ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode8

『名前のない「おかえり」』

― 恋より先に、その人の生活を知る ―



Monday

共同生活 8日目

午前8:03



Scene2

『それぞれの朝』



朝食を終えた404 HOUSE。

リビングには、それぞれが仕事へ向かう準備をする音が響いている。

ネクタイを締める音。

バッグのファスナーを閉める音。

コーヒーカップを流しへ置く音。

共同生活が始まって初めて迎える、本格的な平日の朝だった。



女性部屋

チアキは鏡の前に立っていた。

アッシュブラウンの癖毛のロングヘアを、慣れた手つきで低い位置にまとめていく。

後れ毛一本まで丁寧に整え、

小さく微笑む。

制服へ袖を通すと、

自然と表情が引き締まった。

ネイビーのジャケット。

白いブラウス。

首元にはスカーフ。

そして、膝丈のタイトスカート。

客室乗務員として何度も袖を通してきた制服は、チアキにとって「仕事のスイッチ」だった。

最後にネームプレートを胸元へ付ける。

鏡に映る自分へ、小さく頷いた。



「よし。」



キャリーケースを持ち、

部屋を出る。



リビング

「おはよ……って。」

最初に気付いたのはスニョンだった。

階段を降りてくるチアキを見て、

思わず言葉が止まる。



「おぉ……。」



その声に全員が振り向く。



ミンギュもコーヒーカップを持ったまま顔を上げた。



「……。」

一瞬だけ目を見開く。



「制服姿、初めて見た。」



スングァンが思わず立ち上がる。



「わぁ!」



「本当にCAさんだ!」



「テレビで見る人みたい!」



チアキは照れくさそうに笑う。



「ありがとうございます。」



スニョンは子どものように目を輝かせる。



「めっちゃ似合う!」



「なんかオーラ違う!」



「さっきまで部屋着だった人と同じ人?」



「失礼ですよ。」

チアキが笑いながら返す。



リビングに笑いが広がる。



ミンギュは少し照れたように笑ってから言った。



「普段のチアキちゃんもいいけど。」



「仕事モードになると、雰囲気変わるね。」



「すごくかっこいい。」



チアキは少しだけ驚いた表情を浮かべる。



「ありがとうございます。」



「嬉しいです。」



スンチョルも頷く。



「責任ある仕事っていうのが伝わる。」



ジョンハンは優しく微笑んだ。



「スイッチが入った顔だね。」



「さっきまでと全然違う。」



ウォヌは静かにチアキを見る。



「……プロだ。」



短い一言。

それだけだった。



ソヨンも嬉しそうに笑う。



「チアキさん、本当に素敵です。」



ユナも頷く。



「姿勢まで綺麗。」



チェリンが感心する。



「私もああいう立ち方したい。」



チアキは少し恥ずかしそうに首を振る。



「仕事で慣れただけですよ。」



「いや。」

スングァンが笑う。



「絶対モテるでしょ。」



「空港で。」



チアキは思わず吹き出す。



「そんなことないです。」



「いや、ある!」

スニョンも笑う。



「俺がお客さんだったら毎回緊張する。」



「スニョンは毎回ジュースこぼしそう。」

ミンギュがすかさず突っ込む。



「なんで!」



また笑い声が響く。



その光景を、

スタッフカメラは静かに映していた。



出発

最初に家を出るのはチアキ。

玄関でパンプスを履き、

キャリーケースを引く。



「では、行ってきます。」



「行ってらっしゃい!」

全員の声が重なる。



「気を付けてね!」

ソヨンが手を振る。



「フライト頑張って!」

スングァン。



「また土産話聞かせて!」

スニョン。



ミンギュは少しだけ笑って言う。



「チアキちゃん。」



「空の上でも無理しすぎないで。」



チアキは少し目を丸くしてから、

優しく微笑んだ。



「はい。」



「ありがとうございます。」



玄関のドアが閉まる。



ほんの数秒。

家の中が静かになった。



スニョンがぽつりと呟く。



「なんかさ。」



「チアキちゃんがいないだけで、急に静かになった。」



「まだ一分だけどね。」

スングァンが笑う。



ミンギュは玄関を見つめたまま、小さく笑う。



「……行ってらっしゃい。」



誰にも聞こえないくらい小さな声だった。



それぞれの一日

その後、メンバーは次々と404 HOUSEを後にする。

ミンギュはノートPCを持って会社へ。

スンチョルはタブレットを片手に打ち合わせへ向かう。

ユナは美容ブランド本社へ。

ジウォンは法律事務所へ。

ソヨンは夜勤を終え、自宅のように404 HOUSEへ戻って眠りにつく。

ウォヌは自室のデスクへ向かい、静かに原稿を書き始める。

ジョンハンは午前中のカウンセリングへ。

スニョンはダンススタジオへ。

スングァンはラジオ局へ向かい、今日も明るい声でリスナーを迎える準備を始める。



【STAFF NOTE】

Monday|共同生活8日目

共同生活では、普段着で過ごす時間がほとんどだ。

だからこそ、仕事へ向かう姿は、その人の「もう一つの顔」を映し出す。

この朝、チアキの制服姿を見た男性メンバーたちは、口を揃えて「かっこいい」と口にした。

それは外見だけではない。

誰かを安全に目的地まで送り届ける責任を背負う人への、自然な尊敬の気持ちだった。


次回

Episode8 Scene3『静かな404 HOUSE』




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