ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode8

『名前のない「おかえり」』

― 恋より先に、その人の生活を知る ―



Monday

共同生活 8日目

午後0:47



Scene3

『静かな404 HOUSE』



昼の404 HOUSE。

朝まで賑やかだった家は、嘘のように静かだった。

時計の針が進む音。

窓から差し込む夏の日差し。

風に揺れるレースカーテン。

朝とはまるで違う空気が流れている。



現在、家にいるのは四人。

ウォヌ。

ソヨン。

そして午後から仕事のジョンハン。

午後休だったチェリン。



リビング

ウォヌはソファに座り、ノートパソコンで原稿を書いている。

静かなキーボードの音だけが響く。



ソヨンはマグカップを持ちながら植物に水をあげていた。



「この子、元気になってきましたね。」



ウォヌは画面から目を離さず答える。



「チアキちゃんが毎朝見てるから。」



「そういえば。」

ソヨンは思い出したように笑う。



「霧吹きまでしてましたよね。」



「葉っぱ乾燥しないようにって。」



ウォヌは静かに頷く。



「あの人。」



「誰も見てないところでやるから。」



「そうなんですよね。」

ソヨンも微笑んだ。



「優しいことを、普通みたいにする。」



その会話を、

キッチンでコーヒーを淹れていたジョンハンが聞いていた。



「だから気付かれにくいのかも。」



「え?」

ソヨンが振り返る。



ジョンハンは三人分のコーヒーを持ってくる。



「ありがとうって言われるためじゃなくて。」



「その人にとって、それが普通だから。」



「チアキちゃんって、そういう人だよね。」



ソヨンは嬉しそうに頷く。



「昨日も。」



「私の写真ばっかり撮ってくれて。」



「自分は全然写らなくて。」



「ミンギュさんが声かけてくれて、よかったなって思いました。」



ウォヌは静かにカップを手に取る。



「……うん。」



短い返事。



しかし、

その「うん」には少しだけ実感がこもっていた。



キッチン

チェリンが冷蔵庫を開ける。



「お腹空いた。」



「何かある?」



ジョンハンが笑う。



「朝のサンドイッチ少し残ってるよ。」



「やった!」



「でも足りない……。」



ソヨンも立ち上がる。



「簡単にパスタ作りましょうか?」



「いいの!?」

チェリンが目を輝かせる。



「もちろん。」



ウォヌもノートパソコンを閉じる。



「手伝う。」



「ウォヌさん料理するんですか?」

チェリンが驚く。



「少しだけ。」



「切るくらいなら。」



ジョンハンが笑う。



「じゃあ僕はソース作る。」



四人は自然にキッチンへ集まる。



誰が指示するわけでもない。



ソヨンは鍋に湯を沸かし、

ジョンハンは玉ねぎを炒め、

ウォヌは無言で野菜を切り始める。



チェリンはサラダを盛り付けながら笑う。



「最初の頃だったら。」



「こんな自然に一緒に料理してなかったよね。」



ジョンハンも頷く。



「役割を決めなくても。」



「自然に動けるようになった。」



ソヨンがふと笑う。



「でも。」



「チアキさんがいたら。」



「気付いたらお皿並べてそう。」



「間違いない。」

チェリンが笑う。



ウォヌも小さく笑った。



「……気付いたら。」



「もう並んでる。」



四人が笑う。



本人がいない場所でも、

自然と名前が出る。



それは誰かを恋しく思うというより、

もう生活の一部になっている証拠だった。



昼食

四人でテーブルを囲む。



「いただきます。」



ジョンハンがパスタを一口食べる。



「うん。」



「おいしい。」



チェリンが嬉しそうに笑う。



「またみんなでも作りたいね。」



ソヨンが頷く。



「次はチアキさんにも教えようかな。」



「料理、得意じゃないって言ってたし。」



ウォヌが静かに笑う。



「本人。」



「結構気にしてた。」



「あ、やっぱり?」



「うん。」



「昨日も。」



「“普通に美味しい”って言われて安心してた。」



四人は思い出して笑う。



家には四人しかいない。



それでも、

会話の中には自然と、

今ここにいない仲間たちの名前が出てくる。



404 HOUSEは、

「同じ家に住む人」から、

少しずつ「帰る場所を共有する人たち」へ変わり始めていた。



【Interview】

ジョンハン

「今日は人数が少なかったんですけど。」

「不思議と静かすぎる感じはしませんでした。」

「みんなが仕事を頑張ってるって分かっているから。」

「夜になれば、また『おかえり』って言える。」

「その安心感があるんです。」



ソヨン

「チアキさんがいないだけで、『あ、お皿出してくれてる人がいない』って思っちゃいました(笑)。」

「まだ一週間なのに、不思議ですよね。」



【STAFF NOTE】

Monday|共同生活8日目

一緒に暮らすということは、いつも全員が同じ場所にいることではない。

誰かがいない時間に、その人の存在を感じること。

昼の404 HOUSEでは、何度もチアキの名前が自然と会話に出てきた。

それは特別扱いではない。

「もう、この家の当たり前になっている」という、小さな変化だった。



次回

Episode8 Scene4『働く姿』

404 HOUSEを離れた11人。

仕事中だけ見せる真剣な表情と、それぞれが抱える責任が映し出される。




ノベルに戻る I Addict