ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode39

『完璧じゃない自分』

― 誰かに優しくできる人ほど、自分には厳しい。―

Day:Thursday(共同生活39日目)



Scene6【UNSEEN】

『完璧でいなければならなかった理由』

Staff Camera



深夜。



404 HOUSE。



リビングの灯りは落ち、

家の中は静かな眠りに包まれていた。



スタッフインタビュー。



今日、

最後に部屋へ戻ったのはミンギュだった。



椅子に座る。



いつものように、少しだけ笑う。



その笑顔は穏やかだったけれど、

口元の奥に、言葉にできない疲れが滲んでいた。

笑っていないと崩れてしまいそうな、

そんな危うさもあった。



スタッフが静かに尋ねる。



スタッフ:

「ミンギュさんは、周りからどう見られていると思いますか?」



ミンギュは少しだけ目を伏せる。



すぐには答えない。



喉の奥で何かを飲み込むように、

ゆっくり息を吐いた。



ミンギュ:

「頼れる人……だと思います。」



声は落ち着いていたけれど、

その一言を口にするまでに、

どれだけ自分を整えたのかが伝わるようだった。



少し間を置いて、



「でも、頼られることに慣れすぎると、

弱いところを見せるのが、すごく怖くなるんです。」



「大丈夫じゃない時ほど、

大丈夫って言わないといけない気がしてしまって。」



その言葉は、

静かな部屋の中に、まっすぐ落ちていった。



スタッフは何も挟まず、

ただ続きを待つ。



ミンギュは、両手を軽く組んだまま話し始める。



「周りからは、しっかりしてるって言われることが多かったです。」



「任せられるとか。」



「安心するって。」



少しだけ笑う。



でも、その笑みはすぐに消えた。



「そう言ってもらえるのは、すごく嬉しかったです。」



「嬉しかったはずなのに……」



「いつの間にか、その言葉に応えなきゃって、自分を追い込むようになっていました。」



「弱いところを見せたら、今まで積み上げてきたものが全部崩れる気がして。」



「がっかりされたくない、っていう気持ちが、ずっとどこかにありました。」



視線を落とす。



「本当はしんどい時もあるのに。」



「疲れてる時もあるのに。」



「それを言う前に、“大丈夫です”って先に言ってしまうんです。」



「言った瞬間だけは、少し楽になるんですけど。」



「そのあとで、また自分が何を感じていたのか分からなくなる。」



「ちゃんとしていないといけないって思うほど、

自分の弱さを見ないふりするのが上手くなってしまって。」



少し沈黙。



「でも、ずっとそれを続けてると。」



「どこまでが本音なのか、自分でも分からなくなる時があります。」



「頼られるのは嬉しいです。」



「でも、頼られるほど、弱い自分を出すのが難しくなる。」



「タイミングを逃したまま、言えなくなることもありました。」



スタッフが静かにうなずく。



ミンギュは、少しだけ肩の力を抜いた。



「たぶん、僕は。」



「“頼れる人”でいることに慣れすぎてたんだと思います。」



「だから、誰かに甘えるのも。」



「助けてって言うのも。」



「簡単じゃなかったです。」



少し間を置いて、



「大丈夫じゃない時も、大丈夫って言う癖がつきました。」



その一言に、

これまで言えなかった時間が、静かに滲んでいた。



スタッフが尋ねる。



「それを、ここで少しずつ変えられている感じはありますか?」



ミンギュは、ほんの少しだけ笑う。



「あります。」



「ここでは、無理に強くいなくてもいい時があるので。」



「“疲れてる?”って聞いてもらえるだけで、すごく救われることがあって。」



「自分が思っていたより、ちゃんと見てもらえてるんだなって思いました。」



少しだけ目を上げる。



「頼れる人でいたい気持ちは、今もあります。」



「でも、頼られるだけじゃなくて。」



「頼ってもいいんだって、少しずつ思えるようになってきました。」



インタビューが終わる。



ミンギュは立ち上がる前に、

小さく息を吐いた。



その表情は、

来た時よりも、ほんの少しだけやわらかかった。



【STAFF NOTE】



「頼れる人」と見られることは、

誇らしい。



でも。



その役割を守ろうとするほど、

自分の弱さを後回しにしてしまう人もいる。



ROOM404で少しずつほどけていくのは、

恋だけではない。



「大丈夫じゃない時も、大丈夫って言わなくていい。」



その言葉が、

誰かの心を少しずつ軽くしていく。



Episode39 END



次回予告

Episode40

『完璧じゃなくても』

共同生活40日目



誰よりも周りを支えてきた人。



でも、その人自身は、

ずっと「支えられる側」になることを知らなかった。



初めて差し出される、

小さな「頼ってもいい」という言葉。



それは、

弱さではなく、

誰かを信じるための一歩だった。



「頼ること。」



その先にあるやさしさが、

またひとつ、ROOM404の夜をあたためていく。




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