【13 VERNON】

今日はなまえの歓迎会だ!と主役よりも盛り上がってるミンギュヒョン、ドギョムヒョンとスングァニ。

当の本人はと言うと、昨日よりも酷く疲れた表情でぐったりとしてる。

VN「大丈夫?」

少し顔を覗き込んできけば、一瞬頷き掛けてから首を振った。

VN「歓迎会?」
「そうですね…。苦手なんですよ、みんなでワイワイするのも、お酒も…。」
VN「俺も得意ではないよ。」

そう言えば、「何か通ずるものがありました。」って真顔で言うから思わず笑ってしまった。

VN「さすがに自分が主役の飲み会に参加しない訳にはいかないもんね。」
「そうですよね…、私が倒れたりしない限り無理ですよね。」

本気で言ってんのか冗談で言ってるのか、分からないけど行きたくないってのは凄く伝わって来る。

VN「俺とスングァニの隣に居ればいいよ、俺ら殆ど飲まないから。少しは気楽でしょ?」

ウジヒョンとミョンホヒョンも飲まないけど、多分まだ気まずいだろうし、俺とスングァニの隣ならまだ気持ちも楽だろう。

「こんなイケメンのアイドル様に気を使わせてしまって、面目無いです。切腹案件ですわ。」
VN「ふはっ!何キャラ?」

たまに謎のキャラが降臨して来るなまえは、ちょっと不思議だけど面白い。

「あの、バーノンさん…。」
VN「ん?」

メイクをする手を止め、珍しく俺を見ているなまえに少し驚きながら首を傾げる。

「今日行くお店、何処か知ってたりしませんか?」

どこか緊張した様子のなまえ。
お店の名前って言ってたっけ?いや、名前までは言ってなかったよな?

でもなんで直接ヌナに聞かないんだろう…。
ヌナに聞けば一発なのに…。

VN「ごめん、お店の名前までは言ってなかったよ。でも、スビンヌナの知り合いっぽい感じだったよ?」

ー…カチャ

なまえの手からブラシが滑り落ちる。
その音はこんな煩い楽屋では誰も気付かない。

VN「…なまえ?大丈ー…」
「すみません!」

俺の言葉に被せるように謝って、慌ててブラシを拾い、新しいブラシを手に取る。

なまえ…?
ブラシを持つなまえの手が震えていることに気付いた。

俺は何かいけない事を言ったのか?
それとも今日行こうとしてるお店に何かあるのか?

聞きたいけど、こんなみんながいる所で聞いてはいけない気がする。

「…あの、すみません。」

メイクを再開しようとしても手が震えてるせいで、うまく照準が定まらない。

VN「大丈夫。大丈夫だから落ち着こ。」

メンバーの誰にもバレないようにそっと手を握る。

「バーノンさん…」
VN「大丈夫。ゆっくり息吸って。」

言われた通り素直にゆっくりと息を吸うなまえ。
少し落ち着いたのか手の震えも収まっていた。

「…すみません。」
VN「ん、でもありがとうの方が嬉しいかな。」

そう言えばなまえは「ありがとうございます。」と小さく頭を下げた。

その後はいつも通り、ウォヌヒョンとミンギュヒョンを冷たくあしらいながらメイクしてるなまえ。
さっきのは何だったんだろう…。

そんなに行きたくないお店なのかな…。
でもそんなお店をわざわざヌナが予約する?

…分かんない。
まだメイク終わってないのは、ディノかシュアヒョンか…。
よし、ディノに頼んで聞いてもらお。

VN「ディノ、ちょっと頼まれてもらってくんない?」
DN「ん?何?」

メンバーやなまえに聞こえないようにディノに今日のお店がどんなお店か聞いてと伝える。

DN「全然いいけど、何で?」
VN「いや、ちょっと気になって。」
DN「なまえさんのこと?」

コクリと頷くと、ディノは「今日のなまえさん、いつもより一段と無表情だよね。」と呟いた。
見てないようでちゃんと見てるよなディノは。

それからライン順に撮影して、今は96ラインの撮影を椅子に座って見てる。

DN「ヒョン!」

ぼーっとしてるとディノの呼ばれた。
ディノの元に行くと何故かついて来るスングァニ。

VN「何でついて来るの?」
SG「何となく?」

ニコッと笑ったスングァニに、まあコイツならいいかと一緒にディノの元に行く。

VN「どうだった?」
DN「なんかスビンヌナの同級生のお店で、なまえさんもその人と知り合いみたい。だからなまえも喜ぶかなってそのお店にしたって。」

ヌナの同級生のお店で、なまえもその人と知り合い、ヌナはなまえが喜ぶと思ってる。
でも実際、なまえは喜ぶどころか怯えていた。

DN「ねぇ、ヒョン。それ聞いてどうすんの?」
VN「いや…、さっきメイクしてる時なまえに今日行く店聞かれて、ヌナの知り合いの店っぽかったよって伝えたら、急に怯えたように震え出してさ…だから何でだろうって思って…。」
SG「怯えるって…何でだろう…。ヌナはなまえが喜ぶと思ってるんでしょ?」

ディノがコクリと頷く。
あの姉妹は意思の疎通が出来てないと思う。と言うか、ヌナが一方的になまえを引っ張ってる感じがする。
それにしても、違いすぎないか?

SG「どうする?」

どうするも何も、原因も理由も何も知らない俺らには何も出来ない。
ましてやなまえに聞いたところで、絶対に答えてはくれないと思う。

VN「取り敢えず俺とスングァニの隣に居なとは伝えといたから、様子見るしかないよ。」

俺たちにはそれしか出来ない…。

撮影が終わり片付けをしているなまえの手際はやっぱりいつもより遅い。

『なまえ!まだこれ片付けてないの!?早く片付けないと予約の時間に遅れちゃう!』
「…うん、ごめん。」

ヌナはなまえの様子に気付いてないのか、それとも気付かないふりをしてるのか…。
分からないけど、テキパキと片付けを終わらせるヌナ。

結局なまえの片付けもヌナが手伝ってた。
みんなで車に移動する。

『ほら!なまえ!早く乗って!皆さんもこの車について来てくださいね!』

マネヒョンに明るく言うヌナ。
なまえは俯いたまま拳を握りしめてて、何となく助けなきゃって思ったら、意外にもディノがなまえの手を握った。

SG「ディノや…。」
『チャニどうしたの?なまえはこっちの車だよ?』
DN「なまえさんと話したいからこっちの車乗せる!マネヒョンもいいよね!?」

ディノのあまりの威勢の良さにみんな少しキョトンとして、マネヒョンは「あ、あぁ。」と呟いた。

DN「なまえさん、こっちです。」
MG「なまえがそっちなら俺もそっち乗る!」

ミンギュヒョンを筆頭にウォヌヒョン、ウジヒョン、ドギョムヒョンもぞろぞろとなまえとディノが乗った車に乗り込む。

ディノも気づけば立派な男になってるんだななんて、ちょっと誇らしげに思った。

DK「話すって言って話さないの?」
DN「いいの!ね!なまえさん!」
「…あ、はい。」

ヌナ達が乗る車について行く俺らの車。

『着いたぞ。この辺治安あんまり良くないから、1人で行動すんなよ。』

マネヒョンの言葉にゾロゾロと車を降りるメンバー。
なまえもゆっくりと車を降りた。

“GATE”

怪しいネオンが光る看板。
まあ、普通の飲食店なんだとは思うけど…。

『皆さん!ここでーす!』
SC「お前テンション高いな。」
『えへへ!いいじゃーん!』

お店のドアを開けクプスヒョンの腕を引っ張って店に入るヌナに続いて、メンバーがゾロゾロと入って行く。

おースビン久し振り!なんて声が店内から聞こえた瞬間だった。

……え、なまえ?
なまえが俯きながら俺の服の裾をギュッと握った。

VN「……ちー…」
『ほら、なまえ!ヨンギに会うの久し振りでしょ?あいつもなまえに会いたがってるよ!』

…ねぇ、ヌナ。
ヌナはなまえのこの異常な怯え方に気付いてないの?
さすがにちょっと、おかしいよ?

SG「ヌナごめん!ちょっと先入ってて!僕らコンビニ行って来る!なまえ借りるね!」
『そう?なまえが主役なんだから、早く戻って来てよ?』

分かってるよ!とスングァニが言うと、ヌナは満足そうな顔でお店のドアを閉めた。

VN「スングァナありがとう。」
SG「ううん!」
「あの…すみません…。」

俺の服の裾を握るその小さな手と消えそうなほど小さな声は震えている。

『あれ?お前らまだ入ってなかったのか?俺のこと待ってなくて良かっー…』
VN「ヒョン、車の鍵貸してください。」
『何だ?忘れ物か?それなら俺が取りに行ー…』
「俺も一緒に行くからヒョンは先行ってていいよ。」

……え。
背後から聞こえたその声は振り向かなくてもよく知ってる声。

ただ意外すぎる。なんでジョンハニヒョンがいるんだろう。

『お、そうか?じゃあ先行くな。』

マネヒョンを見送り、恐る恐る振り返る。

JH「なんだよ、寒いから早く車行くぞ。」
SG「…ヒョン、待って!だってヒョンなまえのこと嫌いじゃー…」
JH「もうそんなんじゃないから。取り敢えず早く来い!寒いわ。」

もうそんなんじゃないって?どう言うこと?
意味がまったくわからないけど、取り敢えず車に乗るか。

VN「なまえ、行こう。」

俺の裾を握る震えた手を、自分の手をしっかり繋いで車に戻った。




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