ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode6

『雨の日の404 HOUSE』

― 誰にも見せなかった弱さ ―



Scene2

『暇な午後』



午後1時12分。



雨は朝よりも強くなっていた。

大きな窓を打ちつける雨音が、404 HOUSE全体を優しく包み込んでいる。

庭へ出ることもできない。

予定されていた外ロケも中止。

今日は一日、この家の中だけで過ごす。



昼食を終えたリビング。

誰も「次は何をしよう」と決めていない。

それぞれが思い思いの時間を過ごしていた。



ダンスレッスン

「暇だー!」



スニョンが突然立ち上がる。



「よし!」



「5分だけ体動かそう!」



スマートフォンから軽快な音楽が流れ始める。



「肩回してー!」



「はい、伸びるー!」



チェリンが笑いながら真似をする。



「先生、本気じゃん!」



「もちろん!」



「体は毎日動かさないと!」



ソヨンも控えめに参加する。



「結構気持ちいいですね。」



「でしょ?」



「チアキちゃんも!」



「はい。」



チアキも笑顔で輪に入る。

今日は髪を自然に下ろしたまま。

アッシュブラウンのゆるいくせ毛が揺れる。



「え!」

チェリンが目を丸くする。



「チアキちゃん柔らかい!」



「昔、少しだけバレエを習っていたので。」



「だから姿勢がきれいなんだ。」

ミンギュが何気なく呟く。



チアキは少し照れ笑いを浮かべた。



コーヒータイム



ダンスが終わる頃、

ミンギュはキッチンへ向かう。



コーヒーミルで豆を挽く。

ゴリゴリという音が、

雨音と重なる。



「今日も淹れるの?」

ジョンハンが近づく。



「雨の日だから。」



「深煎り。」



ゆっくりお湯を注ぐ。



部屋いっぱいに、

香ばしい香りが広がる。



「いい匂い。」



チアキも自然とキッチンへ近付く。



「コーヒー飲める?」

ミンギュが聞く。



「はい。」



「でも今日は紅茶にします。」



「雨の日は紅茶?」



「なんとなく。」



「分かる気がする。」



二人は笑った。



それぞれの時間



ウォヌは窓際で本を開く。



ページをめくる音だけが静かに響く。



ソヨンはタブレットで保護犬の動画を見ていた。



「見てください。」



「この子かわいい……。」



ユナも覗き込み、

自然と笑みがこぼれる。



「本当だ。」



「眠そう。」



その笑顔は優しい。



でも、

どこか疲れて見えた。



チアキはその小さな違和感を、

何となく覚えていた。



ゲーム大会



突然、

スングァンが立ち上がる。



「みんな!」



「このままだと寝ちゃう!」



「ゲームしよう!」



「何する?」

スンチョルが聞く。



スングァンはトランプとカードの束を取り出した。



「負けた人は質問カード!」



「恋愛の質問は禁止!」



「人柄が分かる質問だけ!」



「それなら楽しそう。」

ジョンハンが笑う。



全員が円になって座る。



ゲームスタート。



ROUND1



最初の敗者。



スニョン。



「うわー!」



質問カードを引く。



『最近、一番恥ずかしかったことは?』



「昨日!」



「ダンス教えてる時。」



「左右間違えた。」



チェリンが吹き出す。



「先生なのに?」



「しかも自信満々!」



「みんな逆やってた!」



リビングが笑いに包まれる。



ROUND2



負けたのはウォヌ。



カードを読む。



『子どもの頃の夢は?』



「宇宙飛行士。」



全員が固まる。



「え?」

スングァンが思わず聞き返す。



「なんで?」



ウォヌは真顔のまま答える。



「宇宙なら。」



「静かそうだったから。」



数秒の沈黙。



そして、

大爆笑。



「その理由初めて聞いた!」



「ウォヌらしい!」



ウォヌも少しだけ笑った。



ROUND3



負け。



チェリン。



『コンビニで必ず買うものは?』



「アイス。」



「毎回?」

ソヨン。



「毎回。」



「ダイエット中でも?」



「一口だけ食べる。」



ミンギュが笑う。



「残りは?」



「冷凍庫。」



「絶対あとで全部食べるでしょ。」



チェリンは笑いながら降参した。



「……食べます。」



ROUND4



負け。



チアキ。



スングァンがカードを読む。



『最近、小さく幸せだったことは?』



チアキは少し考える。



窓の外を見る。



そして静かに答えた。



「この家で。」



「朝起きたら。」



「誰かが『おはよう』って言ってくれることです。」



その一言で、

空気が少し変わる。



チアキは少し照れながら続けた。



「一人暮らしが長かったので。」



「家に帰っても誰もいない生活が当たり前でした。」



「だから。」



「朝、リビングに来ると誰かがいて。」



「『おはようございます。』って言ってくださるのが。」



「なんだか嬉しいです。」



ソヨンが優しく笑う。



「それ、すごく分かる。」



ジョンハンも静かに頷く。



ミンギュは何も言わない。



ただ、

その言葉を覚えるように、

チアキを見つめていた。



ROUND5



負け。



ミンギュ。



『自分の短所を一つ。』



「せっかち。」



即答だった。



「待つの苦手。」



「連絡の返信も?」

ユナが聞く。



「既読付いたら待てない。」



スニョンが大きく頷く。



「俺も!」



「仲間!」



「せっかち同盟だ!」



笑いが起こる。



ROUND6



最後に負けたのは、

ユナだった。



カードを見る。



『最近、自分を褒めたいと思ったことは?』



ユナは黙った。



数秒。



笑顔を作る。



「……特にないかな。」



「毎日。」



「反省ばっかりだから。」



スングァンが場を明るくしようと笑う。



「真面目だな〜!」



「CEOっぽい!」



その場は笑いに包まれ、

ゲームは続いた。



でも。



チアキだけは、

ユナの笑顔が少しだけ無理をしているように見えた。



ゲームのあと



夕方。



ゲームが終わり、

それぞれ飲み物を取りに立ち上がる。



チアキはキッチンへ向かう。



冷蔵庫から炭酸水を一本取り出した。



何も言わず、

ユナの前へ置く。



「ユナさん。」



「よかったら。」



ユナは少し驚く。



「……ありがとう。」



「少し疲れているように見えたので。」



チアキはそれ以上何も聞かない。



笑顔だけ残して、

自分の席へ戻っていく。



ユナは炭酸水を見つめた。



ゆっくりキャップを開ける。



そのやり取りを、

少し離れた場所からジョンハンが静かに見ていた。



何も言わない。



ただ、

穏やかに微笑んだ。



【Interview】

ジョンハン



「チアキって。」



「『大丈夫?』って何回も聞かないんです。」



「でも。」



「ちゃんと気付いてる。」



「何も聞かずに、そっと飲み物を置く。」



少し笑う。



「相手が話したくなるまで待てる人なんだと思います。」



【STAFF NOTE】

笑い声で溢れた雨の日。



それぞれの素顔が少しずつ見え始める中で、

一つだけ静かな出来事があった。



ユナの「自分を褒められない」という言葉。



誰も深く追及しなかった。



ただ一人、

チアキだけがその表情の奥にあるものに気付いていた。



その小さな気遣いは、

この日の夜、

ユナが初めて自分の過去を語るきっかけになる。



Episode6 Scene3

『ユナの秘密』




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