ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode1

『404 HOUSEへようこそ』

⸻

Scene4

『最初の共同夕食』

⸻

午後6時30分。

ROOM 404のキッチン。

11人が初めて一緒に食事を作る時間になった。

⸻

「初日の夕食は、みんなで作ります」

スタッフから伝えられたルール。

注文することもできた。

誰か一人が作る必要もなかった。

でも、

「せっかくだから一緒に作りたい」

という声が自然に上がった。

⸻

冷蔵庫を開ける。

野菜。

肉。

魚。

韓国料理の材料。

そして日本人参加者がいることを考えて用意された食材もあった。

⸻

「何作りますか?」

ソヨンが聞く。

⸻

「韓国料理がいいんじゃない?」

スニョンが言う。

「でもチアキさん、辛いもの大丈夫ですか?」

⸻

突然話を振られ、

チアキは少し驚く。

「あ、大丈夫です」

「辛いもの好きです」

⸻

「本当ですか?」

スングァンが反応する。

「日本人の方って辛いもの苦手なイメージがありました」

⸻

「人によりますね」

チアキは笑う。

「私、韓国料理好きなので」

⸻

その瞬間。

少しだけ空気が柔らかくなった。

⸻

最初は、

「日本から来た人」

だった。

でも、

好きな食べ物の話。

休日の過ごし方。

小さな会話。

そういうものが少しずつ距離を縮めていく。

⸻

料理担当が自然に分かれていく。

⸻

スニョンとスングァンは野菜を切る係。

しかし。

⸻

「スングァンさん、それ大きすぎません?」

ソヨンが笑う。

⸻

「え?」

見ると、切った野菜の大きさがバラバラだった。

⸻

「料理、得意じゃないんですか?」

チェリンが聞く。

⸻

「得意です!」

即答。

⸻

「……たぶん」

⸻

全員が笑う。

⸻

その横で、

チアキは静かに包丁を動かしていた。

⸻

速すぎない。

でも迷いがない。

野菜を切る手つきが綺麗だった。

⸻

ミンギュが気付く。

「料理、よくしますか?」

⸻

「します」

「仕事の日は難しいですけど、休みの日は作ります」

⸻

「CAさんって忙しそうなのに」

⸻

「だからこそ、自分のために作る時間が好きです」

⸻

その答えに、

ジョンハンが少し顔を上げた。

⸻

「自分のために?」

⸻

「はい」

チアキは笑う。

「誰かのために作るのも好きですけど」

⸻

「自分を大切にする時間も必要かなって」

⸻

一瞬。

静かになる。

⸻

何気ない言葉。

でも、

ジョンハンはその言葉を覚えていた。

⸻

【Interview】

ジョンハン。

「自分を大切にする時間」

⸻

「その言葉を自然に言える人って、意外と少ないです」

⸻

「でも彼女は……」

⸻

少し考える。

⸻

「そう言いながら、自分より周りを優先しているようにも見えました」

⸻

⸻

料理をしている途中。

チアキはふと、ソヨンを見る。

⸻

「ソヨンさん、大丈夫ですか?」

⸻

「え?」

⸻

「手」

⸻

見ると、ソヨンの指に少し赤みがあった。

⸻

「さっき熱い鍋触りましたよね?」

⸻

「あ……」

⸻

ソヨンは驚く。

自分でも気付いていなかった。

⸻

「冷やした方がいいです」

⸻

チアキはすぐ冷たい水を出す。

⸻

「ありがとうございます」

⸻

「私、仕事でこういう小さい変化を見ることが多くて」

⸻

「癖みたいなものです」

⸻

その場にいた数人が、その会話を見る。

⸻

ウォヌは何も言わなかった。

ただ、

その一連の流れを見ていた。

⸻

気付く。

↓

声をかける。

↓

相手が恥ずかしくならないように自然に助ける。

⸻

彼女の優しさは、

大きなアピールではなかった。

⸻

【Interview】

ウォヌ。

「優しい人というのはたくさんいます」

⸻

「でも」

⸻

「優しさを見せようとしていない人は少ないと思います」

⸻

⸻

午後8時。

料理が完成した。

⸻

テーブルには、

韓国料理を中心にした夕食。

11人分の皿。

⸻

「乾杯しましょう」

スンチョルが言う。

⸻

「この3ヶ月、よろしくお願いします」

⸻

「よろしくお願いします」

⸻

グラスが触れる。

⸻

まだ名前を覚える段階。

まだ距離を測る段階。

⸻

でも、

初めての食卓は思ったより温かかった。

⸻

「チアキさん」

ミンギュが話しかける。

⸻

「韓国で行ってみたい場所ありますか?」

⸻

「あります」

⸻

「どこですか?」

⸻

「海が見える場所」

⸻

意外そうな顔。

⸻

「ソウルじゃないんですね」

⸻

「はい」

笑う。

⸻

「静かな場所が好きなので」

⸻

その答えに、

ウォヌが少し反応した。

⸻

「静かな場所」

⸻

「好きですか?」

⸻

チアキを見る。

⸻

「はい」

⸻

「人が少ないところで、ゆっくり歩くのが好きです」

⸻

ウォヌは小さく頷いた。

⸻

「分かります」

⸻

それだけ。

⸻

でも、

初めてチアキとウォヌの間に生まれた、

短い共通点だった。

⸻

⸻

食事の終盤。

スングァンが突然言う。

⸻

「そういえば」

⸻

「この家、恋愛禁止なんですよね」

⸻

全員が思い出す。

⸻

そう。

この番組の一番不思議なルール。

⸻

「恋愛禁止」

⸻

「逆に難しいですね」

チェリンが笑う。

⸻

「3ヶ月も一緒にいたら、仲良くなるのは普通じゃないですか?」

⸻

ジウォンが答える。

⸻

「だからこそ、自分の気持ちを見るんじゃないですか」

⸻

「好きになる前に、人として知る時間」

⸻

その言葉に、

全員が少し静かになる。

⸻

チアキはテーブルを見る。

⸻

11人。

今日初めて会った人たち。

⸻

でも、

少しだけ。

ここにいてもいい気がした。

⸻

【STAFF NOTE】

初日の夕食。

スタッフが予想していたより、会話は自然だった。

特に印象的だったのは、

チアキが目立とうとしていなかったこと。

料理の中心になるわけでもない。

会話の中心になるわけでもない。

しかし、

気付けば彼女の周りには人が集まっていた。

⸻

ただし。

この時点では、

それは恋ではない。

⸻

「一緒に暮らしやすそうな人」

⸻

まだ、その程度だった。

⸻

夜10時。

11人はそれぞれの部屋へ向かう。

初めての夜。

誰も知らない。

放送では映らなかった、小さな出来事が起きていたことを。

⸻

Episode1 Scene5

『放送されなかった夜』


→

ノベルに戻る I Addict