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ジェイドとリフィル、二人のカップを下げ、それをパニールに返し食堂を出た時、そいつはふらりと俺の前に現れた。


「ハロー、麗しのハニー♥」
「…………」


なんだコイツ。
肩に乗ったクロートからそんなオーラをひしひしと感じた。


「ん〜?なんだいハニー、オレ様の事そんなに熱〜く見つめちゃって。もしかして、オレに惚れた?」
「………………」


…えと、取り敢えず俺にどーしろと…?


「俺様はゼロス・ワイルダー。世界樹を奉じる神子だ。ハニーの名前は?」
「レイン…だけど」
「レインちゃん…う〜ん、美人なハニーは名前もぴったり!クールだねぇ!」


美人…うん、お世辞だとは思うけど一応ありがとう?


「…にしても、見れば見るほど美人だねぇ。こりゃ、ちょっくら気合いを入れて挨拶し直さねーとな☆」


いや、挨拶とか一回でいいんだけどとか思う俺って結構冷めてると思う。
取り敢えずいきなり肩を抱いてきたこのアホ神子を何とかすべきですか?


「じゃ、改めて…初めまして、可愛コちゃん♥俺様はゼロス・ワイルダー。キミと夢の時間を共に過ごす為に遣わされた、美の化身さ」


空いている方の手で俺の髪に触れ、そっと口付ける。その行為に、思わず目が真ん丸になった。
そんな俺の仕草に、ゼロスは妖艶に笑う。


「剣はお手の物だし、魔法も嫌いじゃない。いつだってお手伝いするぜぇ?


――――二人っきり、ならな?」


耳に唇を寄せ、熱っぽく囁くゼロスを思わず振り向く。
え、つか、っ耳、みみ…っ!


「キシャァァァァ!」
「おわっと!」
「クロートっ?」


いきなりクロートが鋭い爪を出し、ゼロスの顔めがけて飛びかかった。
ゼロスは優雅にそれをかわすが、クロートは全身の毛を逆立て唸る。


「何すんだよこの猫…!俺様の美しい顔に傷ついたらどうしてくれんの!?」
「フシャー!」
「『何が美の化身だ片腹痛いわ不良神子!』…だって」
「テメェクソ猫!調子のってんじゃねぇぞ!」
「フーッ!」
「…ああはいはい、落ち着けクロート」


殺気立つクロートはひょいと抱き上げ、俺は幼子をあやすように胸に抱く。優しく撫でてやれば、クロートはだんだん殺気がおさまってきた。未だ鋭い瞳はゼロスを睨んだままだったけども。


「悪かったな、ゼロス。気を悪くしないでくれ」
「…ま、麗しのハニーの頼みならしゃーねぇな」


ゼロスは朱い髪をガシガシと掻きながら肩を竦めた。
「せっかくキメたのになー」とか言った時に再び殺気立ったクロートを宥め、俺はゼロスを見る。


「取り敢えずご丁寧に挨拶ありがとう。これから一緒に働く仲間になるわけだし、よろしくな」
「こちらこそよろしくね、ハニー♥」
「フシャーッ!」
「うわっとビックリしたぁ!」
「あ、コイツはクロート。普段は一応おとなしい…筈なんだがな。まぁいいか」


いやよくねーよ、とゼロスが心の中で突っ込んだのを、俺は知らない。


「…あ、そういやチャットの皿下げにいくの忘れてた。それじゃあゼロス、また」
「あぁ、またなハニー」


ひらひらと手を振るゼロスに手を振り返し、俺は踵を返すと足早に機関室へと向かう。


「あ、そうだ」


だが、ふと足を止めた。


「ゼロス!」
「ん?どうしたハニー?」


丁度ゼロスも何処かへ行こうとしていたのか、こちらを肩越しに振り向く体制で止まっていたゼロスに、俺はにこりと笑って言った。


「また今度一緒にクエスト受けに行こうぜ。




…二人っきりでな、ダーリン?」


パチン、とウィンク&ニヒルな笑顔付きでそう言ってやると、ゼロスが盛大に固まった。俺こういうのは結構ノるタイプなのよ?
不意打ちに成功した俺はそのまま踵を返すと、さぁ急げとチャットの元へ向かった。
あぁ、そういやその後書庫室行かなきゃだっけ。今頃キールが古代の文献引っ張り出して散らかしてる頃だろうし。あぁ忙しい。


「…………………………え、マジで?」


石化したゼロスが元に戻ったのは、リフィルが偶然その場を通りかかったときだった。





不意ちだった、その一撃




(キール〜ほら、差し入れ…ってやーっぱりな、また本散らかしてる)
(うっ…!)
(まぁ勉強しようって姿勢はいいけどな。ほれ、パニール特製ココア)
(…ふん、仕方無いな。貰っておいてやるよ)
((何このツンデレ))



(…俺様だっせーかも……)
(は?どうしたゼロス、頭打ったか?)
(ロイドくんひでーのな)





091122