RE:MEMORY
Episode4
「それぞれの居場所」
Day4 : Thursday
Evening
Scene6
「スングァンの気遣い」
――――――――――
【BGM】
夜のRE:MEMORY HOUSE。
リビングには、まだささやかな笑いの余韻が漂っている。
――――――――――
【ナレーション】
「同じ家で暮らすということ。」
「それは、楽しい時間を分け合うだけじゃない。」
「ふとした沈黙や、小さな変化に気づけることでもある。」
――――――――――
【字幕】
「最初の安心できる相手」
――――――――――
リビング
――――――――――
ゲームが終わり、メンバーたちは思い思いの時間を過ごしている。
スニョンとディノはダンス動画に見入り、
テヨンとユナは明日の予定を確認し、
ジョシュアはキッチンでコーヒーを淹れていた。
――――――――――
チアキはソファの端に座り、
膝の上で指先を軽く重ねながら、静かにその様子を見つめている。
輪の中にいるはずなのに、どこか一歩引いた場所にいるような、その微妙な距離感が表情にも滲んでいた。
――――――――――
そんなチアキの隣に、スングァンがそっと腰を下ろす。
気配に気づいたチアキが視線を向けると、スングァンは急かすことなく、少しだけ間を置いてから自然な調子で口を開いた。
――――――――――
スングァン:
「疲れてませんか?」
――――――――――
チアキ:
「え?」
――――――――――
予想していなかった問いかけに、チアキのまばたきが一度だけ増える。
それから、ほんの少しだけ肩の力を抜いた。
――――――――――
スングァン:
「今日、少し静かだった気がして。」
――――――――――
チアキ:
「あ……。」
――――――――――
チアキは、少しだけ笑う。
その笑みは、気づかれたことへの戸惑いと、見抜かれたことへの小さな安堵が混ざった、曖昧でやわらかなものだった。
――――――――――
チアキ:
「大丈夫です。」
――――――――――
スングァン:
「また言いました。」
――――――――――
チアキ:
「え?」
――――――――――
スングァン:
「『大丈夫です』。」
――――――――――
ふっと笑って、続ける。
その声色にはからかいよりも、むしろ親しみがあった。チアキが無意識に身につけている言葉の癖を、責めるのではなく、そっと拾い上げるように。
――――――――――
スングァン:
「チアキさん、たぶん一日に何回も言ってます。」
――――――――――
チアキ:
「そんなにですか?」
――――――――――
スングァン:
「はい。」
(笑)
――――――――――
【字幕】
「小さな癖を見つけた人」
――――――――――
会話
――――――――――
スングァン:
「韓国語、大変ですか?」
――――――――――
チアキ:
「……少しだけ。」
――――――――――
少し考えてから、言葉を選ぶ。
すぐに答えられないのは、言葉が足りないからではなく、正直に言ってしまっていいのかを一瞬だけ迷ったからだった。
――――――――――
チアキ:
「日常会話なら大丈夫なんです。」
「でも、みんなで話すと速くて。」
――――――――――
スングァンは、うなずきながらチアキの横顔を見る。
その視線はまっすぐなのに、圧を感じさせない。相手が話し終えるのを待つ姿勢が、自然と安心感を生んでいた。
――――――――――
スングァン:
「分かります。」
――――――――――
チアキ:
「え?」
――――――――――
スングァン:
「僕も外国語だったら、絶対難しいと思います。」
――――――――――
「知らない言葉の中で、ずっと笑っているのって疲れると思うので。」
――――――――――
チアキは、少し驚いたようにスングァンを見る。
自分の中にあった曖昧な疲れを、言葉にしてもらえたような気がして、胸の奥がわずかにほどける。誰かにそこまで想像してもらえたことが、思った以上に嬉しかった。
――――――――――
スングァン:
「でも、無理に合わせなくてもいいですよ。」
――――――――――
「分からなかったら聞いてください。」
――――――――――
「僕、説明するの好きなので。」
――――――――――
チアキ:
「説明するのが好き?」
――――――――――
スングァン:
「はい。」
胸を張る。
その仕草は少し得意げで、けれど押しつけがましさはない。むしろ、自分にできることを素直に差し出しているようだった。
――――――――――
「僕、話す仕事なので。」
――――――――――
その言葉に、チアキが笑う。
今度の笑みは、さっきよりも少しだけ自然だった。気を張っていた表情の奥に、ようやく素の反応がのぞく。
――――――――――
その笑顔を見届けるように、カメラはゆっくりと二人から離れていく。
リビングのざわめきが少し遠のき、場面は静かに切り替わる。
――――――――――
【字幕】
「初めて、自然に笑えた瞬間」
――――――――――
スングァン Interview
――――――――――
スタッフ:
「チアキさんに声をかけた理由は?」
――――――――――
スングァン:
「なんとなくです。」
――――――――――
「でも……。」
――――――――――
少し考えてから、言葉を続ける。
視線をわずかに落とし、記憶の中のチアキをたどるように、慎重に言葉を選んでいた。
――――――――――
「チアキさんって、周りの人のことをすごく見ているんです。」
――――――――――
「誰かが困っていたら、先に動く。」
――――――――――
「だから逆に、自分が困っていても言わないんじゃないかなって思って。」
――――――――――
その言葉のあと、短い沈黙が落ちる。
リビングで見せたやわらかな気遣いが、インタビューの中で改めて輪郭を持ちはじめる。
――――――――――
【字幕】
「似ているから気づくこと」
――――――――――
リビング
――――――――――
スングァンが立ち上がり、キッチンへ向かう。
その背中を、チアキは何気なく目で追う。ほんの数秒のことなのに、置いていかれるような寂しさはなく、むしろ「戻ってくる」と分かっている安心があった。
しばらくして戻ってきた彼の手には、温かいココアのマグカップがあった。
――――――――――
スングァン:
「これ、飲みます?」
――――――――――
チアキ:
「え、いいんですか?」
――――――――――
スングァン:
「はい。さっきから少し寒そうだったので。」
――――――――――
チアキ:
「……ありがとうございます。」
――――――――――
受け取る指先に、カップの温度がじんわりと伝わる。
そのぬくもりは手のひらだけでなく、気づかれていたことへの驚きまで静かに溶かしていくようだった。
――――――――――
スングァン:
「夜は冷えるから、こういうの大事です。」
――――――――――
チアキ:
「スングァンさん、ほんとによく見てますね。」
――――――――――
スングァン:
「見てるというか、気になっちゃうんです。」
――――――――――
チアキ:
「気になる?」
――――――――――
スングァン:
「誰かが我慢してると、そっちのほうが気になるタイプなんです。」
――――――――――
チアキは、思わず笑みをこぼす。
その笑いには、少しだけ照れも混じっていた。自分が我慢していることを見抜かれた気恥ずかしさと、それでも否定されなかった安堵が、静かに同居している。
――――――――――
スングァン:
「だから、遠慮しないでください。」
――――――――――
チアキ:
「……はい。」
――――――――――
短い返事だったが、その一言には、さっきまでよりも確かな柔らかさがあった。ほんの少しだけ、相手に預けてみようという気持ちが混じっている。
――――――――――
スングァン:
「じゃあ次は、お菓子も持ってきます。」
――――――――――
チアキ:
「それは助かります。」
――――――――――
二人の笑い声が、静かなリビングにやわらかく広がる。
その音は大きくはないのに、部屋の空気を少しだけ明るく変えていた。
――――――――――
【字幕】
「RE:MEMORY HOUSE」
「少しずつ増える居場所」
――――――――――
チアキ Interview
――――――――――
スタッフ:
「スングァンさんとはどんな関係になりそうですか?」
――――――――――
チアキ:
「すごく話しやすいです。」
――――――――――
「まだ出会って4日なのに、不思議と安心します。」
――――――――――
「韓国で一人で頑張っている感じが、少し減りました。」
――――――――――
言い終えたあと、チアキはほんの少しだけ目を伏せる。
安心という言葉に、自分でも気づいていなかった疲れが滲んでしまった気がして、照れくささが遅れてやってくる。それでも、その感覚を否定したくはなかった。
――――――――――
【字幕】
「友情の始まり」
――――――――――
Scene6 END
次回――
Scene7
「今日の気づき」
初めての共同生活。
少しずつ見えてきた、
10人それぞれの本当の姿。
→
ノベルに戻る I
Addict