ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―
Episode7
『404 HOUSE、初めての休日』
― 家の外で見える、新しい一面 ―
⸻
Sunday
共同生活 7日目
⸻
Scene5
『芝生のランチ』
⸻
午後1時07分。
公園の中央に広がる大きな芝生。
スタッフが用意した大きなレジャーシートの上に、11人が自然と集まってくる。
買ってきたサンドイッチやキンパ、フルーツ、サラダ、お菓子が並べられ、まるで本当のピクニックのようだった。
⸻
「いただきます!」
全員の声が青空に響く。
⸻
「これ、おいしい!」
スニョンがキンパを頬張る。
⸻
「もう三本目じゃない?」
スングァンが呆れたように笑う。
⸻
「まだ二本。」
⸻
「数えてる時点で多いよ。」
⸻
笑い声が広がる。
⸻
チアキは近くの紙皿を見つけると、自然と立ち上がった。
⸻
「取り分けますね。」
⸻
「ありがとう。」
ソヨンが微笑む。
⸻
「飲み物も配るよ。」
ミンギュも立ち上がる。
⸻
「じゃあ私も。」
ユナも手伝い始める。
⸻
「なんか三人とも動き始めるの早いね。」
チェリンが笑う。
⸻
「癖なんだろうね。」
ジョンハンが穏やかに言う。
⸻
「仕事柄かな。」
⸻
チアキは一人ひとりに、
「何飲まれますか?」
と聞きながら紙コップを渡していく。
⸻
スングァンが受け取りながら笑う。
⸻
「チアキちゃん。」
⸻
「本当にCAって感じ。」
⸻
「え?」
⸻
「気付いたら全部配ってくれてる。」
⸻
チアキは少し照れて笑った。
⸻
「職業病ですね。」
⸻
「休みの日くらい座ってなよ。」
スンチョルが優しく声を掛ける。
⸻
「俺たちやるから。」
⸻
「ありがとうございます。」
⸻
そう言って座るものの、
ソヨンがサラダを取りづらそうにしているのを見ると、
すぐに皿を近くへ寄せる。
⸻
誰にも言われず、
ごく自然に。
⸻
その様子を見ていたジウォンがぽつりと呟く。
⸻
「本当に周りをよく見てる。」
⸻
ユナも静かに頷いた。
⸻
「だから一緒にいて疲れないんだろうね。」
⸻
食事中
⸻
「みんな休日って何してるの?」
スングァンが話題を振る。
⸻
「俺?」
スニョンが手を挙げる。
⸻
「寝る。」
⸻
「以上?」
⸻
「以上。」
⸻
「もったいな!」
⸻
「体力回復も仕事だから。」
⸻
「確かに。」
ミンギュが笑う。
⸻
「俺はジムかな。」
⸻
「休日も?」
ソヨンが驚く。
⸻
「行かないと落ち着かない。」
⸻
「さすが。」
⸻
ウォヌへ視線が向く。
⸻
「ウォヌさんは?」
⸻
「本屋。」
⸻
「想像通り。」
スングァンが笑う。
⸻
「新刊見て。」
⸻
「カフェ行って。」
⸻
「夕方帰る。」
⸻
「本当に小説みたいな休日。」
チェリンが笑う。
⸻
ジョンハンは微笑む。
⸻
「僕は散歩かな。」
⸻
「考え事しながら歩くの好き。」
⸻
「チアキちゃんは?」
ミンギュが尋ねる。
⸻
チアキは少し考えてから答えた。
⸻
「仕事の日はホテルにいることが多いので……。」
⸻
「休日は家でゆっくりすることが多いです。」
⸻
「映画観たり。」
⸻
「本読んだり。」
⸻
「たまにパン屋さん巡りもします。」
⸻
「パン好きなの?」
ソヨンが目を輝かせる。
⸻
「はい。」
⸻
「クロワッサンが好きです。」
⸻
「分かる!」
チェリンがすぐに反応する。
⸻
「私も!」
⸻
「韓国ってパン屋さん多いですよね。」
⸻
「今度みんなで行こうよ。」
スニョンが言う。
⸻
「パン屋巡り。」
⸻
「いいね。」
ジョンハンも頷く。
⸻
「でも休日なくなるよ?」
スングァンが笑う。
⸻
「一日中パン食べて終わる。」
⸻
「幸せじゃん。」
⸻
また笑いが起こる。
⸻
食後
⸻
フルーツを食べながら、
話題は子どもの頃の話へ。
⸻
「一番やんちゃだった人。」
スングァンが聞く。
⸻
「絶対スニョン。」
全員が同時に答える。
⸻
「なんで!」
⸻
「顔見れば分かる。」
ミンギュが笑う。
⸻
「偏見!」
⸻
「いや、当たってる。」
スンチョルが苦笑する。
⸻
「木登りして骨折した。」
⸻
「……。」
⸻
「何で知ってるの!?」
⸻
全員が大笑いする。
⸻
「チアキちゃんは?」
ソヨンが尋ねる。
⸻
「子どもの頃は?」
⸻
チアキは少し考える。
⸻
「静かだったと思います。」
⸻
「でも。」
⸻
「飛行機を見るのが好きで。」
⸻
「空港に連れて行ってもらうと、何時間でも見てました。」
⸻
「その頃からCAになりたかった?」
ジョンハンが聞く。
⸻
チアキは優しく微笑む。
⸻
「はい。」
⸻
「いつか世界中を飛び回る仕事がしたいって。」
⸻
「だから夢は叶ったんですね。」
ソヨンが嬉しそうに言う。
⸻
チアキは少しだけ空を見上げた。
⸻
「……はい。」
⸻
「叶いました。」
⸻
その言葉は穏やかだった。
⸻
けれど、その表情を見たウォヌだけは、ほんの少し違和感を覚える。
⸻
夢は叶った。
⸻
それなのに、どこか寂しそうな笑顔。
⸻
何か言葉を飲み込んだような沈黙。
⸻
ウォヌは何も聞かなかった。
⸻
聞かない方がいいと感じたから。
⸻
その代わり、小さくリンゴを切った容器をチアキの方へ差し出す。
⸻
「食べる?」
⸻
「あ、ありがとうございます。」
⸻
チアキは嬉しそうに受け取り、小さく笑った。
⸻
その様子を見ていたミンギュも自然に口元を緩める。
⸻
誰かが誰かを気遣い、
その気遣いがまた別の誰かへ伝わっていく。
⸻
そんな空気が、この家には少しずつ根付き始めていた。
⸻
【STAFF NOTE】
Sunday|共同生活7日目
この日のランチに、特別なイベントはなかった。
告白も、駆け引きもない。
それでもスタッフが何度も映像を見返した理由がある。
チアキが立ち上がると、自然と誰かが手伝いに立ち上がる。
以前は一人で動いていた彼女の気遣いが、少しずつ11人全員に広がり始めていた。
共同生活とは、「誰かに合わせること」ではない。
「誰かの優しさが伝染していくこと」なのかもしれない。
⸻
Episode7 Scene6
『帰り道』
休日の終わり。
車内で起きた、誰にも気づかれなかった小さな出来事を、スタッフカメラだけが静かに記録していた。
→
ノベルに戻る I
Addict