【16 JEONGHAN】

『(……もしもしなまえ?あんた今どこにいんの?)』

寒気がした。
俺は今までスビンヌナのこんなに冷たい声を聞いたことがない。

「…え、あ、あの……ごめん…なさー…」
『(あんたなんかに付き合わされてるメンバーの気持ちも考えなよ?取り敢えずさっさと戻って来て。一応あんたが主役ってことになってんだから。)』

…本当にヌナなんだろうか……。
いや、さっきまでのなまえの話を聞いたら、こっちが本性なのかもしれない…。

マジで俺は今まで何を見てたんだよ…。
この目は節穴かよ…。

思わずハンドルを強く叩いた。

「…皆さん、私なんかに付き合って頂いて…すみませんでした…。」

ヌナの言葉を素直に受け入れ謝るなまえ。

VN「俺らはなまえに付き添いたいから勝手に付き添ってんの。だからなまえは謝らない。オッケー?」

ボノニはいつもどこかフワフワしてる。怒ることは滅多に無いしマイペースだ。
今だって怒りを必死に抑えようとしてるし、なまえを安心させるように優しく背中をさすってる。

怒りを露わにしてる俺より、ボノニの方がよっぽど大人な気がした。

コクリと頷くなまえにありがとうとまた優しく呟くボノニ。

取り敢えず行くべきなのか?それともこのままなまえを連れて帰ろうか、あんな話を聞かされて、あの店になまえを連れてくなんて絶対に無理だ。

WZ「俺は戻る。放っておいたら有る事無い事言いそうだから。」

そう言ってドアに手をかけるウジと、ほぼ同時に外側からもドアが開いた。

そこにはシュアが立ってた。

WZ「ヒョン?」
JS「ちょっと気分悪くてね。」

にっこりと優しい笑みを浮かべてるけど、目の奥は笑ってない。シュアが本気で怒ってる時の顔だ。

JH「…なんかあった?」
JS「ん、まあ色々とね。」

色々って何だよ…。
むしろそろ色々を教えろよ!

JS「ねえ、なまえちゃん。」

シュアの声にゆっくりと顔をあげ、真っ赤な目でシュアを見つめる。

JS「こんなに泣いて…。よし、僕と一緒に鬼退治に行こうか。」

………は?

JH「おい、お前酔ってんのか?」
JS「失礼だな、酔ってないよ。なまえちゃんと……メンバーのために、鬼は退治しなきゃでしょ。」

なまえとメンバーのためか…。
そうだよな…、あいつらは皆んないい奴だから、スンチョル、ホシ、ジュン、ミンギュ、ドギョム、そしてスングァニ。
あいつらは皆んな、人を疑わない真っ直ぐな奴らだ。

JH「…だな。」
WZ「行くか。」

シュアの言葉にエンジンを切る。
ボノニは少し心配そうにしながらも、なまえの手をしっかりと握ってる。

恐る恐る足を進めるなまえと、そんななまえを囲むように歩き出す俺らは、本当に鬼退治にでも行くのかってくらい怖い顔をしてると思う。

地下駐車場を出ると見えるネオン管。
店の中からは楽しそうに笑うヌナの声とメンバーの声。

JH「…鬼退治ってなにすんの?」
JS「ん?何にも。強いて言うならこのままで。」

どう言う意味だ?
俺にはさっぱり意味が分からないけど、シュアは妙に自信満々だし、なんなら笑顔怖いし。

JH「このままってこのまま?」
WZ「たぶん…。」

ジフニですらこれからシュアがしようとしてることを理解できてない。
まあ、シュアがこれだけ自信満々なら問題ないとは思うけど…。

店の真ん前でふうっと息を吐くシュアがゆっくりと振り向く。

「…あの……わた…し…」

再び怯えたように震え出すなまえの肩を抱き寄せた。
ああ、こいつはこんなに小さかったんだなって改めて実感する。

JS「大丈夫だよ。なまえちゃんには僕たちが付いてるから。」
VN「ハニヒョンと俺の背後にいて。さっきみたいに。」

ボノニがなまえの手をしっかり握ったまま、自分の背後に隠す。
俺は震えるなまえの肩を抱いたまま。

JS「じゃあいくよ?」

俺らの返事を確認してから、シュアがゆっくりとドアを開けたと同時にみんなの視線が一斉にこっちに向く。

『あー!もう皆んな遅いよぉー!ハニ〜とボノニは私の隣で一緒に飲む刑だぞぉー!』
SC「お前ら遅かったな?ってかなまえは?」
JS「ん?ここにいるよ。」

スンチョルの言葉に前に立ってたシュアが少しだけズレる。

SG「なまえ!」
DN「…なまえヌナ。」

なまえを見つけ喜んで駆け寄って来るスングァニとディノ。
ウォヌ、ミンギュ、ドギョムはやっと顔が見れたって嬉しそうに微笑んでるし、チャイナ2人とホシも少しほっとしたような表情を浮かべてる。

『なまえ、遅い!あんたが主役なんだからね!ヨンギ!なまえ来たから飲み物出してー!ハニとボノニはこっちー!』

手招きしてるヌナを初めて無視する俺に驚いてるホシとスンチョル。

WN「…なまえ、こっちおいで。」

ウォヌがなまえを手招きしてる。

JH「大丈夫だから、ボノニと行っておいで。」

頭を軽く撫で、ボノニの肩をポンと叩くとウォヌの隣に腰を下ろした。
俺はディノのウジの隣に座る。

『ちょっとぉーハニもボノニも酷い!私と飲みたくないのぉー!』

…胸を寄せて頬を膨らませて怒るヌナ。
ああ、やっぱり俺の目は節穴だったようだ。

こんな人を好きだと思ってたなんて。

MG「なまえ、何食べる?取ってあげるから言ってね?」
「あ…、ありがとうございます。」

なまえが泣いてたことなんて、顔を見ればどんなバカだろうが普通は気付く。
なまえがいつもより怯えていることも、普通なら簡単に気付ける。

普通なら…。

HS「ヤハーなまえ!ホシオッパがおすすめを取ってあげよう!」
MH「アッパじゃん。なまえ、これ美味しかったよ。」
HS「ちげーよ!って自分だって勧めてんじゃん!」

ホシは頑張って盛り上げようとしてる、ミョンホは通常運転。この2人はたぶん、今日初めてなまえと話してると思う。

JN「これ後で食べてね!」
DK「ヒョン、何で今飴あげるの?撮影中に欲しかったよね!?」

ジュンもなまえを気遣ってる。
皆んななまえの異変に気付いてる。

『お待たせしましたー。』

なまえを傷付けたく張本人が厨房から出て来る。

『ほら!なまえ!ヨンギだよ!久しぶりなんだからもっと喜びなよー!それとも照れてんの?』

俯いたまま震えるなまえをウォヌとボノニが庇うように両サイドから抱きしめてる。

『なにー?なまえ緊張してんのぉ?仲良くした俺らの仲なのなぁ。俺寂しい…。ま、取り敢えずビールと、はい、これはなまえ特製だからね。誰にもあげちゃだめだよ?』

ボノニとなまえの間から腕を伸ばしてグラスを置く男に、虫唾が走る。
ヘラヘラしてんじゃねぇ…。

いつも温厚なボノニ、ミンギュ、ドギョムにスングァニまでも唇を噛み締めてる。

『恥ずかしくて顔も見られないのかー?』

そう言ってなまえの頭を撫でようとする腕をシュアが掴んだ。

JS「お兄さん、本当になまえは照れてると思ってます?だとしたら頭大丈夫ですか?」

…シュア、お前。

『は?な、何言ってんの?だって俺となまえは君たちより深い関係だってさっき言っー…』
JS「これでなまえを傷付けたんですか?」

なまえに渡されたグラスを持ち上げる。

『ははっ、何言ってのかな?働きすぎておかしくなっちゃったんじゃない?それはノンアルコールカクテルだよ。』
JS「ふーん。じゃあ誰が飲んでもいいですよね?」
『ま、まあ…。』

シュアは手に持ったグラスをスビンヌナの前に置く。

JS「じゃあヌナ、飲んでみて。」
『え、わ、私が!?嫌よ!ノンアルなんて!私はアルコールしか飲まないの!』

この反応で確信する。
ああ、今回もなまえを傷付けるつもりだったんだなって。

WN「それにアルコール入れれば酒になるじゃん。入れてやれば?」
『え?いや、いいって!それはヨンギがなまえだけのために作ってくれたやつだから!』
SC「ちょっ、お前らどうしたんだよ?何で急にそんなヌナに当たり強いんだよ…。」

恋は盲目だよな本当に…。
考えれば考えるほど、色んな辻褄がパズルのようにあいはじめる。

WN「別に。俺は元々こんなんだった。」
SC「ハニはもっとスビンヌナに優しかったろ?何で隣に来てやんないんだよ!」
JH「目が覚めたから。」

意味がわかんないと言うように眉間に皺を寄せるのはスンチョルだけ。
ごめんだけど、他のメンバーは全員気付いてんだわ。

『ねぇ、皆んな…、なまえに何か言われたの?』
WZ「…例えば?」
『私が酷い姉だとか…。私のせいで自分がこんなに陰湿な子になったとか…。』

…末期だなこいつ。
よく今までそんな邪悪な性格を隠してたよ、逆にすげーわ尊敬する。

VN「逆だよ。悪いのは自分だって言ってたよ。」
『…ふーん。弱いのも自分。悪いのも自分。全部自分のせいだもんね。なまえはそうやって…私からみんなを奪おうとするんだね…。』

膝を抱えて顔を埋めるヌナに、手を差し伸べるのはスンチョルだけ。

SC「お前らどうしたんだよ!」
MH「ヒョン、まだ気付いてないんだったらまじで一回ハニヒョンかジスヒョンにぶっ飛ばしてもらった方がいいですよ。」

物騒なこと言うなミョンホや。
まあでもそれぐらいの衝撃は必要かもな。

SC「それどう言う意味だよ…。」
JS「なまえを傷付けてるのは、紛れもなくスンチョルの隣で嘘泣きしてる女だよ。」

シュアがそう言えば、ヌナはゆっくりと顔を上げた。
その顔は俺らが見たことのない表情だった。




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