ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode14

『届かない名前』

― 伝えたい想いはある。でも、その名前だけはまだ書けない。 ―

Day:Sunday(共同生活14日目)



Scene5

『夕暮れの漢江』

Sunday|05:00 PM



自由時間を終えた11人は、再び漢江沿いの遊歩道を歩いていた。



空は少しずつオレンジ色に染まり始めている。

昼間とは違う穏やかな風が吹き、川面には夕日がきらきらと反射していた。



「もう夕方なんですね。」



チアキが空を見上げる。



「一日って早い。」



ジョンハンが微笑んだ。



「楽しい日は特にね。」



「本当に。」



チアキも小さく頷く。



11人は横一列ではなく、

話しながら自然に並び替わって歩いていく。



前ではスニョンとスングァンが今日のゲームを振り返って盛り上がり、

その少し後ろではスンチョルとジウォンが静かに話している。



ユナはチェリンと撮った写真を見せ合い、

ウォヌは時々立ち止まって夕景をカメラに収めていた。



その中で、

チアキは景色を眺めながらゆっくり歩いていた。



ふと気づくと、

隣にはミンギュがいた。



「少し疲れましたか?」



ミンギュが笑いながら尋ねる。



「少しだけです。」



チアキも笑う。



「でも、すごく楽しかったです。」



「よかった。」



二人はゆっくりと歩き続ける。



遊歩道にはランニングをする人や、

犬の散歩をする人たち。



その穏やかな景色を見ながら、

チアキがぽつりと呟く。



「こういう休日、久しぶりでした。」



「仕事柄ですか?」



「はい。」



「休みの日でも、体を休めることが多くて。」



「みんなで一日遊ぶことって、あまりなかったんです。」



ミンギュは静かに頷いた。



「じゃあ今日は、いい休日になりましたね。」



「はい。」



その笑顔は、

朝よりもずっと柔らかかった。



少し前を歩いていたスングァンが振り返る。



「チアキ!」



「はい?」



「ほら、夕日!」



スングァンが指差した先には、

漢江へ沈み始める大きな夕日。



「きれい……。」



チアキは思わず足を止める。



その瞬間。



「そのまま!」



チェリンがスマートフォンを構えた。



「動かないで!」



カシャ。



夕日を見つめるチアキの横顔が、

一枚の写真に収められる。



「すごくいい写真。」



チェリンが満足そうに笑う。



「あとで送りますね。」



「ありがとうございます。」



チアキは照れくさそうに頭を下げた。



再び歩き始める一行。



人混みが少し増え、

歩道が狭くなる。



ミンギュは無意識に少し前へ出た。



自転車が後ろから近づいてきていることに気づいたからだった。



「チアキ。」



自然に名前を呼ぶ。



「こっち。」



チアキは何も気にせず一歩内側へ寄る。



そのすぐ横を、

自転車が通り過ぎていった。



「ありがとうございます。」



「びっくりしました。」



「大丈夫?」



「はい。」



ほんの数秒の出来事。



二人とも、

特別なことをしたとは思っていない。



少し離れた場所で、

スタッフカメラだけがその様子を映していた。



しばらく歩くと、

ウォヌがまた立ち止まる。



「集合写真、撮りませんか。」



「賛成!」



みんなが橋を背景に並ぶ。



「最後の一枚ですよ!」



スタッフの声。



「3、2、1!」



「ROOM 404!」



笑顔が夕焼けに溶け込んだ。



撮影が終わると、

誰からともなく拍手が起こる。



「また来たいね。」



ソヨンが呟く。



「今度は春もいいかも。」



ジョンハンが答える。



「その頃には、もっと仲良くなってそう。」



スニョンの言葉に、

みんなが自然と笑った。



夕日に照らされた11人の影は、

朝よりも少し近く並んでいた。



【STAFF NOTE】

夕暮れの遊歩道。



スタッフが何度も映像を見返したのは、

ある”歩幅”だった。



ミンギュは、

チアキの隣を歩いている間、

何度も無意識に歩く速さを合わせていた。



チアキ自身は、

そのことに気づいていない。



本人も、

意識していたわけではないだろう。



それでも人は、

大切にしたい相手の歩幅には、

自然と自分を合わせてしまう。



まだ誰も、

その気持ちに名前を付けてはいない。



けれど、

距離は言葉ではなく、

歩幅にも表れる。



カメラだけが知っている、

小さな変化だった。



次回 Scene6

Sunday|07:30 PM

『変わった呼び方』

404 HOUSEへ帰宅。

何気ない一言から始まった会話が、

11人の距離をまた一歩近づけていく。

「チアキちゃん」から、「チアキ」へ。

その小さな変化は、

誰にとっても特別な一日として刻まれていく。




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