ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―
Episode37
『残された言葉』
― 誰かを想って残したものが、誰かを傷つけることもある。―
Day:Tuesday(共同生活37日目)
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Scene4
『404 HOUSEでのウォヌ』
Tuesday|Evening
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404 HOUSE。
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夕方の空はすでに群青へと沈みかけていて、
窓の外には、街の灯りがひとつ、またひとつと滲み始めていた。
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玄関のドアが開く。
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「ただいま。」
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ウォヌが帰宅する。
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靴音が静かに床を打ち、
閉じたドアの向こうから、外の冷たい空気が一瞬だけ流れ込む。
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いつもと同じ声。
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いつもと同じ表情。
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でも。
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今日のウォヌを、
スタッフだけは知っていた。
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過去を話したこと。
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自分の中にしまっていた後悔を、
初めて言葉にしたこと。
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それでも。
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404 HOUSEでは、
何も変わらない日常が流れていた。
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リビング
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照明のやわらかな光が、
ソファやテーブルの角を淡く照らしている。
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テレビはついているが音は小さく、
部屋の中には、誰かがページをめくる音や、
マグカップを置く小さな音だけが落ちていた。
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スングァンがソファから顔を上げる。
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「おかえり。」
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「今日は早かったね。」
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ウォヌは軽く頷く。
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「うん、思ったより早く終わった。」
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「ご飯はもう食べた?」
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「食べたよ。」
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短いやり取り。
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でも。
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その気負わなさが、
ウォヌには少しだけ嬉しかった。
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以前なら。
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何かを話した後。
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相手の反応が怖かった。
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どう見られるか。
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何を思われるか。
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そんなことばかり考えていた。
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でも。
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ここでは。
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誰も、
無理に聞こうとはしない。
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キッチン
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キッチンでは、湯気の立つポットの音が小さく響いていた。
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スニョンが水を飲みながら、
ウォヌを見る。
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「……なんか、今日ちょっと疲れてない?」
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ウォヌは少し驚く。
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「え、分かる?」
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スニョンは肩をすくめて笑う。
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「分かるよ。いつもより、ちょっと静かだし。」
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ウォヌは少し考える。
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窓の外では、夕闇がさらに濃くなり、
ガラスに映る自分の顔も、少しだけぼやけて見えた。
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そして。
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「……少しだけ。」
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正直に答えた。
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以前なら。
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「大丈夫。」
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そう言って終わらせていた。
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でも今は。
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少しだけ本音を出せる。
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スニョンは、
それ以上聞かなかった。
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「そっか。」
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「じゃあ、今日は無理しないで早めに休みなよ。」
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それだけ。
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理由を聞かない。
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無理に励まさない。
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ただ、
そこにいる。
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その距離感が、
ウォヌには心地よかった。
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リビング
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ジョンハンが本を読んでいる。
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ページの端を指で押さえたまま、
窓の外へ一度だけ視線を向ける。
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ウォヌが隣に座る。
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ソファのクッションがわずかに沈み、
布の擦れる音が静かに広がる。
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少しの沈黙。
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以前なら。
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沈黙は、
何か話さなければいけない時間だった。
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今は。
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何も言わなくてもいい時間になっていた。
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ジョンハンが本から目を上げる。
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「今日は、けっこう大変だった?」
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ウォヌは少し笑う。
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「……まあ、少しね。」
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ジョンハンは小さく頷く。
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「そっか。おつかれさま。」
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それ以上は聞かない。
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でも。
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その一言だけで十分だった。
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スタッフカメラ
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ウォヌの表情を映す。
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静かな顔。
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でも。
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以前とは少し違う。
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閉じた静けさではない。
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誰かと同じ空間にいることを、
受け入れている静けさ。
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窓の外の夜が深まっていく中で、
その横顔には、少しだけ柔らかな影が落ちていた。
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【STAFF NOTE】
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過去を話すことは、
簡単なことではない。
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でも。
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誰かに受け止めてもらうことで、
過去の意味は少しずつ変わっていく。
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ウォヌは、
まだすべてを許せたわけではない。
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自分自身への後悔も。
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失ったものへの痛みも。
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完全になくなったわけではない。
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それでも。
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404 HOUSEでは、
「近づくこと」が、
必ず誰かを傷つけるわけではないと、
少しずつ知り始めていた。
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次回 Scene5
『言葉にしない優しさ』
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静かな夜。
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リビングの明かりだけが残り、
廊下の奥はすでに眠りについたように暗い。
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ウォヌとチアキ。
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本を通して交わす、
小さな会話。
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そして。
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言葉ではなく、
相手を理解している距離。
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