【act.06 なまえ】

カムバも無事、いや、なんとか最後まで終えた。

今日と明日は久々のオフで暇だから、自室で台本の確認をすることにした。
明日はセブチとどんちゃん騒ぎの予定。

一応ザッと目は通して分からない単語を調べたりはしといたけど、それでもよく分からない。
1話目までの台本をもらったあと、5話目までの台本を一気にもらった。

活字な上に韓国語だからいつもより読むのに時間がかかる。

でも何だろう、映画を見て泣いたり、漫画読んで泣いたりは出来るのに、自分が演じると思ってるせいか、中々感情移入が出来ない。

それだけ俳優さんがすごいって事なんだろうけど…。
オンニは何回かドラマに出てるし、どうしたらいいか聞いてみようかな。

「オンニ、今いい?」
SY『うん、どうしたの?ゆっくり寝れた?』

暖かく自室に迎えてくれるスヨンオンニに、コクリと頷く。本当はあんまり寝れてないけど、そこはね…。

スヨンオンニの部屋は私の部屋とは違って、大人の女性の部屋って感じ。
おいでと自分の横をポンポンと叩くオンニの隣に座る。

「…オンニはさ、どうやって演技してるの?」
SY『どうやってって?感情とか?』
「うん。歌と演技って違うじゃん?歌でさえバラードになると難しいのに演技となるともっと難しいじゃん?」

オンニはうーんと唸った後、『台本読んでその役になりきってるかな。』と呟く。
役になりきれるならそりゃいいけど…。

台本を読んだところで役になりきれる自信がない。
そもそも自分と全く違う人物になりきるなんて、私にはそんなこと出来そうにも無い。

でも、そんな弱音を吐いてる場合じゃないってことも分かってる。
このドラマは何が何でも成功させなければいけない。

炎上してるし、誹謗中傷もアンチも増えてる。
私1人だけならいいものの、最近は落ち着いてたsanctuaryに対しての誹謗中傷も増えてる。

全員を納得させることは絶対に無理だと思ってるけど、誹謗中傷をしてる人の3割くらいには認められるような演技はしたいと思う。

と言うか、しないといけないと思う。

「オンニは感覚で演技してるって感じだよね、ジェウンも。MVとかそんな感じだもん。」
SY『確かにそうかも。あ!ジフニに聞いてみたら?』
「ジフニに?」
SY『うん!歌詞書いてるし、参考になるかもよ?それかジュンとか。ジュニも役者でしょ。』

ジフニとジュニか…。
確かにジュニも役者だけど…。

「ムンジュニも感覚で演技してそうだから、ジフニに聞いてみようかな?」
SY『うん、聞いておいで!』

今SEVENTEENもカムバックに向けて準備中で、ジフニも宇宙工場にいるはず。
本当は連絡してからの方がいいとは思うんだけど、きっと集中してるからスマホなんて見ないと思うし。

「行ってくる!オンニ、ありがとう!」
SY『気を付けてね!』

マネオンニが送ってくれると言うので、お言葉に甘えて事務所まで送ってもらう。

「オンニありがとう!」
MN『いいのよー!終わるまで待ってようか?』
「ううん!オンニも久々のオフなんだからゆっくり休んで!帰りは誰かに送ってもらうから問題ないよ!」
MN『そう?じゃあジフニと一緒に帰ってきてね?』
「はーい!」

マネオンニと別れ宇宙工場のロックを解除する。
もう慣れたもんだな。なんて思いながらドアを開ける。

「ジフナー!ってあれ、居ないの?」

宇宙工場にいると思ってたジフニの姿は無くて、代わりにソファーに座ってたのはウォヌだった。

「お、ちょのぬじゃん!ジフニは?」
WN「ボムジュヒョンと飯行ったよ。」
「そっか、今お昼だもんね。」

もう少し後でくれば良かったかな?
まあ、いっか。ウォヌにも聞いてみよ。

WN「ジフニに用だったの?」
「用って言うか、どうやって歌詞書いてるのか気になって。あ、飲む?」

ウォヌの隣に腰を下ろして、ジフニと飲もうっと思って買ってきたアメリカーノを渡す。

WN「ありがとう。てか、お前も歌詞書くじゃん。」

私の手からアメリカーノを受け取りながら、何言ってんだって顔でストローをさすウォヌ。

「いや、そうなんだけどさ、私は1から書いてないじゃん?でもジフニは0から書いてるでしょ?だからどんなこと考えながら書いてんのかなーって。」

ふーんと相槌を打ちながら私の持ってたトートから見えてる台本を取り出すウォヌ。

WN「あー、もしかしてドラマの為?」
「うん。私今めっちゃ炎上してるじゃん?だからさ、1人でも多くの人に認められる演技をしないとなって思って。」
WN「なるほどね。その前にお前はちゃんと食べないと、飛んで行きそう。」

いや、流石に飛んで行かないでしょ。
そう思ってウォヌを見れば、少し険しい表情でこっちを見てたから、慌てて食べますとつぶやく。

WN「そもそも食べれなくなるくらい悩んでるの?」

真っ直ぐに私を見つめるウォヌに小さく、本当に小さく頷いた。

「正直後悔してる。」
WN「…え。」
「何でオファー受けたりしたんだろう…もっと良く考えてから受ければ良かった…。」

ってこんな弱音吐かれても困るよね。

「こんなこと言ってごめ…ってなんて表情してんの?」

ポカンと口を開けて私を見てるウォヌのその口に何か突っ込んであげたい衝動を抑えながら聞く。

WN「いや、なまえが素直に弱音吐くの初めて聞いたからびっくりして…。」

私はバラード曲が苦手だ。
それはみんな知っている。

バラードは自分の感情を乗せないといけないのに、私はいつも上手く乗せれなくて、レコーディングの度にボムジュオッパやジフニに怒られる。

MVを撮る時も…。

WN「そもそも何で引き受けたんだよ。」
「いや、ドラマに出て演技が出来るようになれば、バラード曲ももっと上手く歌えるようになるし、MVももっと良いものが作れるかなって思った次第でして…。」
WN「なるほど、確かにお前バラード苦手だもんな。MVも大変だったよな。」

笑いながら私の頭を撫でるウォヌにコクリと頷き、ウォヌとは反対側に体を倒す。

WN「前も聞いたけどさ、お前恋愛したことあんの?」
「…分からん。」
WN「分からんって。」
「いや、そりゃ小学生や中学生の時に◯◯君かっこいい!みたいのはあったよ?でもそれは恋愛じゃないでしょ?」

何なら真剣に踊ってるセブチを見てる時だって、かっこいいなって思ってる。
でもそれが恋愛かって聞かれたら、違う気がする…。

WN「じゃあキスしたこともないんじゃないの?」
「…はい、アリマセン。え、待って。もしかしてクユズ皆んなキスしたことあんの!?」
WN「…は?」

いや、だってジュニは演技できるし、ジフニは恋愛の歌詞もスラスラ書くし、ちょのぬもMVとかですごい切ない表情とか醸し出せるじゃん。

「え、皆んな経験者なのに、もしかして私だけ未経験!?」
WN「いや、なんでそうなるんだよ!」

いや、待て、スニョンはどうなんだろう…。
あのスニョンだよ?ホシの時ならまあ、分かる。
でもスニョンだけは仲間だって思いたいわ…。

WN「聞いてないな。」




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