解脱したい系女子。
やぁこんにちは、世界のモブこと通行人Kだよ!
まずは自分の自慢話からさせてもらうのだけど、私はすごく記憶力が良い。瞬間記憶能力とかそういうものじゃなくて、大分昔のことを結構覚えているっていう方面で。
まぁ大体自分のことしか覚えてないけど。どんだけナルシストなのって話だよ。
どれくらい覚えてるかと言えば、前前前前前前前世あたりからかなッ。
……そうだよ!巷で話題の多重転生系女子だよ!プラスしてトリップ系女子でもあるよ!心中は察してね!
そもそもなんで私はこんなに死んで生まれてを繰り返してるの?仏様が私に徳が足らんと言っているのかな。でも別にそこまで仏教に篤くないんだ……。篤くないから何回も転生するのかな?まだまだ徳を積みなさいってか?でも私、お腹空いている人のために火の中に飛び込む勇気はないかなぁ!
そろそろ疲れてきたから解脱したい。そう願うのだけど、そんなことを考えている時点で悟りへの道程は遠いと思います。本腰入れて出家を考えるべきか。
なんて考える私は御年十七才。花も恥らう高校生です。
ついでにお住まいは都内。市の名前は米花。半年間で何百何千人と殺し殺され、いくつもの建造物が爆発する、あの米花である。
はぁぁぁ〜〜〜、むりぃぃぃ〜〜〜。
八回目にしてコナンの世界とか、徳積む前に死ぬ。今までも今までだけど、今回も死亡率高すぎるムリ。はぁ、来世に期待しょ。期待して応えてもらえたことは一度もないけどね!
長生きを早々に諦めて、私はお子様ライフをエンジョイした。今出来ることを精一杯楽しまないなんてもったいないよね!まぁただ遊び呆けていただけなんですけど。
「ケイの姉ちゃん、行ったぞ!」
「はぁーい」
呼ばれて、結構勢いづけて蹴られたボールを右足で難なく受け止める。
ちなみに尾長ケイが今世のお名前である。さて、ケイの漢字は何だと思う?まさかの鶏って書くんだよ!今世の親の悪ふざけが酷い。オナガドリ、天然記念物かよ!名乗りは問題ないけど、名前を記入する時はいつもカタカナで書いているのは仕方が無いことだね。
足元に止めていたボールを、さっきとは別の子に蹴って渡す。ふわりと浮いたそれを、そばかすがチャームポイントでひょろっとした男の子が胸で受けた。それを見た赤いカチューシャの可愛子ちゃんが、わぁスゴーイ、なんて手を叩いて褒めるものだから、そばかす君は披露しちゃうよね、渾身のドヤ顔を。
「バーロー、今のはパスのおかげだろうが」
「うわあぁ!言わないでくださいよー!」
でも残念っ!子どもながらに持つ男のプライドは、理解してくれないこましゃくれた眼鏡少年にあっさりとネタバレされて粉々である!そばかす君は顔を真っ赤にしてしまった。はっはっは、可愛い子どもたちだぜー。
て、なんでや!関西人じゃないけど言いたくなる、ほんま、なんでや、工藤……ッ!!
もう、ほんと。何で私は少年探偵団と一緒に川原でサッカーしてるの?確かに、日曜で休みで暇だし散歩しよ、て土手を歩いてる時に飛んできたボールをキャッチして、ふんわりキックで眼鏡くんにボール返して、そしたらお姉さんサッカーうまーい!てなって、あれよあれよと誘われて遊んでしまったわけだけど。
……あ!私のせいですね!!黙って転がして返しときゃ良かったわッッッ!!
きゃっきゃっうふふと遊ぶ子どもたちを尻目に、私はフラフラと土手の斜面へと向かった。その先にいるのは赤茶の髪のクールな女の子。読んでいた本から顔を上げて、私の一挙一動を見張っている。あんまりにも警戒されて思わず苦笑いした。
「そんなに警戒しなくても……」
「あら、知らない人には当然の対応だわ」
その警戒心、向こうで遊んでる子どもたちにも分けてあげて。
「まったく。江戸川君もいつもならもう少し様子を見ているのに、どういうことかしら」
呆れた溜め息を吐く彼女は、どこからどう見ても普通の小学生、に見えるわけがない!(地面ダァン!!)隠す気ねぇだろこの子!!もっと眼鏡くんを見習ってあざと可愛くしてくださいッ!!!
「いやぁ、ちょっとリフティングしたら尊敬の目で見られちゃって。照れるなぁ」
「薄い警戒心ね」
「あはは……」
鼻で笑うのはいいけれど。似合っていらっしゃるけれど。けれど、けれど……。……はぁ。
なんか疲れた。肉体的にも精神的にも疲れた。これはきっと赤疲労寄りの橙疲労だわ。部隊の再編成をお願いします。単独編成なので不可です出直してきてください。
あぁ、本丸は良かったなぁ。前々世くらいだったかな?書類仕事は大変だったけど、精神的にはそんなに……、いや、疲労してたな。癒しがあるだけまだ良かっただけだった。あと刀振り回してのストレス発散は楽しかったです。
家に帰っていいかな、と三角座りしながら川原を眺めていると、耳を劈くような悲鳴が聞こえてきた。
慌てて腰を浮かし声のした方を見ると、赤ん坊を抱えた女性が川を指差して何事かを叫び続けている。指し示した方向に視線を動かして、認識して、私は地面を蹴った。後ろでクールちゃんが何か言っているがよく聞こえない。子どもたちの横を通り過ぎる際、眼鏡くんも何か言っているような気がした。でも今はそれどころじゃない。聞いている暇はない。
私は川縁から飛び込んだ。
_ _
結果から言えば、無事に生還いたしました。ブイブイ。溺れていた男の子も私も大まかに言えば無傷です。
う〜ん、困ったのは昨日の雨でちょっと増水してちょっと勢いを増した水流が、男の子をどんぶらこっことさっさか流してしまっていたことかな。慣れてて良かった着衣水泳。泳ぎの早さと器用さには自信があるよ!
そして今、私は救助隊の人たちにこっ酷く怒られている最中です。
はい、はい、申し訳ありません!溺れている人を見かけても飛び込んじゃいけません!二次被害の可能性大!!まずは119番!救助を待つべき!!今回は眼鏡くんがしてくれたんですねありがとうございました!
ひたすら大人からの叱責を受け入れ、ひたすら頭を垂れて謝罪を繰り返した。御年十七歳、しかし生きた年月は何百年……。な、情けねぇッ。
こんこんと叱られ、平に謝り、溺れていた男の子とそのお母さん と一緒に救急車に乗せられた。特に体に異常はないけれど、スプーン一杯の水で、という話もあるくらいだから検査はしておかないといけないね。
それにしても何か忘れているような……?
まあいいか!家帰って寝よッ。
_ _ _
今日も元気に部活するぞー!
と意気込んでいたにも関わらず、顧問や部長や部員たち、簡単に言えば部活動の関係者全員から帰宅命令が出た。なんでや!?更衣室に入ろうとしたら中から閉め出されたし、だったら直接練習場にと向かったら、こちらでも道すがらにわらわらと行く手を阻んできたのだ。だから、なんでや!!?
右に左に反復横飛びしながら、カバディの呪文を唱えつつ疑問を投げつけた。
そして投げ返されたよ新聞紙。
顔に当たって痛いです主将!
「お前また無茶しただろう!よって三日間の部活禁止令を出す!!顧問には了承をもらっているからな、そして部員も全員同意している。大人しく帰れ!!」
「そんな殺生な!」
おーいおいおい!と嘘泣きしつつ様子をチラ見。しかし主将は変わらず厳つい顔で梃子でも譲ってくれない。ちらりと部長を見る。ほやほや笑っているが視線が冷たかった。ちくしょーブルータス、お前もか……ッ!!
私は泣き真似をしたまま走り去った。乙女走りで。
「あいつ実はそこまでショック受けてないだろ」
_ _
ストレスたまるぜ!と衝動買いした肉まんを右手に持ち、左手に抱える袋には餡まん・ピザまん・チョコまん・カレーまん、しまいには誰が買うんだ鰻まん。私が買ったよ!それぞれ二個ずつ買ったよ!このくらいの量、フードファイターな女子高生探偵の足元にも及ばんのです。
そんな分かりやすい自棄食いをしながら、投げ付けられた新聞紙の一面を歩き読んだ。
「“お手柄?女子高生!溺れた少年を救出!!”
……いやいやまさかそんな私のわけ無いって思いたいけど、この平謝りの後ろ姿は間違うことなき私。確信。なんで載ってんだよ新聞、私知らないよ……」
だからかー。だからあの対応かー。
流石に病院で検査受けた翌日から部活動はダメだわ、休んどこ。三日休めばまた部活して良いんだから、無理に参加する必要性は無いね。
ぁ、でもそれだと土曜日以来練習してなぃ……、っまり4日間も部活できなぃってこと……、もぅマヂ無理……、自主練しょ……。
「誰か──……!!」
一人懐かしいネタで脳内遊びしていると、屋内から屋外に向けてのくぐもった悲鳴が上がる。
途中で押さえられてしまったようで、短いそれに気付いたのは通行人数人。その内の何人が場所を特定して駆け付けられるかって言えば、今回に限りは一人だった。そう、私だね!聞き覚えがあるから特定余裕でした。
さっき中華まんを大量買いしたコンビニに俊足で逆戻りし、軽やかな音楽に出迎えられて入店する。
素知らぬ顔でいれば、レジ前にはフルフェイスの怪しい人物。右手には自動式拳銃を持って、左手には黄色いカチューシャの可愛い女の子を抱えている。分かりやすくコンビニ強盗してんなぁ。
暢気に考えながら、表情には驚きを浮かべる。ひぇ、コンビニ強盗怖ぃょ……。さっきのノリが頭から離れない。
「チッ、人が増えたか。全員大人しくしろ!両手を上げて、床に座れ!!」
いきなり叫ばれた。いや、叫びます、て断り入れられてもなんだかなって感じだけどさ。
ぐるりと回りを見渡すが、商品棚が邪魔でどこに何人いるか把握できない。防犯ミラーを見上げるが、そこまでハッキリとは分からなかった。
改めてフルフェイスを見る。今は背を向けていて隙しかない。右手の拳銃は、おいまじかよ安全装置ついたままじゃん素人かよ。
「あ!」
「騒ぐ、な゙っ!!?」
「おっと、手が滑ったーッ!」
声を上げ、フルフェイスが振り返った瞬間に中華まんが大量に入った袋を投げ付ける。でもって同時に走り出す。
緩んだ左手から女の子を助け出し、ずっと視線を向けていた友達らしい男の子三人女の子一人男性一人の方へと背を押す。それから右手の拳銃を上から握り込んで、手首ごとフルフェイスの胸元に当ててあげた。パチリ、と安全装置を外す。
「セイフティを外し忘れるなんて、中尉に平手打ちされますよ」
あの美しい鳶色の瞳に睨まれながら、なんて逆にご褒美ですけどね。嫌われたくないからやらなかったけど。
「撃ちます?それとも大人しく警察に行きます?」
「大人しく警察に行かさせていただきますッッッッ!!」
「そんなに泣かなくても良いのに」
フルフェイスの下部の隙間から、ダラダラと涙なんだか何なんだかが流れ出ていて正直引いた。
数分後、警察のパトカーが到着。
犯人を引き渡してめでたしめでたし、としたかったのだけど、そんな丸く収まらないのが現実なんだよ。
はい、はい、すみません!拳銃持った強盗犯に突っ込むとか、どこからどう考えても頭おかしいですね申し訳ありませんでしたッ!!でも安全s、あ、そういう問題ではない?ですよね!え?事情聴取?お姉さんがしてくれるなら喜んd、いえ、すみません。ちなみにお名前は?佐藤さん?へー、佐藤美和子さんって言うんですか。美しい貴女にお似合いの素敵なお名m、はい、ごめんなさい、真面目に聞きます。はい……、はい……、たいへんもうしわけなく……。
事情聴取と言うよりも厳重注意をされて、警察の人にこってり搾られた。カラッカラです。しかし美人刑事に出会えたので是非もなし。
「お姉さん、お疲れ様」
「「「こんにちはー!」」」
「え、あ、はい。お疲れ様ですこんにちわぁ……?」
出待ちされてた。警察署前には男の子が三人と女の子が二人、男の人が一人。元気な挨拶に、まさか素通りするわけもいかず足を止める。
「お姉さん、さっきはありがとう!」
「さっき?あ、あー、捕まってた子はあなただったんだね」
すまん、正直犯人しかしっかり見てなかった。カチューシャまでは認識したんだけど。通りで見覚えがあったわけだ。昨日遊んだじゃん。
「昨日もでしたけど、お姉さんってすごい人ですね!」
「な!今日は強盗犯を捕まえちまったし、昨日は溺れてたやつ助けたし!!」
「かっこ良かったぁー!」
「ははは。いやぁ、ありがとう……」
本当は褒められてはいけないことだし、実際昨日も今日もしこたま怒られたし。なのにそこにしびあこ〜、みたいなキラキラした視線が心に痛い。
足元でわらわらする子どもたちの対応をしつつ、意識は一歩下がってこちらの様子を窺う三人に向ける。眼鏡の男の子と、赤茶の髪の女の子と、細目眼鏡のお兄さん。めっちゃ警戒されてるぅ〜、最後のお兄さんは初対面だけど出来る人だってすごく分かるぅ〜。
いや!だって!まさか!いると思わないよね!?私が中華まん大量買いした時には居なかったし。入れ違いか?あぁ〜、この人たちがいるならわざわざ私が駆け込まなくても解決してたんだろうなぁ〜。
「はじめまして。尾長ケイさん、でよろしいですか?」
「ヒェ……。は、はい。はじめまして、尾長ケイと申します。失礼ですが、お兄さんは?」
「ああ、僕は沖矢昴と言います。彼女の住んでいる阿笠さんの隣に居候として住んでいる者ですが、今日はこの子たちと一緒に買い物に出ていたんですよ」
な、なんか糸目眼鏡さんがグイグイ話し掛けてきた。これは無条件でビビる。なんか私悪いことしたかな……、したからさっきまで警察署で説教されてたんだわ。
それで一体何の用だろう?怪訝な顔をすると、察する大人は、あぁ、と声をあげた。
「実はコナンくんが、時間が遅くそろそろ暗くなりますし、あなたを送ってあげた方がいいのでは、と言うものですから」
「うん!それにボク、ケイ姉ちゃんともっとお話ししたいんだ!!昨日はあのまま帰っちゃったでしょ?」
私の顔、引きつってないかな?もう、眼鏡少年くんのあざとさに萌えればいいのか青くなればいいのか。分からなくて表情がわちゃわちゃするぜぇー。
断ろう、そうしようと私が口を開く前に先制パンチを食らった。少年探偵団より、純粋に「一緒に帰れるの嬉しー!」を頂きました。断れるわけがねぇ。「僕も嬉しいなー」に関しては純粋さに欠けるのでやり直しを要求する。
お言葉に甘えるしかなく、しかし車に到着して一言。
「これ私乗れます?」
この車の乗車人数、たぶん大人四人だと思うんですけど。
「そっかぁ。じゃあ私たちは博士にお迎えお願いするね!」
「電話したら、すぐに来てくれるそうなのでボクたちのことは心配しないでください!」
「帰りにコンビニ寄ってもらおーぜ!」
切り替え早い、行動早い、コンビニ強盗遭った後にまたコンビニとか強い。
当たり障りなく乗車拒否しようとしたけど無駄だった。「そっかー、気を付けて帰ってねー」と半ばやけくそに言っておく。「「「はーい!」」」の良い子なお返事が悲しい。
「じゃあお姉さん、ボクたちと一緒に帰ろうか?」
「……よろしくお願いしまーす」
ねぇ、これって私本当におうち帰れるん?
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