後に写真撮ろう。」



スタッフの声に、スングァンが顔を上げる。



「やった、集合写真だ。」



「じゃあ、ちゃんと並ばないと。」



ユナが笑うと、全員が自然に集まった。



夕方の光が、制服の肩や髪の先をやわらかく照らしている。



朝は少し照れていた制服姿も、今ではすっかり馴染んでいた。



「誰が真ん中?」



スングァンが聞く。



「言い出した人が真ん中。」



スニョンが笑う。



「じゃあスングァン。」



チェリンの一言に、周りから小さな笑いが起きる。



「なんで(笑)」



「似合うから。」



「それ、理由になってる?」



スングァンが苦笑すると、また笑いが広がった。



笑いながら、自然に位置が決まっていく。



「ミンギュ、もう少しこっち。」



ジョンハンが肩を軽く押す。



「え、ここ?」



「うん。そこだと顔が隠れる。」



「じゃあチアキ、こっち来て。」



ミンギュが手招きする。



「ありがとうございます。」



チアキが少し照れながら移動する。



「そこ空いてるよ。」



「こっち来て。」



声を掛け合う様子は、もうすっかり当たり前になっていた。



最初の日なら、誰がどこに立つか、誰の隣になるかにまで気を遣っていたはずだ。



けれど今は、「もう少し近くても大丈夫」「え、近すぎない?」と笑い合いながら、自然に肩を寄せられる。



撮影



カメラの前に11人が並ぶ。



スタッフが言った。



「最初の日の写真と比べてみましょうか。」



モニターに映ったのは、共同生活初日の写真だった。



全員が画面を見る。



そこには、まだ距離のある11人がいた。



笑顔はあるのに、どこか緊張が残っている。



「みんな顔固い。」



スングァンが笑う。



「敬語しか使ってなかったもんね。」



チェリンの言葉に、ユナも頷く。



「今思うと、あの空気すごかったよね。」



ミンギュが肩をすくめる。



ジョンハンは写真を見つめたまま言った。



「この時、誰とも目を合わせられなかった。」



スンチョルが笑う。



「分かる。」



「何話せばいいか分からなかった。」



「でも、今はうるさいくらい話してる。」



スングァンの言葉に、「それは言いすぎ」とすぐ返る。



チアキも初日の自分を見つめた。



まだ遠慮がちで、周りの様子ばかり気にしていた頃だ。



「懐かしいですね。」



小さく笑うと、ユナがやさしく言った。



「今のほうがずっと自然だよ。」



「うん、表情が柔らかい。」



チェリンも頷く。



ミンギュが尋ねる。



「今は?」



チアキは少し考えてから、笑っているみんなを見回した。



「今は……安心します。」



その一言に、空気がやわらぐ。



「それ、うれしい。」



スンチョルがぽつりと言う。



「ちゃんと居場所になってるってことだもんね。」



ジョンハンも穏やかに笑った。



以前、チアキが口にした「安心する場所になった」という言葉は、誰か一人ではなく、この家で過ごす時間そのものを指していたのだろう。



そして今、その安心は写真という形にも残ろうとしていた。



ただの記念ではない。



11人が同じ時間を生きてきた証であり、あとから見返したときに「あのとき本当に一緒にいたんだ」と思い出せる、かけがえのない一枚になる。



「じゃあ、今の写真撮ろう。」



スタッフの声に、全員がもう一度カメラの前へ向き直る。



今度は、誰も無理に笑わない。



園内の夕暮れはさらに深まり、背景のライトがひとつ、またひとつと灯りはじめていた。



遠くではジェットコースターの音と人々の笑い声が重なっている。



その中で、11人の輪だけが静かに、けれど確かに温かかった。



「はい、じゃあ……せーの。」



スタッフの合図に合わせて、誰かが小さく「いくよ」と言う。



「チアキ、真ん中寄って。」



ミンギュが軽く促す。



「え、またですか。」



チアキが笑う。



「だって、今日の主役みたいだから。」



スングァンがすぐに乗る。



「それは違うでしょ。」



困ったように笑うチアキに、隣のユナが「でも似合ってる」と小声で返す。



スタッフが「もう少し顔上げてください」と声をかけると、誰かが肩を寄せ直し、誰かが髪を整え、誰かが「見えてる?」と確認する。



その何気ない動きまで、もうすっかり自然だった。



シャッター音が鳴り、一枚の写真が残る。



撮影後



「見せて。」



スングァンが写真をのぞき込む。



「いいじゃん。」



「本当に?」



「うん。」



「最初より絶対いい。」



「みんな、ちゃんと仲良さそうに見える。」



チェリンが画面を見ながら言う。



「仲良さそうじゃなくて、仲いいんだよ。」



ミンギュの言葉に、みんなが笑う。



「じゃあ次は、もっと寄ろうか。」



ジョンハンが冗談めかして言うと、「もう十分近いです」とチアキが返し、また笑いが起きた。



一枚の写真に残ったのは、34日間の時間そのものだった。



最初はぎこちなかった距離も、少しずつ重ねた会話も、気づけば当たり前になっていた笑い声も、すべてがそこにある。



だからこそ、この集合写真はただの記録ではない。



11人にとって、「ここで一緒に過ごした」という事実を目に見える形で残してくれる、大切な一枚だった。



【STAFF NOTE】



共同生活34日目。



写真に残るのは、その瞬間の表情だけではない。



そこに至るまでの時間。



一緒に笑った日。



支え合った日。



知らなかった一面を知った日。



すべてが、一枚の中に残っていく。



そして集合写真は、その全部を静かに抱えたまま、あとから見返すたびに胸の奥をあたためてくれる。



11人にとって、それは「みんなで撮った写真」以上の意味を持つ。



次回 Scene6

『帰り道』



楽しかった一日の終わり。



疲れて眠るメンバー。



そして、誰かの自然な優しさが、

またひとつ記録される。




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