【act.04 JEONGHAN】

手術室から病室に戻ってきたなまえの手を握る。
反対側の手をディノが握ってた。

麻酔が効いてまだ眠っているなまえの顔は青白くて、このまま消えていってしまうんじゃないかと不安になる。

もうかれこれ3時間以上、誰も口を開いてない。

皆んな、不安なんだ。
なまえが消えてしまうんじゃないかと。

俺は何で先に降りた?
何で、後ろを確認しなかった?

何で、なまえの側に居なかった?

何やってんだよ俺…。

JS「みんな喉乾いたよね。何か買って来るよ。クプスも行こう。」
SC「あ、うん…。」

シュアがクプスを連れて行った。
俺らはそれぞれ自分を責めている。

でもきっと1番自分を責めてるのはクプスだ。
だから、シュアはクプスを連れ出したんだろう。

DN「…ヒョン、…ヌナが…。」

ディノの声に顔を上げなまえを見つめる。

瞼がピクッとなって、ゆっくりと目が開いた。

JH「なまえ!」

名前を呼ぶと、なまえの視線がゆっくりと俺に向いた。
………え、、、

DN「ヌナ!」
SG「あ、あ、ヌナァァァ!」

泣き叫ぶディノのスングァン。
そんな2人に続くように、ドギョムとホシがなまえの名前を呼んで泣き叫ぶ。

そんなメンバーを見てるなまえの表情に、ゾクっと背筋が凍った。
すごく、ものすごく嫌な予感がする…。

MG「…なまえ……。」

俺の背後からミンギュの搾り出すような声が聞こえる。
ああ、そうか。

ミンギュも気付いたんだね…。

バンッ!と病室の机を叩く音がして、振り向けばウジが歯を食いしばっていた。
ウジがこんなにも怒りを露わにするのは珍しいと客観的に思った。

泣き叫んでたメンバー達はそんなウジの行動にポカンとしてる。

ふうっと息を吐き出して、少し怯えた表情のなまえを見つめる。

JH「なまえ…?」
「…は、はい……。」

怯えている、この目を俺は覚えている。
あの日と同じ目だと…。

JH「なまえは俺らのこと…分かる?」
HS「は!?ヒョン!何言っ……う、そ…だろ…。」

なまえは怯えた表情のまま、静かに首を振った。

「…すみません……。」

他人行儀に謝るなまえの手をそっと離す。

JH「こっちこそ、ごめんね。怖がらなくていいから。大丈夫。ごめん、ごめんね。」
WN「先生呼んでくる…。」

ウォヌが病室を出て行く。

吐き気がする。今すぐこの場から逃げたい。
神様は何でこうもなまえにばかり試練を与えるんだ…。

なまえはこんなにもずっとがむしゃらに頑張ってただけなのに…、何でだよ…。

ウォヌが病室を出て行って、数分もしないうちにクプスとシュアも戻ってきた。

クプスはなまえに駆け寄って、さっきの俺と同じように手を握って喜んでた。

クプス、なまえは…、もう俺らのこと…覚えてないんだよ…。




マネヒョンとジアヌナが宿舎に来た。
ジアヌナはカバンになまえの荷物を詰めると、何も言わずに宿舎を出て行った。

『なまえは、取り敢えず傷が治るまで入院だ。』
SC「記憶は…、なまえの記憶は戻るよね?」

クプスの希望にも似たような問いかけに、マネヒョンは一度開きかけた口を閉じる。
その瞬間に、嫌な汗が背中を伝った。

『記憶は…、必ず戻る保証はないようだ。』

ほら、やっぱり。
俺の嫌な予感は当たるんだ。

あの日だって、嫌な予感がしてたのに…。
マネヒョンの言葉に、ウジを拳を握り締め、ホシは俯いたまま静かに泣いていた。

いつもは直ぐに泣くスングァンは、現実を受け入れられないでいるみたいだった。

JN「…ミンギュ……。」

ミンギュは全員が集まっているリビングから、逃げるように、何も言わずに出て行った。

『取り敢えずお前らもちゃんと食って寝ろ。』

空返事をした俺らにため息を吐いて、マネヒョンはまた連絡すると言い宿舎を出て行った。

1人、また1人と部屋に戻っていく。


最後にリビングに残ってたのは、俺、クプス、シュアの3人だった。

SC「俺らは…この先どうなるんだよ…。」

弱々しく呟いたクプスに、かける言葉は見つからない。
俺だってそんなの分からないから。

でもただ一つ言えることがある。

JH「俺は、またなまえとの思い出を作る。」

忘れた分、また新しい思い出を作るよ。
だから、また笑ってよ…なまえ…。




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