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「喰らえ!置き土産どっかぁぁぁぁん!!」
「姉ちゃん煩い」
「さーせんした」


イヤホンを伝わって鼓膜に響いてくる爆音に高笑いしていると、隣に座る弟から物凄く冷たい視線をいただきました。
思わず即答、しかも棒読みで謝ると弟は溜め息ひとつついて自分のVITAに向き直る。


「つか見てよ弟よ。ゲーデの最終形態とかこれ反則じゃね?当たらないんだよ、攻撃が当たらないんだよ…!」
「それはもう100回以上聞きました」
「100回以上言いました。そっち今どこよ?」
「ウィダーシン」
「あぁ、あれどっちかってーとカノンノの方が強かった気がする…主に情という点で」
慈悲の欠片も無しに爆破してたくせに
過ぎたことは気にすんなよ片割れ
「うっわー姉ちゃんの片割れとかなんか響きがヤダ」
「エッ酷くない?」


反抗期なの?ちょっと遅い反抗期なの?思春期なの??
しかしそれを口にすると冷たい一瞥をいただくことになるので私は口を閉ざす。ふふん、お姉ちゃんは空気が読めるのだ。年頃の男心は複雑よの…。


「つーか姉ちゃん、テスト期間だろ。勉強しろよ」
「私の辞書に勉強という文字はない」
「じゃあ書き足せよ」


やなこった。
んべ、と舌を出し、私は弟―――彰を見やった。
というか君も学生なんだから同じくテスト週間の筈なんですけどね?
そう言うと、「おれは日ごろから勉強してるから姉ちゃんと違って特別なことはしない」と論破された。実際こいつは頭がいい。同じ両親から生まれたのに何故…アッ日ごろの行いですねわかります。
私は溢れていないが流れた気がした涙を指でそっと拭う。ダメだな、過去を見るな今を見ろ。じゃないと虚しくなってくるだけだ。


「つーかさ、姉ちゃんもうゲーデとか余裕だろ。なんで何回もおんなじセーブデータでやってるわけ」
「私のゲーデへの愛が永久不滅だからに決まってんだろ☆」
「重い」
「言うな」


自覚はしてる。つか鼻で笑うな、そこ。
今ですらウィダ様の相手してるやつに言われたきゃねーんだよ。


「姉ちゃんがしないからおれがやってんだよ」
「やってるよマイソロ1。パスカ・カノンノとアウロラに会いに」
「女の子ばかり…だと…」
「ウィダ様の攻撃演出かっこいいよね。いやでもその無印も好きなんだけどさぁ…なにぶん攻撃の手が遅くてな…」


あと秘奥義演出がな…ちょっとな…。寂しくてな…。

私はポチリ、とステータス画面を開いた。
うわぉ、いつ見ても半端ないレベルだわこれ。既にアンノウンでも行ける主人公に拍手喝采、そしてそこまで育て上げた私には表彰を。
もちろんマイソロ1でもこのくらいレベルいってたけどな。ちなみに職業は両者ともに盗賊がデフォだ。盗み万歳爆弾万歳!!
ちなみにさっきの置き土産ってのは爆突轟衝撃のことだ。あの技一番好きなんだよなー。秘奥義も好きなんだが、なんで金落とすかなーデッドスパイラル……。
ほかに好きなジョブといえば、このTOW2で新たに追加された《双剣士》かな。あの手数の多さが素敵。しかしビショップも捨てがたい。ビバ★ダイダル無双。レベル上げのお供にぜひ。3だとガンマン一択。いや本当あの壊れ性能なんなの…?あのジョブ解放すれば大体勝てる…。4の発売いつまでも待ってます。

私はVITAをスリープモードに移行し、座っていたソファーから立ち上がった。


「じゃ、お姉さまもう寝ますからねー」
「自分でお姉さま言うな。つか姉ちゃん、テスト勉強」
「ウェーイお休みー☆」
「…今回もだめだったよ…あいつは人の話を聞かないからな…」


取り合えずでこピンしといた。