ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode8

『名前のない「おかえり」』

― 恋より先に、その人の生活を知る ―



Monday

共同生活 8日目

午前7:42



Scene1

『Diaryが届く朝』



朝の404 HOUSE。

キッチンからコーヒーの香りが漂う。

ミンギュがハンドドリップでコーヒーを淹れ、

スンチョルはトースターの前でパンを焼いている。

ジョンハンはフルーツを切り分け、

スニョンは眠そうな顔で大きなあくびをした。



「おはよー……。」



「まだ寝てるじゃん。」

スングァンが笑う。



「起きてる。」



「目閉じてるけど?」



「これは省エネ。」



朝から笑いが起こる。



階段から女性陣も降りてくる。

ユナはきちんとスーツ姿。

ジウォンも仕事用のジャケットを羽織っている。

ソヨンは夜勤明けとは思えないほど穏やかな表情で、

チェリンはまだ眠そうに髪をまとめていた。



最後にチアキが降りてくる。

アッシュブラウンのロングヘアは、CAらしく低い位置で美しくまとめられている。

白いシャツにネイビーのパンツ。

仕事へ向かう前の、落ち着いた装いだった。



「おはようございます。」



「おはよう、チアキちゃん。」

ミンギュが自然に笑う。



「コーヒー飲む?」



「ありがとうございます。」



「カフェラテもできるよ。」



「じゃあ……カフェラテでお願いします。」



「了解。」



そのやり取りも、もうどこか日常だった。



全員が席に着こうとした、その時。

玄関のチャイムが鳴る。



ピンポーン。



「朝から?」

スニョンが首を傾げる。



スンチョルが玄関へ向かう。

そこにはスタッフが置いていった、小さな木箱があった。



「また箱?」

スングァンが興味津々で覗き込む。



箱の蓋には、昨日と同じ文字。



404 Diary



静かに蓋を開ける。

中には11冊の小さなノート。

それぞれに番号だけが書かれている。



スタッフからのカードが一枚。



『あなた宛てに、返事のない最初の一通が届いています。』

『朝食の前に読んでください。』



部屋の空気が変わる。



誰も冗談を言わない。



一人ずつ、自分のDiaryを手に取る。



ページを開く音だけが重なる。



チアキ

最初のページ。

丁寧な文字で、一通のメッセージが書かれていた。



「あなたは、自分より先に周りを見ています。

昨日、写真に写って笑っている姿を見て安心しました。

これからは、あなた自身の思い出も少しずつ増えますように。」



チアキは、その一文をもう一度読む。



(……昨日。)

胸が少しだけ温かくなる。

誰が書いたのかは分からない。

でも、不思議と嬉しかった。



ミンギュ

ページを開く。



「誰かのために動く姿は、とても自然でした。

その優しさに救われる人は、きっとたくさんいます。」



ミンギュは少し照れたように笑う。



「……誰だろ。」



ウォヌ



「あなたは静かだけど、ちゃんと周りを見ています。

話さなくても伝わる優しさがあると思いました。」



ウォヌは何も言わない。

ただ、ページを閉じる前にもう一度だけ読み返した。



ユナ



「強い人ほど、弱さを見せるのは勇気がいると思います。

話してくれて、ありがとう。」



その文字を見た瞬間、

ユナの表情が少し柔らかくなる。



「……。」



昨日、自分の過去を話したことを思い出す。



「嬉しい。」

小さく呟いた。



スンチョル



「みんなが安心できる空気を作ってくれてありがとう。」



スンチョルは照れくさそうに笑った。



「こんなの書かれると照れるな。」



スングァン



「どう?」

スニョンが覗き込もうとする。



「ダメダメ!」

スングァンは慌ててDiaryを閉じる。



「見せない!」



「じゃあ誰から?」



「それも分かんないって!」



「気になる!」



また笑いが起こる。



しかし、今回は昨日とは少し違う笑いだった。



みんな、

誰かから言葉を受け取っている。



名前はない。



送り主も分からない。



それでも、

確かに自分だけへ向けられた言葉だった。



朝食を食べ始めても、

何人かは時々Diaryを見返していた。



「返事って今日書くの?」

ソヨンが尋ねる。



ジョンハンがカードを読み直す。



「今日の夜みたい。」



「何書こうかな。」

チェリンが嬉しそうに笑う。



「考える時間も楽しいね。」



チアキもDiaryをそっと閉じる。



誰が書いてくれたのか。

考えても分からない。



でも、一つだけ確かなことがあった。



昨日、自分が笑っていたことを、

誰かが見ていてくれた。



それが少しだけ嬉しかった。



【Interview】

チアキ

「名前が分からないからこそ……。」

少し考えて笑う。

「言葉だけが真っ直ぐ届く気がしました。」

「誰かは分からないんですけど……すごく嬉しかったです。」



ミンギュ

「推理したくなる(笑)。」

「でも、それより。」

「ちゃんと自分のことを見てくれてる人がいるんだって思ったら、不思議な気持ちになりました。」



ユナ

「昨日の私の話を聞いて、書いてくれた人なのかなって思いました。」

「直接じゃないからこそ、素直に受け取れました。」



【STAFF NOTE】

Monday|共同生活8日目

404 Diaryには、「好き」という言葉は一つも書かれていなかった。

それでも、一通一通に共通していたものがある。

相手をちゃんと見ていたからこそ書ける言葉。

恋愛より先に始まるのは、「理解したい」という気持ち。

404 HOUSEでは、その感情が少しずつ育ち始めていた。



次回

Episode8 Scene2『それぞれの朝』

404 HOUSEを出た11人。

家では見られない、それぞれの「仕事中の顔」が映し出される。




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