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ほう?それはつまり、
「俺が家事をするのが信じられん、と」
「えっ!いやっ、そんなんじゃ…ご、ごめん!」
ルークは慌てて俺に謝ってきた。
その必死な様子にクスリと笑って、謝るほどのことじゃない、と言うとルークは安心したように眉尻を下げた。
「まぁ確かに信じらんねーだろうな。俺がこうやって料理してるの見たのって、リッドとー、キールとー………あとはパニールくらいじゃね?まだ来て日も浅いしさ、俺」
「えっ、そうなのか?」
「あぁ、そういやそうだな。なんかもうギルド発足当時からいるような気がしてたけど」
「いやいや、まだまだ俺は新参者ですよ、リッド先輩?」
「うげぇ、やめてくれよ。俺先輩って柄じゃねーし」
「古株だと思ってた…」
「馴染みすぎなんだ、こいつは」
ずず、とコーヒーを啜り、キールが言う。
「…あれ、そういえばカノンノは知らないのか?お前が料理出来ること」
「ん?あぁ、そういや知らないなぁ…パニールが話した様子もないし」
そう言うと、ルークは目を丸くした。
カノンノと俺は傍目から見ても仲が良い。そんなカノンノが俺の些細な特技を知らないのは確かに意外なのかもな。
ちなみにリッドとキールが知っているのは成り行きだ。
ちょっと前、リッドが「腹減った…」とか呟いたから簡単に料理を作ってやったのが始まりだ。ちょうどそれをたまたま通り掛かったキールにも見られたんだよな。
で、パニールに至ってはその場にいたからとしか説明できないし。
「つまり、ルーくんは記念すべき四人目なんだぜ。誇りに思うが良いさ!」
「誇りに思う理由がわからないぞ」
コーヒーを一口啜ったキールがボソリと呟く。それを無視して、俺は蛇口を閉めて水を止めた。
器具を清潔な布巾で拭き、棚に戻していく。
全てを戻し終わった頃、ケーキが焼き上がった。
火傷防止のミトンをはめ、こんがり狐色に焼き上がったケーキをオーブンから出す。本当はこの後スポンジを冷まさなきゃいけないんだけど、リッドが今にも飛びかかりそうな目でガン見しているから、生クリームが溶けないくらいの温度になるのを見計らってデコレーションをする。
冷蔵庫から冷やした生クリームを塗り、フルーツを飾り付けて完成だ。
「うわっ!美味そう…!」
「…リッド」
いつの間にここまで来たのだろうか。リッドはカウンターから身を乗りだし、空色の目を宝石のように輝かせながら完成したケーキに熱い眼差しを送っていた。嬉しそうにゆるんだ口から今にも涎が零れ落ちそうだ。
俺は苦笑しながら余ったリンゴをひときれつまむと、リッドの口に押し込む。
「ちゃんとお前らにもやるから。人数分の皿とフォーク出してくれよ」
「おう!」
シャリシャリと口を動かしながら、リッドは意気揚々と食器棚に向かった。ルークも手伝え、と言うと、彼は軽く頷きリッドと共に食器棚を覗く。
その間に俺はケーキをテーブルの上に置くと、包丁で適当な大きさに切り分けていった。
「レイン、オレ一番大きいのな!」
「どれもおんなじだよ」
「うわー…すげぇな…」
皿を持って目を輝かせるリッドと、フォークを持ってケーキを凝視するルーク。二人の反応に、俺は苦笑して皿を受け取った。ひときれずつケーキを皿に乗せていく。大きいの、大きいのとうるさいリッドの皿には特別にケーキをふたつ乗せてやった。
ルークの分を乗せた皿をルークに手渡すと、「いいのか?」と首を傾げてきたので「味の保証はしないけどな」と笑って見せた。
そしてキールから読んでいた本を奪い、代わりに空いた手にケーキの皿を渡す。何するんだ、と不満気な彼に、休憩と糖分も大事だろと笑えば、彼は渋々皿を自分の前に置く。
キールが読んでいたページに付箋を貼り、しおりがわりにして本を閉じた。
クロートの前にフルーツだけがのった皿をおき、俺は自分の分を皿にのせると席につく。
「さ、召し上がれ」
「おう!いっただっきまーす!」
嬉しそうにケーキにがっつくリッドに笑みを浮かべ、俺は一口サイズにケーキをフォークで切り分けると口に入れた。
ふわふわのケーキに、冷たいクリームとフルーツの酸味が美味しい。うん、なかなかうまくできてるんじゃない?ちょっと自画自賛。
「…すげっ!美味いぞこれ!うちのパティシエと同じくらい美味しい!」
目を輝かせたルークに苦笑して「大げさだよ、でもありがとな」とお礼を言い、フォークにさしたフルーツをクロートの口元へ持っていく。
まぐまぐとそれを食べるクロートの頭を撫で、「まぁ、悪くはないな」と呟き黙々と食べていくキールにそっと微笑んだ。
穏やかな日々に笑顔を交えて
(レインっ!おかわり!)
(食い過ぎだぞリッド!つーかそれは俺のだっつーの!)
(ヘヘッ、こーいうのは早い者勝ちなんだぜ、ルーク!)
(お前らは子供か赤毛組。…あ、キールほっぺに生クリームついてる)
(え、どこだ)
(ここ、ここ)
(にゃー)
その後騒がしい食堂を覗きに来たパニールも一緒にお茶会を楽しんだのは、また別のお話
090826