ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode39

『完璧じゃない自分』

― 誰かに優しくできる人ほど、自分には厳しい。―

Day:Thursday(共同生活39日目)



Scene1

『いつもの朝』

Thursday|Morning



404 HOUSE。



朝。



いつものように、

キッチンから食器の音が聞こえる。



コーヒーの香り。



焼けたパンの匂い。



誰かの笑い声。



変わらない朝。





キッチンに立っているのは、

ミンギュ。



手際よく料理を並べる。



人数分の皿。



それぞれの好みを考えた味付け。



もう、

この家では見慣れた光景だった。





「ミンギュ、ほんとすごいよね。」





スングァンがテーブルにつきながら言う。





「朝からこんなの作れるのすごい。」





スニョンも頷く。





「料理できるし。」



「掃除もできるし。」



「何でもできるじゃん。」





ミンギュは笑う。





「そんなことないよ。」





いつもの返事。



いつもの笑顔。





「できないこともあるって。」





そう言いながら、

料理を取り分ける。





「でも、ミンギュがいると安心する。」





スンチョルが何気なく言う。





その言葉に、

ミンギュは一瞬だけ手を止める。





「……そう?」





「うん。」





「頼れるから。」





ミンギュは笑う。





「ありがとう。」





いつものように。





でも。





その「頼れる」という言葉が、

嬉しいはずなのに、

胸の奥に小さな痛みを残す。





誰かに必要とされることは、

本当は嬉しい。





けれど同時に、

その期待を裏切りたくない気持ちが、

いつも先に立ってしまう。





少しでも抜けがあれば。



少しでも手を抜けば。



自分が気づかないうちに、

誰かを困らせてしまうかもしれない。





だからミンギュは、

人より少しだけ早く動く。



人より少しだけ多く気を配る。



人より少しだけ、

自分に厳しくなる。





それは優しさでもあり、

同時に、

自分を追い詰める癖でもあった。





スタッフカメラだけが、

ミンギュの表情を捉えていた。





笑っている。





いつも通り。





優しくて。



余裕があるように見える。





でも。





一瞬だけ。





誰にも見えないところで、

少しだけ視線が落ちた。





スタッフNOTE



404 HOUSEでのミンギュは、

いつも誰かを支える側だった。





料理を作る。



困っている人を助ける。



空気を見る。



誰かが疲れていれば、

先に気づく。





だからこそ。





周りから見れば、

「何でもできる人」。





でも。





完璧に見える人ほど、

自分自身に求めるものは大きい。





誰かに褒められるたび、

その言葉を素直に受け取れないことがある。





「まだ足りない」



「もっとできたはず」



そんなふうに、

自分だけに厳しい答えを返してしまう。





誰かに許される前に、

自分で自分を許せないことがある。





玄関





出発の時間。





「行ってきます。」





「行ってらっしゃい。」





いつもの挨拶。





ミンギュも笑顔で手を振る。





ドアが閉まる。





一人になったキッチン。





ミンギュは、

さっき使った調理器具を確認する。





綺麗に片付いている。





問題ない。





それでも。





「……。」





ほんの少しだけ、

自分の中で何かを確認するように、

もう一度だけ周りを見る。





誰にも見せない癖。





失敗がないか。



足りないものがないか。



誰かが困らないか。





いつも、

先回りして考えてしまう。





それは、

誰かに迷惑をかけたくないから。





そしてもうひとつ。





自分が誰かの役に立てなくなることを、

どこかで怖がっているからだった。





優しくしたい。



支えたい。



そう思うほど、

自分の弱さや未熟さが、

許せなくなる。





だからミンギュは、

誰よりも静かに、

誰よりも厳しく、

自分を整え続けていた。





その理由を、

まだ誰も知らない。





【STAFF NOTE】



誰かにとって当たり前の優しさは、

本人にとっては、

努力して守っているものなのかもしれない。





笑顔の裏側。



余裕の裏側。



完璧に見える姿の奥に、

まだ誰にも見せていない部分がある。





次回 Scene2

『小さな失敗』



ミンギュの仕事現場。



いつも完璧に見える彼が、

珍しくミスをする。



その時、

周囲が見るのは失敗ではなく――

彼自身だった。




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