【03 SEUNGWAN】
「よろしくお願いします。」
SG「スングァンです!よろしくお願いします。」
昨日スビンヌナが連れてきた新しいヌナのアシスタントのなまえちゃん。
血は繋がってないけどヌナの妹だって言ってて、ヌナは本当に大事そうになまえちゃんを見つめてたから、本当の妹みたいに思ってるんだなって思った。
「………。」
SG「………。」
なまえちゃんは人見知りなのか、自分から全く話そうとしないから、周りの声がものすごくよく聞こえて来る。
SG「人見知りですか?」
そう声を掛ければ、少し顔を上げ「…はい。」と呟くような声を出す。
正直言ってヌナとは正反対なタイプだと思う。
SG「何年生まれですか?」
「…98です。」
SG「同じ年だ!」
ヌナの妹なら、血が繋がってなくても悪い人じゃ無いって思うし、明らかになまえちゃんは今までの人とは違う。
だから、僕は彼女を信じようと思う。
SG「同じ歳だし敬語なく、楽にしようよ!僕のこともスングァンって呼んで!僕もなまえって呼ぶから!」
「……はい。」
何でこんなに笑わない子なんだろう。
そこまで警戒しなくても、いいのに…。
SG「あと、ボノニも僕と同じ98だよ!ほら、あそこのハーフの人がボノニ。」
「…そうなんですね。」
興味ないのかな…。
話しかけちゃだめなのかな。
SG「なんか、ごめん。」
「え?何がですか?」
少しだけ驚いたように顔を上げたなまえと初めて目が合った。けれどその目はすぐに逸らされてしまう。
SG「話しかけない方がいいのかなって思って…。」
「…や、あの…大丈夫です。すみません。…あなた達みたいな方と私なんかが、何を話したらいいのかと思って…。」
私なんか…か…。
SG「普通に話そうよ!友達と話すみたいに!ほら、スビンヌナみたいにさ!」
「………お姉ちゃんみたいに…。」
なまえの視線がスビンヌナに向けられたまま、ピタリと止まる。
SG「…なまえ?」
「すみません。私なんかはお姉ちゃんみたいになれないので…。」
それからは、何か話しかけちゃいけないような雰囲気で、ベースが終わるまで一言も話さなかった。
「スビンオンニ、スングァンさんベース終わりました。」
『ありがとう!てかなまえ!あんためっちゃ上手ね!ツルッツル!』
そう言って先になまえにベースをやってもらってたドギョムヒョンの頬を撫でるヌナ。
なまえは少しだけ微笑むと、僕に視線を落とす。
「終わりです。お疲れ様でした。」
SG「ありがとう!」
ニコッと微笑んでも、なまえが微笑み返してくれる事はなかった。
『次誰!?』
『パフォチいけるよー!』
『じゃあなまえ、次チャナとジュナのベースメイクよろしく!』
「はい…。」
あの2人なら大丈夫か。
なまえにベースをしてもらって、スビンヌナに残りのメイクをしてもらう。
なまえは今、ジュンヒョンのベースをやってる。
でもやっぱり口元は動いてない。
僕だけが嫌われてる訳では無さそうだ。
『何スングァナ、なまえのこと気になるの?』
SG「え!?」
『いや、ずっとなまえのこと見てるから。』
少し揶揄うように、悪戯な笑みを浮かべるヌナ。
まあ、気になると言えば気にはなるけど、たぶんヌナが思ってるような気になるではないと思う。
SG「なまえ全然話してくれないなって思って。」
『あー、そうだね…。』
ヌナの声のトーンが少し低くなって、鏡越しに顔を見たら、今まで見てきた中で1番悲しそうな表情を浮かべるヌナが、なまえを見つめてる。
『なまえがあんな風に人と目を合わせられなくなったり、話さなくなったのは、私のせいでもあるんだよ…。』
…え?ヌナのせい?
一体、なにがあったんだろう。
聞きたいと思ったけど、なまえを見つめるヌナの表情があまりにも悲しすぎて、口を紡いだ。
『…仲良くしてあげてよ。本当にいい子だから。』
ね?と僕の顔を覗き込むヌナは、いつものキラキラと輝く笑顔のヌナに戻っていた。
ヘアメイク中も、衣装合わせの時も、なまえが気になって目で追っていた。
だけど、今日1日、なまえの笑顔を見る事は無かった。
会報の撮影が終わったのは深夜1時過ぎだった。
『お疲れ!みんなお疲れ!』
メイク道具を片付けながらヌナが笑顔で僕らを出迎えてくれる。
これはいつものことで、僕らの日課のようでもある。
SG「ヌナ、なまえは?」
『メイク室に居ると思うよ!』
SG「ありがとう!」
ヌナにお礼を言い、衣装から私服に着替えてメイク室に向かう。
「スングァナ!待って!俺も行く!」
後ろから僕を追ってきたのはドギョムヒョン。
SG「僕今なまえに会いに行くだけだよ?」
DK「知ってるよ!俺もお疲れって言いたくてさ!今日初日なのにずっと立って頑張ってたから。」
そう言ってドギョムヒョンは、楽屋にあったチョコレートをポケットから取り出した。
SG「盗んだきたの?」
DK「もらったの!疲れた時は甘いものでしょ!」
確かにそうだ。
きっとなまえは疲れてると思う。
ヌナに聞いたら、まだ学校を卒業したばっかりだって言ってた。
体も慣れてないのに、朝から深夜まで、文句一つ言わずに僕らのメイクを直してくれてた。
ヌナの横に立って、ずっとメモをとってる様子だった。
コンコンっとドアをノックする。
「…どうぞ。」
中からなまえの声がしてゆっくりとドアを開けると、なまえがメイク道具を並べていた。
DK「なまえちゃん、お疲れ!はい、チョコレート!」
「あ、お疲れ様です、ありがとうございます。」
小さく頭を下げて、また並べたメイク道具を見つめるなまえ。その手には撮影中ずっとメモを取ってたメモ帳がある。
チラッと覗けば、そこにはびっしりと絵とメモが書かれていた。
あ、あれ、僕かな?
SG「そのメモ帳の絵って僕?」
「…っ!あ、す、すみません…。そうです…。」
少し恥ずかしそうにしながら、メモをさっと隠すなまえ。
SG「何で隠すの?めっちゃ上手じゃん!見せて!」
DK「俺も見たい!」
お願いと手を合わせると、なまえは小さく息を吐いてメモ帳をテーブルの上に置いた。
メモ帳には、僕らの肌のタイプや、普段使うアイシャドウの色からライブ用のメイクの仕方まで、絵と文字で綺麗に書かれていた。
DK「なまえちゃん絵めっちゃ上手い!」
SG「すごい!僕そっくりじゃん!絵得意なんだね!」
今日なまえがベースメイクを担当したメンバーの似顔絵付きのメモをパラパラと見つめる。
SG「うわぁ、本当にすごい。」
「ありがとうございます。」
あ、今…笑った?
お礼を言って少し、ほんの少しだけ微笑んでくれたなまえに、僕とヒョンも笑顔になった。
SC「お、いたいた、帰るぞ。なまえちゃんもお疲れ様。」
「…お疲れ様でした。」
クプスヒョンに頭を下げるなまえは、いつものなまえに戻ってて、さっき僕らが見た笑顔は貴重なものだったんだと思った。
SG「なまえ!また明日ね!ちゃんと寝てね!お疲れ!」
DK「なまえちゃん、お疲れ!明日ね〜!」
なまえにひらひらと手を振ったけれど、なまえはお疲れ様でしたと頭を下げただけだった。
心を開いてくれるのは、まだ先になりそうだ…。
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