【05 VERNON】

今日も今日とて相変わらず撮影の毎日。
なまえが来てから、10日、彼女は1日も休んでいない。

相変わらずなまえは俺らと目を合わすことも、親しく話すこともしない。
ただ黙々と与えられた仕事を熟す、職人みたいだと思う。

『ハンソラ、もう少し待っててね!』

スビンヌナがメイク待ちの俺に声を掛ける。

VN「なまえにやってもらう。」
『あ、そう?じゃあなまえお願いね!』

少し変わったところと言えば、俺もなまえにメイクをしてもらえるようになったこと。
そして、ほんの少しだけ、なまえの表情が柔らかくなったこと。

VN「よろしく。」
「よろしくお願いします。」

いつもと同じ手順でスキンケアをしてくれるなまえ。

小さな白い手は冷たくて、ひんやりする。

VN「手、冷たい…。」
「あ、ごめんなさい。」

慌てて俺の顔から手を離すなまえの手を握り、もう一度自分の顔に戻す。

VN「気持ちいいから大丈夫〜。」

そう言えば安心したように肩の力を抜くなまえ。

VN「なまえはまだフルメイクしてくれないの?」
「…私なんかまだそんなレベルじゃないですから。」

ここ数日、なまえと話すようになって気付いたことがある。

なまえはよく、“私なんか”とか“私なんて”と自分を否定する言い方をする。
丁度今みたいに。

VN「なまえのベースあんまりよれないし、メイクも上手だと思うんだけどな。絵も上手だし。」
「絵とメイクは別ですよ。」

んー、そんなもんなんだろうか。

VN「でも練習しないとずっとベースメイクのなまえのままだよ?」
「…ふふ、何か、スーパーヒーローみたいですね。」

…え、どこが?
これが俺がここ数日で気付いたことの一つ。
なまえの笑いのツボはどこか変だと言うこと。

VN「ねえ、ベースメイクのなまえ〜。」
「ふふ、何ですか?」
VN「今日俺のフルメイクしてよ。フルメイクなまえ。」

え!?と驚いたように目を見開くなまえ。
いや、びっくりし過ぎたよ。

「あ、でも、オンニに聞かな…」
VN「ヌナ!スビンヌナ!なまえに俺のフルメイクさせていい?」
「うわ、ちょっ、バーノンさん!」

俺の声にメンバーも俺となまえに注目する。
その中には勿論、嫌悪感を持つ目もあるわけで…。

『いいわよ!そろそろなまえもフルメイクしたいでしょ!頑張って!』
VN「だって。じゃあお願い。」

少しムッと怒った表情を見せたかと思えば、「イケメンが台無しになってしらないですよ。」と唇を尖らせるなまえ。

最初は無表情だと思ってたなまえの表情は、意外にもコロコロ変わる。

VN「素がイケメンだから大丈夫。」
「む、確かに…。じゃあやりますからね。」
VN「ふふ、お願いします。」

うん、やっぱりこの子は悪い子じゃない。

「…バーノンさん。」
VN「なんですか?」
「…見過ぎです。」
VN「すみません。」
「目を閉じてください。メイクが出来ません。」

ふはっと笑うとなまえもつられたように笑う。
ドギョムヒョン、スングァン、悪いけど俺が笑わせちゃった。

「あ、終わった…。」
VN「見ていい?」
「あ、あの!変だったら言ってください!速攻落とします!」

そんな慌てなくてもいいのに。
おっけと呟き鏡を見つめる。

黙って鏡を見つめる俺を不安そうに見つめるなまえ。

VN「なまえ。」
「あ、はい!」

いや、緊張しすぎだから。

ポンっとなまえの頭に手を乗せて、髪の毛をわしゃわしゃする。

「あ、あの、バーノンさ、ん!」

耳まで真っ赤にしてるなまえが面白くて、可愛くてわしゃわしゃを続ける。

VN「めっちゃイケメンになった。thank you なまえ。」

そう言ってわしゃわしゃを止めると、なまえは真っ赤な顔のまま、凄く本当に凄く嬉しそうに微笑んだ。

なんだよ、その顔…
反則だろ…



その後撮影に向かう。

『今日のボノナいつにも増してイケメンだね!』
SC「メイク変わった?」
VN「なまえにやってもらった。」

そんな大きい声で言ってない。はず。
それななに、スングァンとドギョムヒョンの「え!?」っと言う声がスタジオに響いた。





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