ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode13

『すれ違うタイミング』

― 一緒にいる時間が増えるほど、小さなすれ違いも生まれる。 ―

Day:Saturday(共同生活13日目)



Scene5

『ベランダ』

Saturday|09:00 PM



夕食の片付けも終わり、

リビングでは映画を観るチームと、カードゲームを始めるチームに自然と分かれていた。



「チアキちゃん、映画こっちで観る?」



チェリンがソファから手を振る。



「あ、少しだけ外の空気を吸ってきます。」



「はーい。」



チアキは笑顔で答え、静かにベランダへ出た。



夜風が頬をなでる。



昼間の暑さが嘘のように、

心地よい風が吹いていた。



遠くには街の灯り。



車の音が小さく聞こえる。



チアキは手すりに軽く寄りかかり、大きく息を吸った。



「気持ちいい……。」



ぽつりと漏れたひとり言。



その時、

ガラス戸が静かに開く音がした。



「ここにいたんだ。」



振り返ると、

ミンギュが缶のお茶を二本持って立っていた。



「あ……。」



「お邪魔でした?」



チアキが首を横に振る。



「いえ、大丈夫です。」



「ありがとうございます。」



ミンギュは一本のお茶を差し出した。



「どうぞ。」



「ありがとうございます。」



チアキは両手で受け取る。



「冷たくて気持ちいいですね。」



「さっき冷蔵庫で見つけた。」



二人は並んで手すりにもたれた。



しばらく、

言葉はなかった。



それでも気まずさはない。



リビングから聞こえてくる笑い声。



夜風。



缶を開ける小さな音。



その静かな時間が、

どこか心地よかった。



しばらくして、

ミンギュが空を見上げながら口を開く。



「共同生活も、もう二週間くらいですね。」



「そうですね。」



「最初はすごく長く感じてたんですけど……。」



チアキも空を見上げる。



「最近は一日があっという間です。」



「分かる。」



ミンギュは笑った。



「最初はみんな緊張してたのに。」



「今は普通に『おかえり』って言える。」



チアキも優しく微笑む。



「家みたいになってきました。」



「うん。」



「だからかな。」



ミンギュは少し考えるように言葉を探した。



「誰かがいないと、ちょっと静かに感じる時がある。」



チアキはその言葉に静かに頷いた。



「あります。」



「仕事で一人だけ帰りが遅い日とか。」



「今日はまだ帰ってないんだなって思います。」



「ですよね。」



また沈黙が訪れる。



その沈黙も、

不思議と苦にならない。



チアキが缶を両手で包みながら、小さく笑った。



「私、こういう時間好きです。」



「こういう時間?」



「はい。」



「ずっと話してなくても落ち着く時間。」



「……。」



ミンギュは少し驚いたような表情を浮かべた。



それは、

自分も同じことを感じていたから。



「僕も。」



短い返事。



でも、

その一言だけで十分だった。



風が少し強く吹く。



チアキの髪がふわりと揺れた。



ミンギュは何気なくその様子を見て、

すぐに視線を夜景へ戻す。



自分でも理由は分からない。



ただ、

見てはいけない気がした。



「そろそろ戻りますか。」



チアキが笑顔で言う。



「映画、始まっちゃってますね。」



「怒られるかも。」



「スニョンさんに。」



「確かに。」



二人は同時に笑った。



ガラス戸を開け、

並んでリビングへ戻る。



「遅い!」



案の定、

スニョンが大きな声を上げた。



「二人ともいい風でも浴びてた?」



「はい。」



チアキが素直に答える。



「気持ちよかったです。」



「俺も行けばよかった!」



スングァンが残念そうに笑う。



「じゃあ今度みんなで行きましょう。」



チアキのその一言に、

「いいね。」

「それ楽しそう。」

と、あちこちから声が上がる。



ミンギュはその輪の中で笑いながら、

さっきベランダで交わした会話を思い返していた。



『ずっと話してなくても落ち着く時間。』



その言葉が、

なぜか心に残って離れなかった。



【STAFF NOTE】

この夜、

ベランダにいた時間は約12分。



会話をしていた時間よりも、

黙って景色を眺めていた時間の方が長かった。



それでも、

二人は何度も自然に笑い合っていた。



「沈黙が苦にならない相手」。



それは時に、

どんな長い会話よりも、

二人の距離を教えてくれる。



まだ恋とは呼べない。



けれど、

心地よい沈黙は、

確かに特別な時間へと変わり始めていた。



次回 Scene6

Saturday|Interview

テーマ

「共同生活で変わったこと」

共同生活13日目。

それぞれが少しずつ、自分自身の変化にも気づき始める。




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