【act.22 なまえ】
ドラマの撮影が始まった。
慣れない環境で緊張してたけど、意外にも撮影は順調に進んでる。
唯一手こずったのはキスする振りになったシーンの撮影。
いくらしてる振りになったとは言え、少し動けば触れてしまうくらいの距離まで近付かなければならなくて、表情が硬いと何度も注意された。
テヒョンさんはオッパ達が言ってたように4次元な人で、不思議なところも多いけど、何とかうまくやっていってる。
セブチもカムバをして、この数週間彼らに会ってない。
唯一スンチョリオッパと宿舎のエレベーターでたまたま会ったけど、お互い急いでてあんまり会話もできなかった。
まあ、カトクはほぼ毎日誰かしらとしてるんだけど。
そして、ついに今日第1話が放送される。
皆んなで見ようと、なぜかセブチの宿舎に集まることになった。
正直皆んなに見られるのは恥ずかしいから、各々勝手に見て欲しいと言って断った。
それなのに、宿舎にスニョン、ジョンハニオッパ、スングァニが迎えに来たから行かざるおえなくなった。
「本当にみんなで見るの?」
HS「当たり前だろ!なまえの晴れ舞台なんだから!」
いや、そんな子供のピアノの発表会みたい感じで言わなくても…。
まあ、いいや、隅っこで大人しくしとこ。
SG「ヌナは主役だから真ん中ね!」
「え、いや、私は隅っこで…」
JH「なまえはこっちー!」
ジョンハニオッパに手を引かれ足の間に座らされる。なんかつい最近もこんな事があったような…。
「オッパ、離して。」
JH「やだよ。久し振りなのにオッパに冷たくない?」
「通常運転です。」
久し振りと言えば久し振りなのか。
AY『いやー!緊張しすぎて吐きそう!シラフで見れない!ミンギュヤ!お酒ある?』
MG「あるよ!今持ってく!」
そう言えばいつもなら私の声が聞こえた瞬間に何もかも放り投げて「ヌナー!」って突進してくるのに、今日は来なかったな…。
やっぱりちょっと前に私がミンギュの寝床奪ったの怒ってるのかな?
「ミンギュ居たんだ。」
MG「ん?いや居るよ!何で?」
「いつもみたいに突進して来なかったから、居ないのかと思ってた。」
ミンギュが持って来たお酒をアヨンとイリムに手渡しながら言うと、ミンギュが悪戯に微笑んでる。
「何その笑み。」
MG「寂しかった?」
JH「ミンギュ調子乗りすぎ!なまえ、それ食べさせて!」
「えー、自分で食べてよ。」
JH「やー!オッパに対してそんな扱いするのか!」
後ろからめっちゃくっ付いてくるジョンハニオッパに、イリムがブーブー文句を言ってる。
なんか、デジャブ…。
そう思いながらうるさいハニオッパの口にチータラを突っ込む。
今日はこの前みたいに飲み過ぎないようにしないとな。
IM『オンニ、連絡先聞かれたりしてない?』
「ん?誰から?」
JS「テヒョンでしょ。」
IM『そう!大丈夫なの!?』
イリムがすごい前のめりで聞いてくるから、思わず仰け反る。
「まあ、聞かれたけど…。」
SG「おしえたの?」
「いや、まだ。」
VN「まだってことはその内教えるの?」
「…え?いや、教えるつもりはないよ。一応撮影終わったらって言って濁してるだけ。」
別にカトクの交換ぐらいしてもいいと思うんだけど、なんせ相手が天下のBTS様だからね。命の危険を感じるわけよ…。
SY『撮影現場にもBTSのファン凄いんでしょ?マネオンニが言ってたよ。』
SC「え、そんな所にもファンが来てんの?」
「うん…。それだけ人気ってことだよね。」
現場に入る時も、現場から帰る時も、命の危険を感じてるなんて皆んなには言えないよな…。
WN「ボディーガードしてやるか?」
…え?
まあ、ウォヌが真顔で居たらそりゃちょっとビビったりするかもしれないけど。
IM『お!それいい!ウォヌオッパにならオンニを安心して任せられる!』
HS「よし!俺も行く!」
IM『ホシオッパはいいや。』
HS「何でだよ!」
確かに、皆んなが居てくれたらそりゃ心強いけど、一応みんなもアイドルだからね。
「…イリム、そんなことしたら次はカラットちゃん達に殺されるわ。」
JH「アーミーってそんな危険なの?」
「…んー、まあ。」
ファンが多い分仕方ないんだけどね…。
今日もきっとドラマが始まった直後から炎上するんだろうな…。嫌だな…。
JH「よし!今日はパーっと飲もう!」
MH「今日“も”でしょ。」
「ミョンホの言う通り。オッパとホシは程々にしなよ。」
HS「何でだよー、俺となまえの仲だろ!飲もう飲もう!」
どんな仲だよ。
WZ「もはやただの飲み会じゃねぇーか。」
「ジフナも飲む?」
WZ「いや、今日は飲まない。お前もあまんり飲み過ぎんなよ、弱いんだから。」
「ふふ、分かってるよー。」
明日も撮影だし、一杯だけ飲んでとっとと帰ろう。
私はどのお酒にしようかなーなんて思ってると、ミンギュがグラスに入ったビールを持って来て私の前に置いた。
「ミンギュヤ、私ビール飲めないの知ってますよね?」
MG「知ってるよ、これはシャンディーガフだからヌナも飲めるよ。」
シャンディーガフとは?
まあ、ミンギュが私でも飲めるって言うなら飲めるのか。
とりあえず、ミンギュを信じてみよう。
全員で乾杯して、飲み会がスタート。
ドラマの放送時間までまだ1時間はあるから、その間に酔って潰れてくれれば…。
そんな淡い期待を抱きつつ、ミンギュが作ってくれたシャンディーガフというものを飲む。
「あ、美味しい。」
MG「でしょ?ビールとジンジャーエール混ぜたカクテルだよ。それならビールにも見えるし、ヌナも飲めるでしょ!」
本当いい奥さんになりそう。
「うん、ありがとうミンギュ。」
MG「お礼にキスしてくれてもいいよ?」
…は?な、何言ってんの!?
JH「ミンギュヤ調子に乗りすぎ!」
HS「俺がしてやろうか?」
IM『ミンギュしね!』
SC「そ、そうだぞ!何言ってんだよ!」
DK「イリム…笑」
JN「スンチョリヒョン慌て過ぎ!」
今日もなかなかカオス…。
まあさすがにキスはしないけど、お礼にハグをしたら、ミンギュは嬉しそうに微笑んだ。
後ろのハニオッパとホシが騒いでるけど、取り敢えず無視してチキンを食べよう。
近状報告をしながら飲んだり、食べたりしてる内に、ドラマの放送時間が迫って来た。
JW『あー!なまえオンニのドラマまで後10分だ!どうしよう!緊張して来た!!!』
HS「俺も!」
「いや、私が1番緊張してるから!」
私の作戦は失敗してしまい、どうやら皆んないい感じに酔ってるだけで、潰れてる人は誰も居ない。
「ジェウナとディノヤはそろそろ寝る時間じゃないのかな?」
DN「ヌナ、僕達のこといくつだと思ってるんですか?」
「ごめん笑」
少し拗ねたように言うディノに謝ってからテレビに視線を移す。
あー、もうちょっとで始まっちゃう…。
まあ、キスはしてる振りだし、MVを見ると思えばいいか。
そしてついにドラマが始まった。
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