【act.06 SEUNGKWAN】
ヌナの真っ白なワンピースから溢れる赤は、どんなに抑えても止まらなかった。
怖かった。ヌナがこのまま消えてしまうんじゃ無いかと。
だから、ヌナが目を覚ました時、本当に嬉しくて嬉しくて。
それなのに、ヌナの目は怯えていて、僕らの事を忘れてしまっていた。
あの日から1週間。
僕は一度もお見舞いに行けていない。
と、言うよりも怖くて行けないんだ。
僕らを見るヌナの他人行儀な視線も、よそ行きの声も、作り笑いも、怖いんだ。
JN「スングァナ、ちゃんと食べて?スングァナの好きなドーナツ買って来たから一緒に食べよ?」
SG「ジュニヒョン…。」
食欲のない僕を心配して大好物のドーナツを買って来てくれたジュニヒョンは、本当に優しい。
ジュニヒョンだって不安なはずなのに。
知ってるんだよ、皆んなろくに寝てないことも、食べてないことも。
SG「ヌナは…もし記憶が戻らなくても、僕たちの元に戻って来てくれるかな?」
JN「…スングァナななまえが戻ってこないかもって思ってるの?」
ジュニヒョンの言葉に小さく頷く。
ヌナは僕たちの中で1番努力してるし、苦労してるし、1番辛い思いをしてきてる。
女性だってだけでアンチもサセンも居て、女性だってだけで何しても叩かれて。その度に何度も炎上した。
勿論ヌナのことを応援してくれるペンだって沢山いる事も知ってる。
ヌナだって分かってるはず。
それでも、今回みたいに酷いアンチに襲われてまで僕たちの元に戻って来てくれるなんて、そんな自信はない。
僕たちがヌナを守るからねって事あるごとに言って来た。
守ってると思ってた。
でも、実際は守れなかった…。
JN「僕ね、なまえは絶対に戻って来てくれるって信じてるんだ。」
SG「…ヒョン。でも精神的なものだって…。」
JN「うん、そうだね。」
僕は見たんだ。
精神的なものから来る、記憶喪失の原因は、過度なストレスと現実逃避から来るものだって。
SG「ヌナ、本当はSEVENTEENとしての活動が辛かったんじゃないかなって…。辛い事とか苦しいことの方が多かったんじゃないかなって…。」
涙が溢れて、最後の方はうまく喋れてないと思う。
それでもジュニヒョンは、うんうんと聞いてくれた。
JN「そうだね、なまえは辛かったと思う。1人で溜め込んじゃうしね…。でも、なまえは戻って来てくれなきゃ…。なまえが居ないなんて、僕ら耐えられないよ…。なまえのあの笑顔がなきゃ、頑張れないよ。」
そう言って悲しそうに微笑んだ。
その笑顔があまりにも苦しくて、僕の涙は止めどなく流れた。
MG「行ってくるね。」
ミンギュヒョンはリビングに居た僕とジュニヒョン、ウォヌヒョンに声を掛けると、キャップを深く被って宿舎を出て行く準備をする。
あの日から、ミンギュヒョンは毎日ヌナの病室に顔を出している。
僕も行きたいんだ。ヌナの顔を見たいのに、辛そうな表情で帰ってくるヒョンを見るたびに僕には耐えられないって、諦めてしまう。
弱虫だな本当…。
WN「なまえ、スングァナに謝らなきゃって言ってたよ。」
SG「…え?」
ずっとソファーで本を読んでたウォヌヒョンの言葉に慌てて顔を上げた。
WN「自分のせいで服汚しちゃって申し訳ないなって。真っ白な衣装カッコ良くて素敵だったのにって。」
…ヌナ……。
ヌナだってお姫様みたいで綺麗だったよ。
WN「今度、行ってやれよ。記憶がなくても、なまえはなまえだから。」
…記憶が無くても、なまえはなまえ……。
そうだ。ウォヌヒョンの言う通りだ。
僕のことを忘れてしまったとしても、ヌナはヌナで、僕の大好きなヌナなのは変わらないんだ。
あぁ、僕は何でそんな単純なことも忘れてしまっていたんだろう。
SG「ミンギュヒョン待って!僕も行く!」
そう言って玄関で靴を履いてるヒョンを呼び止める。
MG「うん、行こう。」
少しだけ微笑んだミンギュヒョンと共に、僕はあの日以来初めてヌナに会いに行くことにした。
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