【07 なまえ】

ここでお姉ちゃんのアシスタントとして働き始めて2週間。
色んなことに少しずつ慣れつつあった。

スングァンさんとドギョムさんは最初から優しくしてくれたのに、私がどうしたらいいの分からなくて、うまく返事をすることが出来なかった。

それでも毎日話しかけてくれるから、今では大分話せるようになったし、バーノンさんは見た目と違って凄くふんわりしてて波長が合うなって思った。

イケメンな上に性格までいいとか、もう私なんかが話していい次元の人じゃない。

それでも少しずつ話が出来るようになったのは嬉しくて、憂鬱だった時間も今では少し楽しく感じてた。

とは言っても、3人以外とは未だまともに会話すらしたことないけど。

ジョシュアさんのメイクを初めてすることになった。
この人はいつもお姉ちゃんが担当してる。

なんで急に私の方に来たのかは謎だけど、私に断る権利なんてないから。

いつも通り無言のままメイクを進める。
やっぱりお姉ちゃんが担当する方は賑やかで明るい。

壁を作るなとジョシュアさんに言われた。
そんなこと言われても…。

JH「別にそいつが勝手に壁作ってんならいいんじゃないの?ヌナと同じようになるなんてこいつには絶対無理だろ、似ても似つかない。」

私たちの会話をいつから聞いてたのか、ジョンハンさんが冷たく言い放った。

わざわざあんたに言われなくても、痛い程分かってるよそんな事…。

それにあんたにそんな事言われる権利ない。

そんな言葉が頭を過ぎるけど、勿論アイドルにそんなこと言える訳もなく、グッと怒りを押さえ込んだ。

私はこのジョンハンって人が嫌いだ。
お姉ちゃんの事が好きだから、私への当たりが強いんだと思う。

私が来る前までのアシスタント達は、みんな彼ら目当てでお姉ちゃんを利用する人ばかりだったと、スングァンさんから聞いた。

だから、アヨンさんが戻るまでもうアシスタント無しで行こうと決めてたと。
お姉ちゃんが傷付くのが嫌だったって。

なのに私が来たから、ジョンハンさんは私を嫌ってるんだと。

まあ、確かに妹って言って血も繋がってなかったらそりゃ疑うよね…。

私なんかが、アイドルとどうこうなれるなんてこれっぽっちも思ってない。
だからもう私に構わないで欲しい…。

メイク道具を片付けにメイク室に行く。
メンバーのみなさんはこれから練習らしい。

大変だよ、アイドルは…。

お姉ちゃんは用事があると言ってたから、片付けは私がすると言って先に帰らせた。
彼氏でも出来たのかな…。

綺麗だし、彼氏ぐらいできるよね…。
私なんかとは違うもん…。

“ 似ても似つかない。”

何十回、何百回と聞かされて来た言葉。
私に呪いのように降り掛かる言葉。

「…もう、うんざりだよ……。」

「何が?」

………え?
誰も居ないはずのメイク室。

独り言のはずだったのに声がして、ゆっくりと視線をドアへと向ける。

そこにはウォヌさんが立っていた。

「…あ、お疲れ様です。何か御用ですか?オンニなら今日はもう帰りましたけど…。」

ウォヌさんは無言のままメイク室に入ると、すっと私のメモ帳を差し出した。

WN「これ、忘れてたから。」
「すみません。ありがとうございます。」

ウォヌさんからメモ帳を受け取り深くお辞儀をする。
ウォヌさんとも今まで一度も話した事はない。

いつも真顔でちょっと、怖い…。

WN「で?」
「へ?」
WN「何がうんざりなの?」

あ…、誤魔化せたと思ったのに…。

「何でもな…」
WN「誤魔化しても無駄。言うまで戻んないから。」
「え、あ、あの…。」

ドスンッとメイク室のソファーに腰を下ろしてしまったウォヌさん。

適当なことを言って誤魔化そうと思ったのに、ウォヌさんの全てを見透かされそうな目に何も言えなくなった。




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