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「――――じゃあ、本国には戻られないんですかぁ?」
「はい。敬愛する皇帝陛下へは、懇切丁寧に文書で説明しましたから大丈夫ですよ♪」
変なところに力入れたなお前。
バンエルティア号に一時帰還してきたオレ達は、アニスとジェイドを客間に通してゆっくり話をさせていた。ちなみに俺はお茶運び係だ。
「どーぞ」
「ありがとうございますぅ♥」
紅茶の入ったカップをアニスの前に置けば、アニスはきょる〜ん☆という効果音がピッタリな仕草で体をねじらせる。
…アニス、俺…女だからね…?
ちょっと物悲しい気分で同じようにジェイドの前にもカップを置く。そして茶請けとしてパニールお手製蜂蜜クッキーをテーブルに置いた。
「んもぉ〜大佐☆私をお側においてもらわないと困っちゃいますぅ。なんたって、アニスちゃんは大佐の部下なんですから!」
「貴女には本国で情報を集めるという仕事があるでしょう」
可愛らしい笑顔を浮かべながら体をくねらせるアニスにものともせず、ジェイドは淡々と言う。アニスがにんまり笑った。
「その情報を持ってきたんですから!お仕事忘れてませんよ、偉いでしょ〜♪褒めて褒めて〜♥」
「う、わっ!?」
いきなり背中に抱きつかれ、思わず前のめりになる。だがそこはなんとか踏みとどまった。
「アニース。遊んでないでその情報とやらを早く報告してください」
ジェイドの言葉に、アニスははーいっ♥と元気よく返事をしてオレから離れる。うーん…俺女なんだが…。
つかこの話、俺ここにいていいの?
「実はですねぇ…」
邪魔しちゃいけないよな、と思いそっと部屋を出ようと扉に手をかけた。
「ナパージュという村で、マナではない代替エネルギーが普及し始めているみたいなんです」
だが、その言葉でピタリと動きが止まってしまった。
「確か…『ラルヴァ』とかいうエネルギーらしいですよ」
「それは興味深いですね…是非とも詳細を知りたいものです」
ラルヴァ、か。
俺は小さく息をつき、そのまま扉を開けた、ら。
「ジェイドさんっ!」
「おわっ!?」
俺を押し退けるようにして、チャットがずかずかと大股で歩いてきた。
「おや船長。お帰りなさい」
「お帰りなさい、じゃないですよ!船長を置いていくとはどういうことですか!この船にいる以上、団体行動はきちんととってください!」
「これはこれは申し訳ありません。船長ならば私がいなくとも大丈夫だと勝手に思い込んでおりました。以後気を付けます」
うわぁこれは…。
と思いながら、大きく開けられた扉の向こうを見る。ばたばたばた、と複数の足音が聞こえてきた。
「待てよチャット、取り敢えず落ち着けって!」
「今はお客様がいらっしゃってるってパニールが言ってたじゃない!…あら?」
「よ、お帰りご両人」
チャットに続いて部屋の前まで走ってきたのは、ルークとティアだった。どうやらチャットは二人と合流できたらしい。
…あれ、あの女嫌いどこいった?
「が、ガイならパニールの所に荷物置きにいってもらってる」
「あ、そなの」
「それより…」
「あれぇ?ルークにティアじゃん!」
俺の思考に気づいたらしいルークが、息を切らしながらガイの居場所を教えてくれる。それを遮るように部屋からチャットを連れ出そうと手を伸ばしたティアだったが、突如聞こえた声に動きを止めた。
「…アニス!?」
「ええっ!な、なんでアニスがここにいるんだよ!?」
「アニス、貴女は本国で情報収集だったはずじゃ…」
「その情報を持ってここに来たの!偉いでしょ?」
チッチッチ、とたてた人差し指を振りながら、アニスは得意気に笑う。
そこでチャットが、ようやくアニスに気が付いた。
「この方はどなたです?」
「これは私の部下でして。アニスー、この船の船長さんに自己紹介を」
「はぁい、大佐っ☆アニス・タトリン。ピッチピチの13歳です♥よろしく!」
死語だ。
ほっぺたに指を当てながら体をくねらせるアニスに、思わずそう思ってしまった。