【10 鉄仮面 ーなまえー】
WN「ハックシュン!」
VN「ヒョン、風邪?」
WN「いや、鼻がムズムズしただけ。」
振動を感じて目を覚ました。
薄暗いリビングに、小さい音で付いているテレビの明かりが目に入る。
テーブルの横の椅子にバーノンさんが座っている。
…あれ?私…
MH「ヌナ?もう起きたの?」
お風呂から上がったばかりなのか、バスタオルで髪の毛を拭きながらリビングに入ってきたミョンホさんと目が合った。
…もう起きた?
あ!そうだ!私寝てしまったんだ!
勢い良く起き上がる私と同じくらい驚いた顔で私を見てるうぉぬさん。
WN「わ、おはよ、なまえ。まだ寝てていいのに。」
「……すみませんでした。私寝てしまって、しかもウォヌさんのお膝をお借りして…。」
ソファーの上で土下座して謝る私に、呑気に笑ってるミョンホさん、バーノンさん、そしてウォヌさん。
WN「俺は全然いいよ。寧ろ、こんな気抜いてるなまえ見るの初めてで嬉しいし。」
「…え?」
気の抜いてる私?
VN「ヌナいっつも気張ってるから、ヌナが寝ちゃう姿初めて見て感動した。」
そりゃみんなの前で寝たことはないけど…。
「感動ってほどじゃ…。」
MH「感動だよ。ウジヒョンなんて珍しいって写メ撮ってたよ!」
…え、写メ?寝顔を!?
「うううううじさんは!?」
MH「宇宙工場行ったよ。」
明日会ったら丁重に写メの削除を要求しなければ。
WN「まだ寝てていいよ?」
「いえ、もう大丈夫です!本当にすみませんでした。」
最悪だ。マネージャー如きが、アイドルの前で寝るなんて、しかも膝枕まで…。
WN「俺らの前では気張らなくていいのに。」
「いえ、そう言う訳には…」
WN「でも今日俺ら4人の前でのなまえは、ずっとホワホワしてたよ?」
…え?ホワホワとは?
アホ毛でも立ってたんだろうか。
MH「言われてみればそうかも。何かいつもより雰囲気とか笑顔が柔らかかった。」
雰囲気と笑顔が柔らかかった…?
「…そうですか?」
VN「うん。言われてみればそうかも。今日のヌナはなんか普通の女の子って感じ。」
…待て待て。
じゃあ普段は普通の女の子ではないの?なんて突っ込みを入れたい衝動を抑える。
「普段の私って…どんな感じです?」
WN「鉄仮面。」
「…え?てっ、鉄仮面?」
驚いてウォヌさんを見れば真顔でコクリと頷くし、ミョンホさんも納得してる。
バーノンさんに至っては「ヌナにぴったりのあだ名だね。」なんて笑ってる。
私はそんなに無表情だったんだろうか。
確かにミンギュとあんな関係になってしまった後に正式に決まったプロミからセブンティーンへのマネージャー移動。
そのせいなのか、セブンティーンといる時は気を張っていた。
でも無表情だったつもりは勿論なかった。
VN「最初ヌナは感情ないのかと思ってた。」
「…え?」
MH「冷たい人なのかなって思ってた。」
「…え?」
WN「俺、嫌われてると思ってた。」
「…え?」
今日は驚くことばかりだ。
まさかそんな風に思われていたとは…。
「…すみません。」
ソファーの上でもう一度正座したまま頭を下げる。
WN「でも朝飯作ってくれたり、俺らの好きな物把握してペダルしてくれたり、買って来てくれたりするの見て嫌われてる訳じゃないんだなってわかったよ。」
MH「うん。ただ真面目なだけなんだってね。」
VN「だから今はそんな事思ってないよ。」
3人の言葉にジーンと感動してると、ウォヌさんに「鉄仮面は変わらないけど」と付け足された。
確かに元々そんなに感情を表に出す方ではない。
ミンギュとのことがあるって理由もあったけど、やっぱり男性アイドルのマネージャーだから同性よりも一定の線引きは必要だと思ってた。
それは今でもそうだけど、たまにはこうやってのんびりするのも悪くないかもな、なんて少し思った。
WN「まあ毎日とは言わないけど、俺らの前でだけぐらいでも、少しは気休めてよ。」
ウォヌさんの大きな手が私の頭をポンポンと撫でる。
やっぱりミンギュとは違う暖かな手だと思った。
「前向きに検討しておきます。」
そう言えばウォヌさんも、ミョンホさんもバーノンさんも柔らかく微笑んだ。
「お片付けありがとうございました。私はそろそろ帰りますね。」
VN「まだ居ていいのに。」
たまに出るマンネなバーノンさんに、ちょっと可愛いなと思いつつ、ゆっくりと立ち上がる。
「明日は9時に迎えに来ます。ちゃんと起きててくださいね、特にウォヌさん。」
WN「俺はなまえに起こされないと起きれないの。」
そう言いながらグッと伸びをするウォヌさん。
MH「ヒョン本当僕たちが起こしても全く起きないよ、ヌナの声にしか反応しない。ウジヒョンも。」
私の声にしか反応しない?
それは困るな、私が辞めたらどうするの?
「あ、じゃあ声録音しますか?」
VN「あ、いいね!ヌナの声目覚まし!」
WN「なまえじゃないと無理。音だけじゃ起きないよ、俺。」
何なんだその謎の自信は。
まあ、いい。少しずつちゃんと起きてもらえるようになってもらおう。
取り敢えず今は帰らないと、そろそろミンギュも帰ってきちゃう。
「じゃあ帰りますね。お疲れ様でした。」
ペコリと頭を下げ玄関に向かうと、3人がぴょこぴょこと私の後ろをついてきた。
「お見送りなんていいですよ、みなさん疲れてるんですからゆっくりしてください。」
MH「これくらいどうってことないよ。今日はありがとうね、ヌナ。」
VN「ご飯また作ってね、めっちゃ美味しかった!」
優しい笑顔のミョンホさんとバーノンさんに、私もつられるように微笑み返した。
ふと見れば、ウォヌさんはサンダルを履いて玄関のドアに手を掛けている。
「うぉぬさん?」
WN「下まで送るよ。」
「え?大丈夫ですよ?」
WN「いいから。行くよ。」
ウォヌさんに腕を掴まれたまま、慌ててミョンホさんとバーノンさんに軽く頭を下げ玄関の外に出る。
「私子供じゃないですよ?」
WN「子供みたいじゃん、それに心配だからいいの。」
子供みたい?私が?心配?
「ウォヌさんって過保護ですね。」
エレベーターを待ってるウォヌさんの横顔を見上げる。
WN「なまえにだけね。本来俺はお世話される側のタイプだし。」
確かに、ウォヌさんはメンバーの中でもお世話しないといけないタイプではある。
「無理しないでくださいね。」
WN「してないよ。ただ俺が勝手にしたいと思ってるだけ。迷惑?」
エレベーターに乗り込みながらウォヌさんが私の顔を覗き込むように聞いて来る。
「迷惑だなんて…。」
気にかけてもらえるのは嬉しい。
ミンギュなんて、気にしてくれないだろうし…。
エレベーターが地下駐車場に着いた。
「ここで大丈夫ですよ!ありがとうございました。」
WN「うん。気を付けてね。」
「ふふっ!はい。」
ウォヌさんに頭を下げて車に乗り込む。
なんか今日は感情の起伏が激しい1日だったな…。
そんな事を考えながら家路に着く。
家のドアを開けると、ふわっとミンギュの匂いがして目眩がした。
もう、辞めよう…。
相当疲れていたのか、シャワーを浴びた後すぐに眠ってしまった。
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