【act.12 MG】
1人自室に残された俺の頭の中は、ドギョミとディノの言葉でいっぱいだった。
“どうしようもなくなった時に側に寄ってくのって、ウジヒョンかミンギュなんだよ。”
“ヌナ、ヒョンと居る時幸せそうに笑うし、疲れた時いつもヒョンの肩で寝てるよ。”
思い返してみれば、確かになまえは疲れてると何も言わずにお気に入りのブランケットを持って来て無言で俺の肩に寄りかかって寝る。
でもそれはウジヒョンに対しても同じだ。
寄り掛かるのは俺かウジヒョンにだけかもしれないけど、でも皆んなといる時もなまえは幸せそうに笑ってると思う。
俺と居る時だけってことはない…。
あぁ、でも去年の日本公演後のなまえは、さすがの俺でも勘違いしそうになるくらいヤバかったな…。
ーーーーーー
忘れもしない、去年の出来事。
初のワールドツアーや日本のアリーナツアー、韓国でのカムバにそれぞれの個人スケジュールと、去年のsanctuaryは俺たちよりもハードスケジュールだった。
そんな中、スヨンヌナが体調を崩し活動休止、あの元気なアヨンヌナまでも怪我をして踊れなくなった。
ツアーを中止する声もあったけど、待ってるファンの為にと、スヨンヌナを抜いた4人でツアーは続行、アヨンヌナは歌だけ参加するというかたちになった。
なまえとイリムとジェウンはヌナ達の穴を埋めようと必死に頑張ってた。
その中でもなまえはメインダンサーとして、特に頑張ってた。
ツアーの合間に勿論毎日連絡は取ってたけど、日に日に元気が無くなってるのを感じてた。
インスタや公式から上がってくる写真を見ても、明らかに痩せていってるのが伝わって来た。
どうにかしてなまえ達に元気を出してもらいたくて、事務所に頼み込んで東京の代々木第一体育館でやるコンサートをこっそり見に行った。
本当は全員で行きたかったけど、さすがに日本まで皆んなで行くのは許してもらえなくて、俺、ドギョミ、スングァニ、ジョンハニヒョン、ホシヒョン、ディノの6人で行くことになった。
MG「ウジヒョンは行かなくていいの?」
じゃんけんで行く人を決めてた俺らの輪に、ウジヒョンは入って来なくて、不思議に思って聞いた。
WZ「お前が行くならいいよ。」
その意味は分からなかったけど、ウジヒョンがそう言うならってその時は深く考えなかった。
本当に誰にもバレないようお忍びで行ったおかげで、sanctuaryにバレることなく会場に入れた。
スヨンヌナが不在で、アヨンヌナも踊れないから、公演内容を急遽大幅に変更したとは聞いてた。
それなのに、びっくりするほど内容が変わっていた。
ソウルコンを見に行ったから覚えてる。
スヨンヌナの代わりにイリムとジェウンが踊り、メインダンサーのアヨンヌナの代わりをなまえが1人で勤めてた。
暗闇で一瞬見せた苦しそうな表情。
見てるこっちが辛くなる。
それでも明るくなればいつものように優しく微笑むなまえがいた。
メントになっても息が切れて話せないなまえの代わりに、アヨンヌナが話して、少し申し訳なさそうになまえの背中を摩ってる。
苦しいはずなのに、ファンに名前を呼ばれてキラキラの笑顔を向けるなまえ。
「ごめっ、はぁ…はぁ、ちょっ、待ってね!」
JW『オンニが1番ハードだからね、ちょっと休ませてあげて下さい!』
いいよ!って言って団扇で必死に風を送ろうとしてるsaintに「優しい世界だー!」って笑ってるなまえ。
酸素を吸ってるなまえをアヨンヌナが膝の上に座らせると、会場中が悲鳴に包まれる。
「オンニイケメンでしょ?」
IM『なまえオンニ!私の膝も空いてますよ!』
そう言って片膝立ちするイリムに会場がどっと笑いに包まれる。
SG「イリムヌナは相変わらずだね。」
HS「さすがお笑い担当。」
DK「本人聞いたら怒るよ。」
そんなやりとりをしてる3人。
後でイリムにちくっとこう。
その後もコンサートは順調に進む。
やっぱりステージが暗転する瞬間、なまえが苦しそうだったけど、今の俺にはどうすることも出来ない。
アンコールでトロッコに乗って俺らの前に来た。
上を見上げてるなまえは俺らに気付いてなさそうだったから、思いっきり大きな声でなまえの名前を呼んだ。
MG「なまえヌナー!」
HS「なまえー!」
JH「なまえ!」
「…え!?皆んな!」
なまえは一瞬驚いたものの、満面の笑みで手を振ってくれるから、俺らも全力で手を振って声を上げた。
IM『ちょっ、2人とも気付いた!?あそこにセブチいるんだけど!』
イリムの言葉に俺らにカメラが向けられる。
「トロッコ乗ってたら全力で名前呼ばれて気付いたよ!」
JW『私聞きなれた声でオンニの名前呼ぶ声聞こえたから見たらセブチが居た!』
AY『妹達の公演はどうだった?』
アヨンヌナの問いかけに俺らは全力で最高と叫び拍手をした。
そんな俺らをなまえは嬉しそうに見てくれた。
「セブンティーンの皆さんありがとうございましたー!」
HS「いや、俺らの扱い雑!」
暖かい雰囲気に包まれた会場、なまえ達もメインステージに戻る。
AY『いや、こんな事言っていいのかわかんないんだけど、今回私が怪我して、スヨンも体調崩しちゃって、3人には本当に迷惑かけたなって思ってる。saintのみんなにも完全体で会えなくてごめん。
特になまえ。なまえは歌も歌わないといけないのに、私のダンスパート全部やってくれて、本当に感謝してる。なまえのダンス最高だったよね?』
最高!って声が上がると、なまえの目がどんどんキラキラしていって、必死で涙を堪えてるんだなってわかった。
IM『みんな、セブチに声量負けてるから頑張って!』
AY『あはは!イリムもジェウンもありがとうね。そして、なまえ!』
名前を呼ばれたなまえの顔がドアップで映る。
「待って!だめ、泣いちゃうから、それ以上言わなで!」
AY『いや、無理!なまえ!sanctuaryでいてくれてありがとう!4人とも全員愛してるよ!sanctuaryで本当に良かった!これからもsanctuaryを応援してください!』
JW『アヨンオンニー!』
子供みたいに泣き出したジェウンをアヨンヌナが抱き締め、なまえは涙を必死に堪えながらイリムと静かに手を繋いでなまえが持ってるスヨンヌナの団扇を見つめる。
JH「泣けばいいのに。」
MG「ヌナはきっとステージでは泣かないよ。」
今泣けば止まらないことをきっとなまえは分かってるから。
だから必死に堪えてるんだよね。
でもそんな姿すら俺には綺麗で見惚れてしまった。
公演後、車で待ってるとなまえは1人で歩けないのか、マネヒョンに支えられてながら歩いて来た。
MG「…なまえヌナ!」
急いで車を降り、マネヒョンからなまえをもらい、車に乗せる。
HS「なまえ!お前、無理すんなよ!」
「へへ、ごめん。でも大丈夫だよ!来てくれてありがと!他の3人は?」
DK「向こうの車に乗ってるよ!なまえお疲れ!」
なまえはにっこりと笑うと背もたれに倒れる。
アヨンヌナも車に乗り込んだ所で、動き出した。
AY『なまえごめん、本当に。』
「大丈夫だよー!」
HS「公演後いっつもこうか?」
AY『うん、私のダンスパートもやってもらってるからね…。』
ホシヒョンとアヨンヌナの話し声が聞こえる。
無理はしないで欲しい。
でも、きっとなまえはやめない。
ホテルに着いて、俺らも同じホテルだよってジョンハニヒョンが言えばイリムがストーカーかよ!って突っ込んでる。
イリムは元気だな。
車を降りるなまえをお姫様抱っこする。
JW『わお!』
HS「は!?お前何してんだよ!」
IM『ミンギュてめー!』
MG「フラフラなのに歩かせられないでしょ?」
そう言えば2人ともおとなしくなった。
当のなまえは珍しく黙って俺にお姫様抱っこされてる。
MG「…なまえ。」
「…ごめん、ミンギュ、ちょっとだけ充電させて。」
MG「うん。勿論。」
ギュッと俺にしがみつくなまえを、ディノもスングァニも目ん玉落としそうになるくらいびっくりして見てたっけ。
その日、なまえはずっと俺にべったりだった。
いつもならすごい剣幕で引き剥がすジョンハニヒョンも、無理矢理割り込んでくるホシヒョンも、怒鳴り込んでくるイリムも、この日だけは皆んな優しくなまえと俺を見守ってくれた。
まあ、俺はその後怒られたけど。
あの時は何にも考えてなかった。
俺に甘えてくれるんだって、ちょっとした優越感しかなかったけど、あれは俺にだから甘えてくれたのかな…。
うーん…、分かんないけど、俺はなまえを諦めなくてもいいのかな。
それならもっと愛情表現をいっぱいしよう。
なまえが俺だけを見てくれる日が来ることを願いながら、カトクを開いた。
→
ノベルに戻る I
Addict