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「私もここで大佐のお手伝いをしますぅ。いいでしょ?いいですよね〜♪」
「その代わり、ここで働いてもらいますよ。アニスさんがそれで構わなければ」


アニスの密かな圧力(?)にも全く動じることなく冷静にきっぱり言い切ったチャット。なんか彼女が初めて船長に見えました(え?)


「はうわぁっ!ここギルドでしょ?結構ハードな仕事とかは、ちょっと遠慮したいかな〜、なーんて…」


アニスはチャットの言葉に大袈裟なまでに反応を示し、愛想笑いを浮かべる。できればやりたくないな〜オーラを放つアニスに、ティアとジェイドが同時に溜め息をついた。


「アニス…変わらないのね」
「どうやら私は部下を甘やかせ過ぎたようですね…」


はぁ、と憂いを帯びた溜め息をつくジェイドに、アニスがびくりと震える。次の瞬間、ジェイドがにこりと非常に何かを楽しんでいるかのような笑みを浮かべた。


「もちろんアニスの為に、とびっきりハードな任務を用意してもいいんですよ♥」
「や、やだなぁ!何を言ってるんですかぁ大佐!ギルドの仕事も頑張っちゃいますよ!」


上司による笑顔の圧力を見た瞬間。
二人の様子を眺めていた俺は、内心でこっそり呟いた。


「そうですか。では、暴走しない程度に頑張ってください」


その言葉、普通の人に言ったら若干失礼だぜ。旦那。
(アニスは普通じゃないとか、そんなことは決して思ってはいない。えぇ断じて思っていないとも)




***




アニスの部屋はジェイドとティアの間の空部屋となった。軽く監視状態だよな、何て思いながら、ナチュラルに俺の部屋の場所を聞いてきた彼女の世話はグランマニエ組に任せ、俺は甲板に戻ってきていた。え?もちろんにこやかな笑顔でスルーしたよ。
甲板に続く扉が開いた瞬間、強い潮風に飛ばされそうになる帽子をあわてて押さえた。


「レイン!」


その声にぱち、と瞳を開く。
甲板の柵によりかかってこちらに向かって手を振っていたのは、カノンノだった。彼女の側にはパニールもいる。


「ごめんな、待ったか?」
「ううん、大丈夫!ジェイドさんたちは?」
「話が一段落ついて、あの女の子を部屋に送ってったとこ。やっと解放されたかんな、待たせた」
「きゃっ!」


わしゃわしゃ、とカノンノの頭を撫でる。乱れた髪をあわてて直すカノンノを見ながら、ふと昔を思い出した。
昔、こうやって頭を撫でるとアイツはたまーに怒ったんだよなぁ、なんて考える。その後元に戻してやるから、機嫌がそれ以上悪くなることはなかったけれど。
ふむ、そういえば周りから俺たち姉弟は顔立ちがよく似てるって言われたっけ。…それを考えると、ちょっと男の格好しただけでそれらしく見えてしまうのはそのあたりが原因…?ううーん喜ぶべきか嘆くべきか。

そっと遠い目をしながら、昔弟によくやっていたように髪を整えてやり、むぅ、と唇を尖らせてこちらを見るカノンノの仕草が、アイツに重なって小さく笑った。


「…あきら」
「? レイン…?」
「なんでもないよ」


ぽつりと呟いた弟の名前は、潮風と青空に溶けて消えた。







遠い場所に、は一人


(一度思い出したら、それは後から後から溢れていって、)
(同時に自分は今、限り無く遠い場所にいるんだな、と再認識させられた気分だった)






091030