ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode39

『完璧じゃない自分』

― 誰かに優しくできる人ほど、自分には厳しい。―

Day:Thursday(共同生活39日目)



Scene4

『できないって言えない』

Thursday|Night



夕食を終えた404 HOUSE。



「ごちそうさまでした。」



食器を片付ける音が、

キッチンに響く。



リビングでは、

スングァンとスニョンがテレビを見ながら笑っている。



ジョンハンはソファで本を開き、

ウォヌは静かにコーヒーを淹れていた。



その一方で、

キッチンではミンギュが一人で冷蔵庫を開けていた。



「何してるの?」



チアキが覗き込む。



ミンギュは振り向いて笑う。



「デザート。」



「昨日スーパーで果物買ってたから。」



「せっかくだし、みんなで食べようと思って。」



チアキも笑う。



「いいですね。」



「手伝いましょうか?」



「ありがとう。」



「でも大丈夫。」



そう言って、

ミンギュはフルーツを切り始める。



いちご。



キウイ。



オレンジ。



一つひとつ、

丁寧に盛り付けていく。



その時。



「……。」



ミンギュの手が止まる。



生クリームを絞った形が、

思っていたものと少し違った。



「んー……。」



眉を寄せて、

スプーンで整える。



もう一度、絞り直す。



それでも、

まだ納得できない。



「ミンギュさん?」



チアキが小さく声をかける。



「ん?」



「十分きれいですよ。」



ミンギュは首を横に振る。



「いや。」



「もう少しできる。」



そう言いながら、

どこか言い訳のように聞こえてしまって、

自分で少し気まずくなる。



「……チアキさん。」



「はい?」



「そこ、そんなに近いと見えない?」



冗談めかして言ったつもりだったのに、

言い終わったあとで少し照れる。



チアキは一瞬きょとんとして、

それから小さく笑った。



「じゃあ、少し離れます。」



一歩だけ下がる。



でも、

完全には離れない。



その距離がなんとなく落ち着かなくて、

ミンギュは視線を落としたまま、

「……いや。」

と小さく言う。



「そのままでいい。」



チアキは少しだけ目を丸くする。



「そのまま?」



「うん。」



「見ててくれると、落ち着くから。」



言ったあとで、

ミンギュは自分の言葉に気づき、

耳まで赤くなる。



チアキも、

ほんの少し視線をそらした。



「……わかりました。」



「じゃあ、見てます。」



その声がやわらかくて、

ミンギュは手元に集中するしかなくなる。



もう一度、

生クリームを絞り直す。



その様子を見ていたスングァンが、

リビングから顔を出す。



「まだやってるの?」



「デザートでしょ?」



ミンギュは笑う。



「うん。」



「もうちょっと。」



スングァンは皿を覗き込む。



「え?」



「これで十分じゃん。」



「普通にお店みたい。」



スニョンも近づいてくる。



「俺もそう思う。」



「早く食べたい。」



みんなが笑う。



でも、

ミンギュだけは生クリームを見つめたままだった。



少し考えて、

小さく息を吐く。



「でも、自分が納得できない。」



その一言で、

キッチンが少し静かになる。



誰も責めていない。



誰も気にしていない。



それでも、

ミンギュは思ってしまう。



「もっとできたはず。」



チアキはその横顔を見る。



今日、

仕事の話をしていた時と同じ表情。



失敗そのものではなく、

自分自身に納得できない顔。



チアキは、

少しだけ微笑んだ。



「ミンギュさん。」



「ん?」



「みんなが美味しいって思うことと。」



「ミンギュさんが納得することって。」



「時々、別なんですね。」



ミンギュは少し驚いて、

チアキを見る。



「……そうかも。」



小さく笑う。



「昔から。」



チアキは頷く。



「でも。」



そう言って、

スプーンを一つ手に取る。



フルーツを少し口に運ぶ。



「美味しいです。」



素直な一言。



「本当に、そう思います。」



「だから、私はこれで十分好きです。」



ミンギュは、

デザートを見る。



そして、

チアキを見る。



少し照れたように笑って、

ようやく手を止めた。



「……じゃあ。」



「これで完成。」



スングァンが拍手する。



「やっと!」



「いただきます!」



笑い声が広がる。



デザートを囲む、

何気ない夜。



でも、

今日のミンギュにとっては、

「十分だよ。」

と言ってくれる誰かの言葉が、

何より甘かった。



【STAFF NOTE】



完璧を目指す人は、

完成したものよりも、

「まだ足りない部分」を見てしまう。



でも、

その人の隣には、

「もう十分だよ。」

と伝えてくれる人がいる。



その一言は、

完璧を諦めさせるためではない。



安心して立ち止まれる場所を、

少しずつ作っていく。



次回 Scene5

『弱さを隠す癖』



何気ない会話。



その中で、

ミンギュ自身も気づいていなかった癖が、

静かに言葉になる。




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