ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―
Episode41
『近づきすぎた距離』
― 一緒にいることが当たり前になるほど、気持ちは隠しにくくなる。―
Day:Saturday(共同生活41日目)

Scene7【STAFF CAMERA】

『迷子』

未公開映像



ソンス。



午後。



スタッフカメラだけが撮っていた映像。



カフェを出た三人。



スンチョルとミンギュが、

少し前を歩いている。



街の話。



仕事の話。



何気ない会話が続いていた。



その空気は穏やかで、

三人でいることに誰も疑問を持たないほど自然だった。



「このあと、少しだけ寄り道してもいい?」



チアキがそう聞くと、

ミンギュはすぐに振り返る。



「もちろん。」



「でも、ちゃんとついてきて。」



スンチョルも笑って、

少しだけ肩をすくめる。



「迷子になったら、今度は呼んで。」



「……呼ぶ前に見つけてくれそうだけど。」



チアキがそう返すと、

二人は同時に笑った。



少し後ろを歩いていたチアキは、

ふと足を止める。



小さな雑貨屋の前。



ショーウィンドウの中に並ぶ、

手作りのマグカップ。



小さなオルゴール。



木製のキーホルダー。



「かわいい……。」



思わず漏れた声は、

自分でも気づかないほど小さかった。



ほんの十数秒。



ただ、それだけだった。



けれど、

顔を上げた瞬間、

胸の奥がすっと冷える。



「……あれ?」



前を見る。



二人の姿がない。



一本道。



人通り。



さっきまで見えていた背中は、

もうどこにもなかった。



チアキの呼吸が、

わずかに浅くなる。



ほんの少し前まで、

すぐそこにいたはずなのに。



たった数歩、

視線を逸らしただけで、

世界から切り離されたような感覚がした。



視線を上げても、

背中は見えない。



呼び止める声も、

雑踏に吸い込まれていく。



「ミンギュさん……?」



「スンチョルさん……?」



声は思ったより小さく、

自分の耳にさえ頼りなく響く。



小さく辺りを見回す。



人の流れ。



車の音。



店先の明るさ。



どれも変わらないのに、

急に世界だけが広くなったようだった。



誰かを見失うことが、

こんなにも心細いなんて思っていなかった。



その頃。



少し先。



スンチョルがふと後ろを見る。



「あれ?」



「チアキは?」



ミンギュも振り返る。



「……。」



姿がない。



一瞬。



二人の表情が変わる。



さっきまで当たり前のようにいたはずの気配が、

ふいに途切れたことに、

すぐ気づいた。



胸の奥に、

言葉にならない不安が走る。



「戻ろう。」



ミンギュがすぐに言う。



その声は落ち着いていたけれど、

ほんのわずかに硬かった。



スンチョルも、

何も言わずにうなずく。



二人は来た道を引き返す。



「チアキ!」



人混みの中。



名前を呼ぶ。



その声には、

もう迷いがなかった。



スタッフカメラは、

普段落ち着いている二人が、

明らかに焦った表情で歩く姿を映していた。



ミンギュは視線を左右に走らせ、

スンチョルは人の流れの向こうまで確かめるように見渡す。



ほんの少し見失っただけなのに、

見つからないかもしれないという不安が、

思った以上に強く胸を締めつけていた。



数十秒後。



雑貨屋の前。



「あ。」



チアキが二人に気づく。



その瞬間、

張りつめていたものが、

ふっとほどける。



見つけた、という安堵と、

見つかった、という安堵が、

同時に三人の表情をやわらげた。



「ごめん!」



少し申し訳なさそうに笑う。



「雑貨見てたら……。」



その声には、

自分が思っていた以上に二人を心配させてしまったことへの戸惑いが滲んでいた。



ミンギュは、

大きく息を吐く。



「よかった……。」



その一言が、

胸の奥からこぼれ落ちる。



さっきまで張りつめていた肩の力が、

ようやく抜けていく。



スンチョルも笑う。



「急にいなくなるからびっくりした。」



その笑顔は穏やかだったけれど、

本当に心配していたことが、

そのまま伝わってくるようだった。



チアキは頭を下げる。



「ごめんなさい。」



ミンギュは苦笑しながら首を振る。



「謝らなくていい。」



「見つかってよかった。」



その言葉は短いのに、

さっきまで抱えていた不安を静かにほどいていく。



チアキは少しだけ目を伏せて、

小さく笑う。



「……置いていかれたかと思った。」



その一言に、

ミンギュとスンチョルは同時に顔を見合わせた。



スンチョルが、やわらかく笑う。



「置いていくわけないでしょ。」



ミンギュも、少しだけ困ったように笑う。



「次からは、ちゃんと声かけて。」



「うん。」



チアキがうなずくと、

二人の表情がさらにやわらぐ。



スンチョルも、

少しだけ目を細めて笑った。



「ほんと、見つかってよかった。」



その時の、

安心した表情を、

スタッフカメラだけが捉えていた。



【STAFF NOTE】

ほんの数十秒。



それだけ離れただけだった。



でも。



“いない”



その事実だけで、

二人はすぐに引き返した。



探すことが、

もう当たり前になっていた。



共同生活41日目。



誰かを気にかけることは、

もう特別な行動ではなく、

自然な習慣になっていた。



次回予告

Episode42

『言葉より近く』

共同生活42日目。



昨日より少しだけ近くなった距離。



何気ない一言。



何気ない笑顔。



そして――

404 Diaryに綴られる、

まだ誰にも見せていない本当の気持ち。



言葉より近く、

心が少しずつ動き始める。




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