【01 うわさ ーなまえー】
『ねぇ、聞いた?』
『何が?』
『あの噂!アイドルのセックスドールの話。』
『あー。知ってる!でもそれ本当なのかな?私信じたくない…。』
『本当でしょ、ね、なまえはどう思う?』
最近噂になってるアイドルのセックスドールの話。
アイドルの性欲を抑えるために、専属のプロの人がいるって話。
ある元アイドルが告発した話で、信憑性はあるものの、まだ疑ってる人もいる。
「私は本当だと思うよ。」
『だよね!ほら!』
アイドルヲタクのユラが信じたくないと言うように首を振る。
『日本にもそう言うのある?』
スジンがアイスアメリカーノを飲みながら聞いて来る。
「うん、本当かどうかは分からないけど、聞いたことはあるよ。だからこれも本当のことかなって思って。」
『あー!アンデー!もうそれ以上言わないでー!私の推しがー!』
ユラの気持ちはよく分かる。
私だって日本にいた頃はジャニヲタだったから、その話を聞いた時は友達と大絶叫した。
でも、少し落ち着いて考えてみれば、意外と冷静になる。
「ねぇ、ユラ。考えてみて、ユラの推しって私たちと同年代でしょ?それなのにまだ未経験って言うのも嫌じゃない?」
『うっ…ん、ま、まぁ…。』
苦虫を噛み潰したような、何とも言えないユラの表情を見て、スビンが笑ってる。
「でもさ、かと言って変な匂わせ女に引っかかるのってもっと嫌じゃない?」
『え。それは絶対嫌!』
「だったらプロ相手の方がいいでしょ?本気の恋愛でもないんだし。」
そう言うとユラの表情がぱあーっと明るくなる。
分かりやすいな。
『確かになまえの言う通りだわ!よし!私はこれからも推しを推し続ける!』
『それは良かったよ。でもさ、プロの人たちってどんな人なんだろう、やっぱり綺麗なのかな?』
少なくてもブスではないでしょって呟くユラに、私とスビンもコクリと頷く。
「日本にいた時は、モデルの卵とか、グラビアアイドルとかって聞いたことあるよ。まあ、それは本当かどうか分からないけど。」
『なるほどね…、どっちみち綺麗でスタイルも良くないとダメってことですか。一般人には無理ってことですか!』
ユラの言葉に私とスビンを顔を見合わせる。
あ、もしかしてユラ氏、やろうとしてた?
『…ユラ、あんたまさか……』
『無理なのは分かってるよ!?だけどさ、ファンのままで居るのと愛情はなくてもお相手出来るのどっちがいいのかなって思って。』
幸せなのはファンでいることの方だと思う。
好きになってもらえないのに、体の関係だけなんて結構酷なことだと思う。
まあ、考え方は人それぞれだからどっちが幸せかなんて判断はできないけど。
『なまえは推しにドールになってって言われたらどうする?』
「ん、断るよ。絶対。」
『だよね、私も断りたい。でも推しに目の前でそんな事お願いされたら断る自信ないなー!』
そんな話をしてるのは、私達だけじゃない。
きっとアイドルヲタクしてる子達の話題は、この話で持ちきりだろう。
確かに私も目の前で頼まれたら、断れないかも知れないな…。
『あ、そうだ!今週の金曜日、クラブ行かない?オッパからチケット貰ったんだよねー!』
スビンのお兄さんは、江南で有名なクラブのDJをしてる、その界隈では結構有名な人。
見た目は厳つくて、ちょっと近寄りがたいけど、実際は喋るととても優しくていい人。
『お!いいじゃん!行く行く!てかユジュンオッパに聞けばドールの話が本当か分かるんじゃない?』
『たぶんね、でも業界のことは外で言わないようにしてるから、妹の私にさえ教えないよあの人。』
『ちぇー!でもクラブ楽しみ!何着ようかな!』
何着て行こうかって盛り上がってる2人の輪からそっと抜け出そうとした。
『なまえ氏も勿論行くよね?』
「え?いや、私は…」
『オッパもなまえに会いたいって言ってたし、それになまえ達のためにセブンティーンかけてくれるって言ってたのになー。』
え!?まじ!?と嬉しそうに反応するユラ。
確かに前に連れて行かれた時は、知らない曲ばっかりでつまんないって言った。
それが正直な感想だったから。
それに、暗いし、音楽もうるさくて話す声も聞こえなくて、私には合わないと思って2人にカトクを入れて逃げてきた。
もう一生クラブなんて行かないと思ってたのに…。
「いや、でも私クラブ行くような服ないし。」
前回は、3人でご飯を食べた後に酔ったスビンがクラブ行こうって言い出して、スビンのお兄さんのクラブなら顔パスで入れるからって、大学帰りの格好のまま行った。
『服はわたしが用意するから!ね!行こ!』
『なまえー!』
顔の前で両手を擦り合わせお願い!なんて言われたら、さすがに断り難い。
「はぁ…分かったよ。その代わり、1人にしないでね?」
『もちろん!男抜きだよ!』
まあそれならいっか。
→
ノベルに戻る I
Addict