【act.32 WN】

俺だけ距離がありすぎるだと注意されるから、スケジュール終わりに1人で練習するために事務所に戻って来た。

なまえ以外の女と近付きたいなんて思わなくて、どうもそれが振りにも滲み出てるらしい。

仕事とは言え、そう簡単に割り切れるもんじゃない。
俺以外は何だかんだ、みんな上手くやってる気がする。

俺らがこの振りだったことは、なまえ達も同じような振りなんだろうな…。
メンバーですら最近は少し嫌なのに、メンバー以外がなまえに触れるのは最低だ。

なまえはうまくやれてるんだろうか。
俺よりも人見知りするなまえだから、きっと苦戦してるだろうな。

そんな事を考えながらsanctuaryのスタジオの前を通ると、微かに音楽が聞こえて来た。

…まだ練習してるのか?
珍しくカーテンが閉まってて中が見えない。

なまえが練習してたりしないかな。
そう思ってそっとドアを開けると、薄暗いスタジオで先生達の映像を見ながら、一生懸命踊ってるなまえが居た。

「苦戦してんな。」

声を掛けると驚いて振り向くなまえ。
それよりもスリットが深過ぎる。

こんなのパンツ見てくださいって言ってるようなもんじゃないか。
少し話すと案の定なまえも苦戦してたから、一緒に練習しようと提案した。

スマホを立て掛け、タイマーをセットして俺の元に戻って来て向かい合うとなまえの腰に腕を回す。

WN「…もっとくっつかないと。」

そう言って勢い良く腰を引いた。
ヒールを履いてるおかげで、鼻先がぶつかりそうなほど顔が近付いた。

このままキスしたい…。
今すぐ俺だけのものにしたい…。

「…待ってウォヌ、恥ずかし…」
WN「綺麗だよ、なまえ…。」

照れて俯くなまえの顔を撫で、本音を伝えた。
チュッと鼻先にキスを落とすと驚いて俺を見上げるなまえが可愛すぎて、本当にキスしたくなったけど、音楽がスタートしたから踊ることに集中した。

さっき頭に叩き込んだ振りを思い出しながら、無我夢中で踊る。
会話もしてないし、打ち合わせもしていない。
それなのにパズルのようにピタッとハマる感じがして、踊っていて気持ち良いと思った。

最後はなまえが俺の首元に顔を埋めて終わり。

音楽も止まり、スタジオには俺となまえの呼吸だけが響く。

WN「おっと、大丈夫?」
「うん。なんか凄くて力抜けちゃった。ピタッてハマる感じが。」

崩れ落ちそうになるなまえを支える。

WN「なまえも?俺も感じた。他の子とやる時はなんか振りは間違ってないのにしっかり来なかったけど、なまえとは振り間違ったのにそれすらもハマってた。」
「長年一緒にいるからかな?阿吽の呼吸みたいな?なんか会話してないのにウォヌがここに来てって言ってるの伝わるの。気持ち良かった!」
WN「分かる。動画見てみる?」
「うん!」

録画してた動画をモニターに出して確認する。

「……なんか自分じゃ無いみたい。」
WN「なまえ顔エロいな。」
「…ウォヌもじゃん。」

息もぴったりだし、切なさや官能さや情熱的な感じも出てた。
踊る相手がなまえってだけで、俺はこんなにも男らしくなるんだな…。

この前練習の時に撮った動画とは大違いだ。

WN「映画だったら絶対キスしてるシーンだな。」
「んふふ、私も同じこと思ってた。」
WN「さすが。」

俺たちは2人とも芸能界に友達が居ないから、メンバーが居ない時は2人でいることが多い。
映画見たりゲームしたり、本読んだり。

「ウォヌと踊ると下着も見えないね。」
WN「俺が全身で阻止してるからな。」

どの角度から見てもなまえの下着が見えないように手や自分の体を動かした。

WN「もう一回踊ってみる?今度は間違えないから。」
「間違ってもウォヌとならカバー出来るから大丈夫!絶対間違ってるってバレない自信ある!」
WN「はは!じゃあ今度は俺ので録画するね。」

再びスマホをセットしてなまえの腰を引き寄せる。
曲がかかる前は照れて笑ってるのに、曲がかかれば一瞬にしてセクシーな表情に変わる。

ずっと思ってたけど、本当になまえは憑依型だと思う。
さっきよりもう少し激しく情熱的に踊る。

なまえが俺の首元に顔を埋めて終わり、曲も止まる。

「ウォヌが良いな…。」

荒い呼吸をしながら、俺の耳元で囁くなまえ。

WN「何それ、期待するけど。」
「…え、あっ、うぉ…ぬ……。」

我慢出来なくなって、なまえの首に噛み付く。
腕と肩はよく噛んでたけど、首に噛み付くのは初めてだ。

「…待っ…て、だめっ…汗かいてるし…汚いから…。」

聞いたことの無いなまえの甘い声に頭がクラクラする。もう理性が爆発しそうだ。

WN「なまえ…。」

首から口を離し顔を見つめる。
薄暗くても分かるくらい頬を染めて、目を少し潤ませてるなまえを、独占したい気持ちに襲われる。

WN「嫌だったら殴って。」
「…え?…んっ……。」

頭に手を添えなまえの唇に優しく噛み付く。
殴られる覚悟だったのに、なまえは俺の胸元の服をギュッと掴んでいる。

何でこんなに可愛いんだろう…。

角度を変え、何度も何度もキスをする。
深くなるキスに、これ以上したら本当に理性が爆発する気がしてそっと唇を離した。

なまえを見ると、耳まで真っ赤にして目を潤ませて照れてる。

WN「可愛すぎ。」
「バカ!」

プクッと頬を膨らませるバカって言うなまえのこれが照れ隠しなことぐらい、俺は知ってる。
何年なまえだけを見て来たと思ってるんだ。

「…ガールズグループの子にも…しちゃうの?」
WN「…え?キス?」

コクリと頷くなまえ。
何でそんなこと聞くんだろう、もしかして心配してる?ヤキモチ?

WN「するわけ無いじゃん。なまえ以外の女に興味ないんだけど?」
「…え、あ、…ありがとう……。」

自分から聞いて来たくせに照れて困ってるなまえを見てたら、ちょっと意地悪したくなった。

WN「なまえこそどうなの?」
「え?」
WN「ジョングクとテヒョンさんにそんなエロい顔すんの?」
「…し、しないもん!」

案の定顔を真っ赤にして否定してるなまえ。

WN「本当?なまえ憑依型だから、音楽かかったら自然としてるかもよ?」
「…しないの。じゃあこれ見て!この前の練習動画。」

そう言ってBTSとの練習動画を流してくれたから、ソファーに座って見てみることにした。

“ほら、なまえ!距離ありすぎ!もっと近付いて、男誘惑しないと!悪い女役なんだから!”

俺との時とは全く違う姿のなまえが映し出されてて、ちょっと嬉しくなる。

WN「なまえ悪い女役なの?」
「そうみたい。男を誘惑しちゃう悪い女なんだって。私には無理じゃない?」

普段のなまえはさほど色気を振りがしてるタイプじゃ無い。でも、男は誘惑してるけどな…。

「ね?全然エロい顔なんてしてないでしょ?」
WN「そうだな。俺のも見る?」
「見る!」

俺も注意されてばっかりの練習動画を再生する。

“ウォヌ!興味ないって顔すんな!もっと女の子引き寄せろ。”

WN「自分で言うのもあれだけど、なまえと踊ったのと全然違うな。」
「ふふ。ウォヌもダークサイド寄りだからね。」
WN「どう言う意味だよ。」
「別にー!」
WN「おい!」

さっきまで照れて女の顔してたなまえは、今はすっかりいつもの可愛いなまえに戻ってた。




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