ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode35

『言えないままの気持ち』

― 楽しい時間の後に残る、小さな違和感。―

Day:Sunday(共同生活35日目)



Scene4

『404 HOUSEの夕食』

Sunday|18:00 PM



404 HOUSE。



夜。



いつもの夕食時間。



仕事や外出から戻ったメンバーが、

少しずつリビングへ集まってくる。





「ただいまー。」



「おかえり。おつかれさま。」



自然に交わされる言葉。





最初の頃なら、

少し距離のある挨拶だった。



今では、

この家に帰ってきた時の

当たり前の言葉になっていた。





ダイニング



テーブルには、

みんなで囲む夕食。



昨日の遊園地の話。



撮った写真。



絶叫マシン。



お化け屋敷。





話題は自然と昨日の思い出になる。





スングァンがスマホを見せる。



「これ、ほんとに消してほしいんだけど。」





画面には、

昨日の絶叫顔。





「まだ言ってるの?(笑)」



スニョンが笑う。





「だって、ひどいでしょ。」





「でも、一番おもしろかったよ。」





チェリンが笑いながら言う。





「それ、褒めてないから。」





また笑い声が広がる。





食卓





その様子を見ながら、

チアキも笑っている。





自然な笑顔。





以前なら。





みんなが盛り上がっている時、

少し遠慮していた。





輪の中にいても、

どこか一歩引いた場所から

空気を読んでいるような笑い方だった。





でも今は。





自分から話題を出すことも増えた。





その変化は、

ほんの少しずつだったけれど、

誰の目にもわかるくらい

やわらかくなっていた。





「でも、スングァンさん。」





チアキが言う。





「お化け屋敷のとき、私よりびっくりしてましたよね。」





一瞬。





静かになる。





そして。





「え、今の俺いじった?」





スングァンが目を丸くする。





「今、俺のこといじった?」





チアキは自分でも驚いたように笑う。





「あ……。」





言ってしまってから、

少しだけ頬が熱くなる。





「ごめんなさい、つい。」





すぐに戻る敬語。





でも。





その場にいた全員が笑った。





「今の、すごく自然だったじゃん。」





ジョンハンが笑う。





「距離、縮まってきた証拠だな。」





チアキは少し照れる。





「気を抜くと、つい出ちゃうみたいです。」





その言葉に、

ミンギュはふっと目を細める。





チアキが少しだけ肩の力を抜いて、

この場に馴染んでいること。





それが嬉しかった。





けれど同時に、

その笑顔が自分だけに向けられたものではないとわかっていて、

胸の奥が静かに揺れる。





食後





片付けの時間。





チアキが食器を運ぶ。





ミンギュが自然に手伝う。





「持つよ。」





「大丈夫です、持てます。」





いつものやり取り。





でも。





少し違う。





チアキが少し考えて、

小さく言う。





「……じゃあ、お願いしてもいいですか。」





ミンギュが一瞬止まる。





「うん、もちろん。」





短い返事。





それだけなのに、

手渡された皿の重さよりも、

その一言のほうが胸に残る。





以前なら、

「大丈夫です」

で終わっていた会話。





今は、

相手に頼ることが少しずつできるようになっている。





その小さな変化が、

ただの共同生活の中で起きていることなのに、

どこか特別な意味を持っているように感じられた。





リビング





片付けが終わり、

11人がそれぞれ自由な時間へ戻る。





その中で。





誰かが誰かを気にかける。





疲れていないか。



楽しかったか。



何か変わったことはないか。





大きな言葉はない。





でも。





一緒に暮らす時間の中で、

小さな気遣いが積み重なっていた。





そのひとつひとつが、

気づかないふりをしていても、

確かに距離を変えていく。





チアキがふと視線を上げた時、

ミンギュと目が合う。





ほんの一瞬。





それだけで、

どちらも先に逸らしてしまう。





けれど、

逸らしたあとに残る静かな熱は、

以前より少しだけ長く続いていた。





【STAFF NOTE】



共同生活35日目。





近づくということは、

特別な会話をすることだけではない。





何気ない冗談。



自然なお願い。



小さな頼り方。





そんな瞬間に、

人は少しずつ相手を信頼していく。





そして。





信頼の先にある感情は、

まだ誰にも名前をつけられていない。





けれど、

名前のないままでも、

確かにそこにあるものがある。





視線が重なるたび、

言葉にしないまま胸の奥で揺れるものが、

少しずつ形を変え始めていた。





次回 Scene5

『404 Diary』



言葉にすることで、

初めて気づく気持ち。



誰かの一言が、

誰かの心に残っていた。




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