ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode43

『笑顔の理由』

― 笑顔は、強さの証とは限らない。―

Day:Monday(共同生活43日目)



Scene2

『仕事の顔』

Monday|Afternoon



ソウル市内。



ダンススタジオ。



プロダンサー・振付師としてのスニョンが立つ、

大きな鏡。



床に反射する照明。



スピーカーから流れる重低音。



404 HOUSEで見せる、

明るく賑やかなスニョンとは違う空気が、

そこにはあった。



Dance Studio



「もう一回。」



インストラクターの声。



音楽が最初から流れ始める。



スニョンは深く息を吸い、

立ち位置につく。



さっきまで笑っていた表情は消え、

真っ直ぐ前だけを見つめていた。



一つひとつの動き。



指先。



視線。



足の角度。



ほんの数センチのズレも許さない。



「そこ、もう少し。」



「はい。」



短く返事をして、

もう一度踊る。



汗が額を伝う。



呼吸が少しずつ荒くなる。



それでも、

止まらない。



リハーサル終了



音楽が止まる。



「休憩!」



スタッフの声で、

ようやく張り詰めた空気がほどける。



他のダンサーたちは、

水を飲みながら笑い合っている。



「今日きつかった。」



「汗すごい。」



そんな声が飛び交う。



スニョンも笑顔で輪に入る。



「もう一回やったら倒れる(笑)」



周りも笑う。



いつものスニョン。



明るくて、

場を和ませる人。



でも。



その笑顔を作りながら、スニョンは内心で小さく息を呑んでいた。

さっきの振りで、右膝に鋭い痛みが走ったのを、まだ誤魔化しきれていない。

大丈夫。まだいける。

そう自分に言い聞かせるたび、逆に痛みの輪郭がはっきりしていく気がした。

ここで顔に出したら、きっと心配される。

迷惑をかけたくない。

弱いと思われたくない。

そんな思いが胸の奥で絡まり合って、笑うほどに苦しくなる。



スタッフカメラは、

その輪から少し離れた場所を映していた。



Staff Camera



休憩中。



誰もいないスタジオの端。



スニョンが一人、

床に座る。



ペットボトルの水を一口飲む。



そして。



右膝へ、

静かに手を置く。



「……。」



ほんの数秒。



親指で、

膝のあたりをゆっくり押さえる。



痛みを確かめるように。



呼吸を整えるように。



その瞬間だけ、胸の奥に不安が広がる。

このまま最後まで踊れるだろうか。

もし動きが鈍れば、すぐに気づかれる。

でも、ここで止まるわけにはいかない。

まだ終わっていない。

まだ、誰にも知られたくない。

そう思うほど、膝の痛みが自分の弱さみたいに感じられて、少しだけ怖くなる。



顔には笑顔はない。



ただ、

少しだけ目を閉じる。



その表情は、

404 HOUSEでは誰も見たことがなかった。



「スニョン!」



仲間に呼ばれる。



「次行くよ!」



スニョンはすぐ立ち上がる。



「はーい!」



いつもの笑顔。



何事もなかったように走っていく。



膝へ触れていたことも、

誰にも見せないまま。



スタッフインタビュー



スタッフ。



「今日はリハーサルでしたね。」



スニョンは笑う。



「はい。」



「毎回必死です。」



「でも楽しいですよ。」



いつもの明るい口調。



けれど、

インタビューが終わりかけた時。



立ち上がる瞬間だけ、

ほんの少しだけ右足へ体重をかけるのをためらう。



その一瞬、胸の奥でまた不安がよぎる。

見られたかもしれない。

気づかれたかもしれない。

そんな考えが頭をかすめるたび、笑顔を崩してはいけないと自分を追い立てる。

大丈夫、平気。

そう言い聞かせて、痛みを飲み込む。



すぐに歩き出す。



誰も気づかないくらい、

小さな動き。



でも、

スタッフカメラだけは、

その一瞬を見逃さなかった。



【STAFF NOTE】

404 HOUSEでは、

誰よりも笑う人。



誰よりも場を明るくする人。



その笑顔の裏には、

誰にも見せていない時間があった。



膝へ触れる手。



誰もいない場所で見せる真剣な表情。



そして、

すぐに戻る笑顔。



その理由を、

まだ404 HOUSEの誰も知らない。



次回 Scene3

『スニョンの秘密』

スタッフインタビュー。



「昔、大きな怪我をしました。」



誰にも話してこなかった過去。



笑顔の裏に隠し続けてきた、

本当の理由が静かに明かされる。




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