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一人の、女がいた。

女は大樹を見上げていた。長い髪を揺らしながら、女はじっと大樹を見上げていた。

女の白い手が太く、硬い幹にふれる。壊れ物に触れるかのように、女は大樹に触れる。


「――――――――――」


女が唇を開いた。
その旋律は緩やかな風となり、世界に響き渡る。

風を揺らし、海を駆け、空を行く。

世界に響き渡る《歌》を奏で、世界に溢れる《命》を生み、女は――