【act.05 なまえ】

ここ、何処だろう…。
暗闇の中でずっと名前を呼ぶ声が聞こえてた。

でもその声がふと聞こえなくなって、声の主は何処に行ってしまったんだろうって、探したけど見つからなくて。

疲れたから、そのまま目を閉じたんだ。



ゆっくりと目を開く。
…ここは?
見慣れない天井と、私を取り囲む男の人達。


……だれ?


そう聞く前に泣き出されてしまって、何も言えない。
どうしようか…。

JH「なまえ…?」
「…は、はい……。」

私の手を握ってた人が、様子を伺うように名前を呼ぶ。

JH「なまえは俺らのこと…分かる?」
HS「は!?ヒョン!何言っ……う、そ…だろ…。」

…この人達は皆んな私のことを知ってるのに…。

「…すみません……。」

申し訳ないなって思いながら素直に謝った。

JH「こっちこそ、ごめんね。怖がらなくていいから。大丈夫。ごめん、ごめんね。」
WN「先生呼んでくる…。」

繋がれてた手がそっと離れた。

それからすぐまた知らない男性が入って来て、私の手を取って嬉しそうに泣くから困ってしまった。

何で私は覚えてないんだろう。
この人達は何なんだろうか。

先生が病室に来た後、また来るねと言い男性達は帰って行った。

私の記憶が無いことは、先生を呼びに行った男性が伝えてくれたらしく、その後直ぐに脳波の検査をした。

『本当に何にも覚えてないのか?』

検査の結果を待つ間、ドンジェさんと言う男性とジアさんと言う女性が病室に残った。

残念ながら私はどちらも覚えてないんだけど…。

「自分の名前も出身地も、何で韓国に来たかも覚えてます。でもそれ以外は…」
『SEVENTEENとして活動してた記憶だけがないのか…。』

SEVENTEEN?

「あの、私17歳じゃないですけど…。」

そう言えば、ジアさんが優しく微笑みながら答えた。

『なまえはね、SEVENTEENってアイドルグループの紅一点メンバーなんだよ?芸名はカウル!凄い人気で…。』

私がアイドル?しかも紅一点?
…あ、ってことは…

「さっきの方達は、メンバーですか…?」
『…うん、そうよ。』

ジアさんは目に涙を浮かべたまま呟いた。
そうか…、彼らはメンバーだったのか…。

「…でも、何で紅一点なんですか?他に女性メンバーは?」
『……お前だけだよ。』

黙ってしまったジアさんの代わりに、ドンジェさんが答えた。

『俺はマネージャーでジアはお前と仲良しなメイクだ。』

なるほど、だから病室に残ってくれたのか。
でも仲良しだったのに覚えてないのは、申し訳ないな…。

謝ろうと口を開きかけた瞬間、病室のドアをノックする音と共にドアが開いて白衣を着た先生が2人入って来た。

『刺された傷に関しては、幸い臓器は免れていたので、傷が塞がれば退院できますが、傷口が深いので退院後も激しい動きは暫く控えるようにしてください。脳に関しては異常は見られず、脳に外傷もないことから、なまえさんの精神的な問題だと思います。』

…精神的な問題?

『なまえの記憶は……戻るんですよね?』

ドンジェさんが険しい表情で先生を見つめる。

『戻る保証はありません。なまえさん次第だと思います。』

…私次第?
先生はそれだけ言うと病室を出て行った。

『よし、なまえ!死ぬ気で思い出せ!』
『ちょっ、オッパ!なまえにプレッシャーかけないでよ!なまえ、ゆっくりでいいから、無理しないでね。取り敢えず傷口治るまでゆっくりして!』
「…ありがとうございます。」

これから私が退院するまでジアさんが面倒を見てくれるらしい。

『じゃあなまえの着替えとか取ってくるね!なんか欲しいものある?』
「…いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」
『うん…。直ぐ戻るからね!』
『俺はまた明日来るわ!ゆっくり休めよ!』
「はい。」

…記憶喪失か……。
そんな映画みたいなこと、まさか自分の身に起こるなんて思ってなかったな。

あ、ジアさんにスマホ持って来てって頼めば良かった。
…まあ、連絡取る人も居ないしいっか。

取り敢えず、思い出さないとだよね…。




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