【15 WOOZI】

ヌナの同級生が経営してると言うお店に入る。

『皆んなよく来てくださいました!さあ、座ってください!俺はスビンの同級生のヨンギです!ってあれ?なまえは?』

そう言ってなまえを探すヨンギって人。

『何かコンビニ行くってどっか行っちゃった!まあすぐ来るよー!』
『ふーん。俺早くなまえに会いたいのになぁ…。』

ヌナと話すヨンギさんに俺は少し違和感を感じた。
申し訳ないけど、俺はこの人が苦手だと脳が反応してる。

他の奴らはきっと何も感じてないだろう、強いて言えばシュアヒョンかウォヌ。
でもシュアヒョンはホシと話してるし、ウォヌは携帯ゲームしてるから、きっと気付いてない。

スタッフチームと俺らと別れて座ったのに、気付けばスビンヌナはスンチョリヒョンとホシの間に座ってる。

『主役居ないけど先に始めよっか!皆んなビールでいい?』

俺らの代わりにスンチョリヒョンが答えると、次々とビールと俺とミョンホとジュンのウーロン茶が運ばれてくる。

『今日はなまえのために集まってくれてありがとうございます!なまえは人見知りで根暗だけど、本当はすごく大胆でいい子だから、だから仲良くしてあげてね!じゃあかんぱーい!』

大胆でいい子?意味が分からない。
何を言っているんだ?

HS「ヨンギさんもなまえのこと知ってるんですか?」

料理を運んで来たヨンギさんにホシが問い掛ける。
ヨンギさんはテーブルにお皿を置くと、そうだなぁと腕を組んでから言った。

『きっと、ここに居る誰よりもなまえのことは知ってるよ。』

…どう言う意味だよ。
ニタリと気持ち悪い笑みを一瞬浮かべて、厨房に戻って行ったヨンギさん。

HS「な、なんか意味深だったなぁ!あはは!」

場の空気を感じ取ったのか、慌てて明るく振る舞うホシ。

WN「なまえ今日いつもより怯えてたけど、なんかあんの?」

ゲームをしてたはずのウォヌが低い声を上げた。

『怯えてたなんて嘘よ!ただ飲み会とかが苦手だからそう演技してるだけ!あの子昔からそういうところあるから。構ってほしくて弱い演技とかするの。でも飲んだら大胆なの。だから大丈夫よ!』

今俺らの前でペラペラと上機嫌に話してるしヌナは、本当に俺らの知ってるスビンヌナなのだろうか。

そう思うくらい言葉の端々から棘と黒い何かを感じる。

WN「気持ち悪っ…。」

俺の隣で不機嫌そうに呟くウォヌ。
あぁ、俺もだよ。俺もそう思ってる。

DK「うー寒い!」

少しどんよりとした空気を切り裂くようなドギョムの明るい声がして、入り口に視線を移す。
いつものようにニコニコと微笑みながら入って来るドギョムとお待たせしましたー!って明るく振る舞うスングァニとは対照的な表情のディノ。

ボノニとヒョンはまだなまえと一緒か…。

『おー!やっときたぁー!ってハニとハンソルとなまえは?』
DK「まだコンビニに居るよ!あ、ビール2つとオレンジジュース一つください!」

厨房から出て来たヨンギさんは、今入って来た3人を見たあと『待っててね!』と言い再び再び厨房に戻る。

WN「なまえは?」
SG「ボノニとハニヒョンとマネヒョンの車に居る。」

ボノニはなまえと仲良いけど、ヒョンは意外だよな。

『お待たせしました、ビール2つとオレンジね!なまえはまだ来ないのかなぁ。』

ドギョムとスングァニの間から腕を伸ばし、グラスを置くとドアを見つめながら呟くヨンギさん。
やっぱり俺この人無理だわ。

ドギョム達が来てから10分、俺らが来てからもう2、30分は経ったけど、なまえ達が来る気配は一向にない。

その間ディノもスングァニもソワソワしてるし、ドギョムはいつも通り笑ってるけど、時折心配そうにドアを見つめてる。

隣のウォヌと来たらあからさまに機嫌が悪い。

『ねぇー!なまえ達遅くない!?私ハニとボノニとも飲みたいんだけど!』

少し酔いが回ったのか大きな声で叫ぶヌナに、苦笑いのホシ、シュア。

スンチョリヒョンだけがはいはいと優しく宥めてる。

『俺見て来るよー…ん?何かな?』

そう言ってエプロンを外そうとするヨンギさんの腕を俺は無意識に掴んでいた。
まるで人をおちょくるように、少しバカにしたような表情で俺を見下すヨンギさん。

WZ「メンバーと一緒なので俺が行きます。」
『ふーん。そう?じゃあお願いするよ。この辺治安悪いから気を付けるんだよ?』

明らかに子供扱いしてくるヨンギさんに苛立ちながら、マネヒョンの車に向かう。
地下の駐車場に行けば、一つだけエンジンの掛かった車があって、すぐにヒョン達が乗ってる車だと気付いた。

スモークが貼ってて中が見えないから、今どういう状況か分からない。

そっと優しく車のドアを開けようとした。
けれど、その手は車内から聞こえて来た声でぴたりと止まった。

「…わたし……あの男に………レ……」
JH「もういい。もういいよ。分かったから。ありがとう、話してくれて。」

今まで聞いた中で、1番優しいジョンハニヒョンの声が聞こえた。

言いかけた言葉の続きは分かる。
だからあの男がニヤニヤとしてたのかと納得がいく。

怒りで拳を握り締めた俺の耳に更なる衝撃が聞こえて来た。

VN「無理に答えなくていいんだけど、そのこと…ヌナは知ってる?」

なまえの反応はスモーク越しで見えない。
だけど、車内の沈黙ではっきりイエスだと分かる。

何で知ってるのにヌナはこの店を選んだ?

“でも飲んだら大胆なの。だから大丈夫よ!”

ヌナの言葉が妙に引っかかる。

「……でも、お姉ちゃんは…悪くないです…。」
JH「何でそう思うの?」
「…お姉ちゃんが……私が…私が酔っ払って…誘ってたって…だから……あんたが悪いよって…、私…途中から…記憶が無くて……。」

そうなのか?
本当にそうなら、何でここまでなまえが怯える?
おかしいだろ。

VN「俺の勘なんだけど…、なまえが意図的に酔ったんじゃないんじゃない?」

ボノニの言葉にハニヒョンのため息が聞こえる。

JH「俺もボノニと同意見だわ…。お前そもそもその時酒飲んでたのか?」
「…飲んだ、覚えはないんです……。自分が弱いって分かってるから…。ずっと…ジュース飲んでました…。」

なまえの言葉に嫌な予感が凄くする。
こんな嫌な記憶を思い出させるのは可哀想だけど、はっきりさせなきゃいけない。

勢いよく来るのドアを開けると、泣きながら小さく蹲るなまえと、控えめになまえの手を握るボノニ、そして運転席に座るヒョンが驚いた表情で俺を見た。

WZ「ごめん、今の話聞いた。なぁ、なまえ。俺今からなまえの辛い記憶蘇らせちゃうけど、いいか?」
JH「おい、それって…。」
WZ「こいつのためにもはっきりさせなきゃなんねぇーだろ。」

少し怒り気味に言う俺にびくりと肩を振るわせるなまえ。それでも涙を拭いコクリと頷く。

その目は俺が初めて見たなまえの真剣な目だった。

WZ「…よし。まず一つ目。記憶が無くなる前どんな感じだった?」
「…何か、凄くボーっとして…そして……体が…暑くなって…今まで感じたことないくらい…心臓も早くて……」

ギュッと自分の拳を握るなまえ。
…最悪だ。
そう思ったのは俺だけじゃない。

なまえが飲まされたのは媚薬的なものだろう。
まさか本当にそんな物に効果があるとは思わなかった。

ヒョンはあからさまに不機嫌な表情を浮かべ、普段温厚なボノニでさえ、眉間に深く皺を寄せている。

WZ「意識無くして途中で目が覚めたりしたか?」
「… お姉ちゃんと…あの男の笑ってる声で……一度目が覚めて…、知らない場所で…怖くて……お姉ちゃんにここ何処って聞いたら……大丈夫って…笑ってる2人の顔が……怖くて……」

震えを抑えるかのように手首を握るなまえの爪が皮膚にめり込んで、赤く血が流れる。
それでも震えは止まっていない。

もう聞かなくても分かる。
最後の質問なんて意味はない。
これ以上こいつを傷付けたくない。

VN「なまえ、血出てるからもっと力抜こ…。」
「…ごめんな…さい……。」

なまえは自分が悪いと思ってる。
自分が傷付けられたのに、ヌナの言葉を信じて。

なあ、なまえ。
お前のヌナも共犯だぞ?気付けよ…。

JH「俺って人見る目あると思ってたんだけどな…。」

ヒョンがヌナを好きなのは知ってる。
ヒョンだけじゃない、恋愛感情抜きにして俺らはヌナを慕っていたし、傷付くものから守ろうとまでしてた。

VN「それ言うなら俺ら全員だよ。」
JH「そうかも知れないけど…。」

シーンと重い空気が流れる車内で、急に誰かのスマホが震えてる音がした。

俺じゃないし、ヒョンもボノニも首を振る。
ってことはなまえのスマホか。

「…お姉ちゃんです……。」
JH「出てみて。」

なまえは涙を拭って深呼吸を1つすると、通話ボタンを押した。




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