【act.02 なまえ】

『ドラマのオファーが来てるよ。』
「え、私に?スヨンオンニじゃなくて?」
MN(マネージャー)『なまえにだよ。俺も確認した。』

代表から受け取った台本を私に渡しながらマネオッパが言う。
いつもドラマはスヨンオンニにしか来てないのに何で私?

「どんな役ですか?」
MN『日本人のスパイ役で、韓国人の外交官と恋に落ちる話だな。』

なるほど…。日本人役だから私にオファーが来たのか。

『カムバックが終わってすぐの撮影だから忙しいとは思うけど、新しい一歩を踏み出すチャンスじゃないか?』
MN『俺もそう思う。大変だと思うけど、いい機会だと思うぞ。』

そうだよね…。
こんなチャンス次いつ来るか分からないし…。
自信はないけど、与えられたチャンスを逃しちゃだめだよね…。

「分かった、やります。」
『そう来ると思ってもうオッケーは出してあるんだけどな。』
「は?」
MN『いや、代表に向かっては?はないだろ。まあ、スケジュールは追って調節して連絡する。取り敢えず第一話分の台本な。』

マネオッパから台本を受け取り、代表室を後にする。

歩きながらパラパラと台本をめくれば、まあ当たり前だけど韓国語がいっぱいだし、スパイ役ってことで知らない単語もちょこちょこある。

「…オッパ、どうしよう。」
MN『何が?』
「意味の分からない単語めっちゃある!」
MN『あはは!まあそこは頑張るしかないな!相手役はBTSのテヒョンで役者としても経験者だから大丈夫だろ。』

え、ちょっと待て!相手役BTS様なの?

「は?聞いてないんだけど!え!?てか…私ファンに殺されない?大丈夫?」
MN『あー、まあ、たぶんな。』

いや、そこは大丈夫だと言ってよ!
デビュー当時、私たちにはアンチが多かった。理由は勿論セブチ。
メンバーの中でも私はダントツでアンチが多かった。

やっと最近アンチも減ってきたのに、また増えるじゃん。
代表は何を考えてるの?意味わかんない。
しかもテヒョンってジョンハニオッパ達と友達だった気が…。

練習室に戻ると、廊下にまで聞こえてくる話し声。
やつらがツアーから戻ってきたようだ。

「オッパ、この事黙っといて。」
MN『何で?』
「あいつらにバレたら煩いから隠し通す!」

そう言って台本を背中に隠して練習室に入ったのに、ジスオッパとジョンハニオッパに詰められてあっさりバレた。

あの2人に詰められたら流石に逃げ場はない。
正直に白状したら、案の定うるさい。

MG「え!?ってことはキスシーンとかもあるの!?」
「さあ?まだちゃんと台本見てないって言ったじゃん。」
HS「やだ!え、なにオッケーしたの?」
「うん。代表が。」
JH「何恋愛ドラマオッケーしてんの?は?バカなの?」
「…は?」

え?いや、もうウザい、鬱陶しい。
静かにするって話は何処へ?くっそうざい!

IM『オンニ…相手役は誰なの?オンニとキスなんてする相手役ぶっ飛ばす!』
DK「だからイリム怖いって!相手役の人に迷惑かけちゃだめだよ。」
「そうだよー、それよ…」
MH「いや、待って、相手役は俺も気になる。」

え、ミョンホや…、いや、てかみんな怖いんだけど…。
隣にいるジフニですら、腕組んでるし…。
そんな怒る事???

JH「で?誰?」

ジョンハニオッパのあまりの威圧感に深く息を吸う。

「…BTS様です。」
MG「はぁ???ググ?」
「いや…テテの方。」
JH「…ふーん…、殺す。」

…そんな物騒な。
いや、てか待て!

「ちょっと待って!」

慌てる私に皆んなどうしたの?なんて首を傾げる。

「ハニオッパがどうこうやる前に、私がファンに殺されるかもしれないんだからそっちの心配してよ!」
JS「大丈夫、なまえは僕達が守ってあげるから安心してね。」

にっこりと微笑むシュアオッパ。
…ねぇ、あんた笑顔が怖いよ。
天下のBTS様に何する気だよ…。やめてよ…。

JN「なまえ、台本読んでないんだっけ?」
「うん。まだ読んでな…ってなんでジュナが持ってんの!?」

腰に隠してたはずの台本がいつの間にかジュナの手にある。

JN「なまえー、第1話からキスシーンあるんだけどー!」

「はあ?」と私も含め全員の声が綺麗に重なった。

SC「1話からってどう言うことだよ!それは俺も流石に黙ってらんないぞ!」
「いや、私に聞かないで。」

てかクプスオッパはもはや誰目線?
ジュナの言葉に取り合うように台本を覗き込んでる。

ねぇ、私まだ読んでないんだけど…。

HS「なぁ、なまえ。お前演技とかできんの?MVも一苦労なのに。」
「うん…そうだけど…。」

歌って踊るそんなシーンなら全然問題ないけど、演技っぽいシーンは本当に苦手で、セブチのマンセの時も私たちの曲lab Uの時も何回もNGを出した。

WN「なまえ。」
「ん?」
WN「そもそもお前キスしたことあんの?」

…え。
おい、ウォヌ。お前凄いことサラッと聞いてんじゃないよ。どうすんだよ、この微妙な空気。

DN「ミンギュヒョンとホシヒョン、顔!」
VN「魂抜けてるじゃん!」

呑気に笑ってるボノニ。いや、笑い事じゃないよ。

SY『はい!皆そろそろ帰って!私たちカムバの練習中なんだから!』

スヨンオンニが手を叩いてSEVENTEENを追い出そうとしてくれる。

MG「いやぁぁぁ!なまえヌナー!!!」
IM『ミンギュうるせぇ!とっととハウス!!!』

叫ぶミンギュと項垂れるホシオッパを蹴っ飛ばして追い出そうとしてるイリム。

JH「取り敢えずテヒョン脅しとくわ。」
IM『うん、それは頼んだ!キスしたらぶっこ…」
「うん、普通にやめて。イリムも落ち着こうね。」

いや、もう先が思いやられるんだけど…。




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