【11ドレスアップ ーなまえー】
ああ、頭が痛い。
ピピっと鳴った体温計を恐る恐る見れば、小窓には38度と表示されている。
昨日の夜中か悪寒で目を覚ましたから、嫌な予感はしてた。だから薬を飲んで寝たのに…。
今日は午後から打ち合わせで、そのあとは会社で忘年会。
午前中に病院に行って点滴を打ってもらった。
少しだけ忘年会に顔を出して、なるべく早く帰ろう。
『そうなの!それでね!』
MG「え!?まじ!?ヌナ本当におっちょこちょいだね!可愛い!」
JS「放っておけないね!本当に。」
ヨンアさんにベッタリなミンギュに余計に熱が上がりそうになる。
仕事してた方がましだな…。
そう思いみんなの目を盗んで、抜け出そうとした時だった。
『なまえちゃん!』
「ん?あ!みんな!」
私の周りわらわらと集まって来たのはプロミの皆んな。
久し振りに会うみんなは前より少し大人っぽく見える。
『オンニ久し振りー!ずっと会いたかったのにー!』
「私もだよー!それより皆んなめっちゃ綺麗になったね!」
『へへっ!なまえちゃんは全然おしゃれしなくなっちゃったの?』
化粧もしてないじゃーん!って言われて、男性アイドルのマネージャーだからねと伝えると、確かにねとみんなため息をつく。
『私達オンニに戻って来て欲しくてずっと事務所に言ってるんだよ!』
「え!?そうなの!?」
『うん!だって私たちにはなまえちゃんが必要だもん!』
「みんなぁ!」
熱のせいか目頭が熱くなる。
そこまで思ってくれてるのが本当に嬉しい。
私だって戻れるなら戻りたい。
そう口にしかけた時だった。、
「俺らもなまえが居ないと困るな。」
背後から声がして振り向けば、ジョンハンさんが立っていた。
『でもなまえちゃんはずっと私たちのマネージャーです!』
JH「今は俺らのだよ〜。それになまえが居ないと起きないメンバーもいるからね。」
ああ、あの2人か。
視線を向ければウジさんは案の定エスクプスさんとお偉いさんに捕まってて、ウォヌさんは暇そうにミョンホさんと壁際に座っている。
『でもオンニ…ずっとおしゃれもしなくなっちゃったし…。』
「ナギョン…。」
JH「なまえにおしゃれして欲しい?」
『当然です!オンニはめっちゃ綺麗で優しくて完璧な女性なのに、勿体ないです!』
ナギョンみたいな美人に言われると照れちゃうな、なんて思いながらナギョンを撫でる。
WN「何話してんの?」
JH「なまえにおしゃれして欲しいって話。それについては俺も同感だよ。別にプロミのマネージャーしてる時みたいにおしゃれしてくれてもいいのに。なまえがしないんだよ。」
「プロミの時も皆んなが可愛くしてくれてだけですからね…。私は全然。」
そもそも私なんてたかが一般人でマネージャーなんだから、おしゃれなんてしたところで誰も見ない。
プロミの時は皆んながおしゃれさせてくれただけだったし、すっぴんの時ももちろんあった。
まあ今はほぼ毎日すっぴんだけど…。
WN「俺も見たい。」
『オンニ!行こう!』
「え?どこに!?」
『ちょっとなまえちゃん借ります!』
『違うよ!オンニはうちらの!』
「え!?ちょっ、みんな!?」
プロミに手を引かれ忘年会から連れ出され、連れてこられたのはプロミのスタッフさんが部屋。
もちろん見慣れてるし、そこのスタッフさんとも顔見知りなわけで。
『メイクオンニ!なまえちゃんのヘアメイクお願いします!』
「…え!?」
『もちろんいいわよー!久し振りね!なまえにメイクできるの!』
「え!?いや、ちょっ、え!?」
驚いてる私をよそに慣れた手つきでメイクを始めるメイクオンニ。
『オンニはアイドルに負けない美貌の持ち主なんだから!』
「いやいや、それはないって…。」
久し振りに肌に色がのる。
前はよくメイクオンニの実験台でメイクされてたなぁ。
『なまえ、あんた熱あるでしょ?大丈夫?無理してるんじゃないの?』
メイクをしながらみんなに聞こえないくらい小さい声で聞いて来るメイクオンニ。
「大丈夫ですよ。みんなに久し振りに会えて元気出ました!」
『本当?でもあんまり無理しないでね?あの子たちから聞いたかもしれないけど、こっちに戻れるように皆んなで掛け合ってるの。だから何があっても絶対に辞めたりなんてしないでね?相談に乗るから。』
メイクオンニは昔から私のことなんてお見通しだった。今だって私の考えが読まれてると思うほど。
「…ありがとうございます。」
相談出来るならしたい。
ちょうど1年前の忘年会の日の出来事を…。
でもそんな事言えない。
『完成!やっぱりなまえは最高に綺麗だわ。』
「…うわぁ!」
久し振りにしてもらったメイクと、緩く巻かれた髪。
「オンニ、ありがとうございます!」
『うわぁ!やっぱりなまえちゃん本当に美人!あ!これ着て!』
「え!?ドレスまで!?」
『早く!早く!』
無理矢理手渡された黒いタイトなロングドレスと、パンプス。
『着替えた?』
「え?ちょっ、待ってね!」
急かされるから慌てて着替えてみる。
上品な黒いドレスはスリットが深い分、とても脚が綺麗に見える。胸元も背中もがっつり開きすぎだし誰のドレスなんだろう…。
約1年ぶりのパンプスに足を通す。
ああ、全部のサイズが完璧だ。
ロングスリーブのグローブがあったおかげで点滴の跡も隠れる。
『なまえちゃん、出来た?』
「うん、凄いサイズぴったりなんだけど、ちょっとスリット深い気が…」
『オンニぃぃぃぃぃー!!!!!綺麗すぎ!写メ撮ろう!』
『なまえちゃんのために用意したんだもん!』
私のために?
「ありがとう、みんな。」
皆んなで撮った写メをすぐにインスタにアップするみんなが微笑ましい。
『ペンのみんなもなまえちゃんの復活待ってるって!』
「復活って。ただのマネージャーだよ。」
『そんな事ない!よし、会場戻ろう!』
メイクオンニ達や、プロミの子達と会場に戻る。
ああ、どうかあの人だけは居ませんように。あの人だけは私に気付きませんように…。
そう願いながら開かれたドアに目を細めた。
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