ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode5

『最初のミッション』

― 恋愛禁止なのに、一番近い距離 ―

⸻

Scene4

『キッチンで二人きり』

⸻

午後4時15分。

ROOM 404 キッチン。

⸻

スーパーから戻った5組は、

それぞれ決められたキッチンスペースへ向かった。

⸻

広いアイランドキッチン。

⸻

料理の音。

笑い声。

包丁の音。

⸻

404 HOUSEが、

いつもより少し賑やかだった。

⸻

チアキ × ミンギュ

⸻

二人が選んだ料理は、

ベーコンと鶏むね肉のレモンクリームパスタと、彩りサラダ。

⸻

「じゃあ俺、鶏肉切るね。」

ミンギュがエプロンを結ぶ。

⸻

「ありがとうございます。」

⸻

チアキもエプロンを着ける。

⸻

淡いベージュのエプロンに、アッシュブラウンのロングヘアをいつものように手際よくひとつにまとめる。

⸻

「やっぱり。」

ミンギュが思わず笑う。

⸻

「そのまとめ髪、すごく慣れてるね。」

⸻

チアキも笑う。

⸻

「仕事で毎日やっているので。」

⸻

「飛行機に乗る前は、いつも5分くらいで。」

⸻

「5分?」

⸻

「そんなに早く?」

⸻

「慣れですね。」

⸻

「すごいな。」

⸻

ミンギュは少し見惚れそうになり、

慌てて視線をまな板へ戻した。

⸻

最初の質問

⸻

「そうだ。」

⸻

「まだ3つ聞けてない。」

⸻

「あ、本当ですね。」

⸻

「二つ目。」

⸻

「休みの日って何してる?」

⸻

チアキはレタスをちぎりながら考える。

⸻

「最近は家で映画を観たり、本を読んだり。」

⸻

「あと、お菓子を作る動画を見るのが好きです。」

⸻

「作るじゃなくて?」

⸻

「見るだけです。」

⸻

二人とも笑う。

⸻

「なんで?」

⸻

「作ると失敗するので。」

⸻

「正直だね。」

⸻

「はい。」

⸻

「ミンギュさんは?」

⸻

「ジム。」

⸻

「友達とご飯。」

⸻

「あと、ドライブかな。」

⸻

「運転好きなんですね。」

⸻

「好き。」

⸻

「音楽流しながら走るだけで気分転換になる。」

⸻

⸻

少しずつ自然に

⸻

パスタを茹でる。

⸻

ベーコンを炒める。

⸻

鶏肉を焼く。

⸻

「塩お願い。」

⸻

「あ、はい。」

⸻

「ありがとう。」

⸻

「胡椒取れますか?」

⸻

「もちろん。」

⸻

少し前まで、

「すみません。」

「お願いします。」

ばかりだった二人。

⸻

今は、

タイミングが自然と合う。

⸻

お互いが何をしてほしいのか、

少しずつ分かるようになっていた。

⸻

「チアキちゃんって」

⸻

ソースを混ぜながら、

ミンギュが何気なく口を開く。

⸻

「チアキちゃんって。」

⸻

「はい?」

⸻

「自分のこと、あんまり話さないよね。」

⸻

その手が一瞬止まる。

⸻

「……そうですか?」

⸻

「うん。」

⸻

「みんなの話はよく聞くけど。」

⸻

「自分の話になると、ふわっと終わる。」

⸻

チアキは少し考えた。

⸻

「癖かもしれません。」

⸻

「聞く方が好きなので。」

⸻

「それだけ?」

⸻

優しく笑いながら聞く。

責めるような口調ではない。

⸻

チアキは少しだけ視線を落とした。

⸻

「……昔は。」

⸻

そこまで言って、

言葉が止まる。

⸻

「昔は?」

⸻

ミンギュは急かさない。

⸻

数秒の沈黙。

⸻

チアキはふっと笑った。

⸻

「いえ。」

⸻

「大した話じゃないです。」

⸻

「そう?」

⸻

「はい。」

⸻

「また今度、お話しします。」

⸻

そう言って、

フライパンを軽く揺らす。

⸻

ミンギュも、

それ以上は聞かなかった。

⸻

代わりに話題を変える。

⸻

「じゃあ最後の質問。」

⸻

「好きな季節は?」

⸻

チアキは少し安心したように笑う。

⸻

「秋です。」

⸻

「空気が気持ちいいので。」

⸻

「あと、飛行機から見える夕焼けが一番綺麗なんです。」

⸻

「……見てみたいな。」

⸻

「機会があったらぜひ。」

⸻

「おすすめです。」

⸻

その笑顔は、

さっきよりずっと自然だった。

⸻

少し離れたキッチンでは…

スンチョル × ジウォン

⸻

「この順番なら効率いい。」

ジウォンが食材を並べる。

⸻

スンチョルが頷く。

⸻

「仕事でも段取り重視?」

⸻

「もちろん。」

⸻

「一緒だ。」

⸻

「だから話しやすいのかも。」

⸻

二人は思わず笑った。

⸻

ウォヌ × ソヨン

⸻

「火、少し弱めますね。」

⸻

「お願いします。」

⸻

静かなキッチン。

⸻

「ウォヌさん。」

⸻

「はい?」

⸻

「静かな時間、嫌いじゃないです。」

⸻

ウォヌは少しだけ微笑む。

⸻

「僕もです。」

⸻

その一言だけで、

また静かな時間が流れた。

⸻

ジョンハン × ユナ

⸻

「味見して。」

ユナがスープを差し出す。

⸻

ジョンハンは一口飲み、

少し考える。

⸻

「美味しい。」

⸻

「でも。」

⸻

「疲れてる日は、もう少し優しい味が好きかもしれない。」

⸻

ユナは少し驚く。

⸻

「それ、性格出てるね。」

⸻

ジョンハンは照れたように笑った。

⸻

スニョン × チェリン

⸻

「うわっ!」

⸻

「ちょっと!」

⸻

「玉ねぎ飛んだ!」

⸻

「スニョン!」

⸻

「ごめん!」

⸻

キッチン中に笑い声が響き、

他のペアまでつられて笑い出した。

⸻

【Interview】

ミンギュ

⸻

「チアキちゃん。」

⸻

「自分のことを話そうとして。」

⸻

「やっぱりやめたんです。」

⸻

「たぶん。」

⸻

「まだ話したくないことがあるんだと思います。」

⸻

少し考える。

⸻

「でも。」

⸻

「無理に聞きたいとは思いませんでした。」

⸻

「話したくなった時に話してくれたら、それでいいかなって。」

⸻

【STAFF NOTE】

「自分のことはあまり話さない。」

⸻

ミンギュが何気なく口にした一言。

⸻

チアキは笑っていた。

⸻

しかし、その一瞬だけ、

笑顔の奥に影が差したことを、

固定カメラは見逃さなかった。

⸻

そして、このあと。

⸻

ほんの小さなハプニングが、

ミンギュにあることを気付かせる。

⸻

「この人は、本当に困っていても——」

⸻

「いつも『大丈夫です』と笑う。」

⸻

Episode5 Scene5

『思わぬハプニング』


→

ノベルに戻る I Addict