朦朧とする意識の中、敬愛する船長のことを考えていた。船長であるあの人には、死にかけのところを拾ってもらい、面倒を見てもらった大きな恩がある。その恩をまだ返しきれていないというのに、毒ガスなんかで死んでしまうんだと思うと情けなくなる。

仲間たちは、ミンク族のみんなは無事なのか。無事を確かめたいけれど磔にされたせいで身体は動かない。当たり前だけど柱に縛りつけられたのも拷問のように一方的に攻撃をされたのも初めてだった。毒ガスを吸ったのも、初めてだ。

こんなところで、毒ガスなんかで死にたくない。夢があるのに。キャプテンにももう一度会いたいのに。でも身体が動かない。瞼が重たくなってくる。さすがに死を悟った、その瞬間。

「シロちゃん!」

かすむ視界にきれいな金色が映った。その色は見覚えがある気がしたけれど、それが誰かを考える余裕はない。

「クソッ!あいつら、シロちゃんになんてことを……!」
「あなたは……」
「敵じゃないから安心してくれ、おれの仲間がいま解毒剤を作ってくれてるからもうちょっとの辛抱だ」
「仲間が、」
「ん?」
「仲間が、いるの……ミンク族のみんなも、ぼろぼろなの……わたしはいいから、みんなをたすけてあげて、」

柱から降ろし、抱きかかえてくれる腕をつかんで必死に訴える。大切な仲間。大切な仲間の大切な故郷。失いたくない。あんな奴らに、これ以上壊されたくない。息も絶え絶えにそう助けを求めると、手を力強く握られた。

「大丈夫だ。おれの仲間が頑張ってくれてる。きみの仲間も、ミンク族のみんなも必ず助けてみせる」
「ほんと…?」
「本当だ。だから安心して」
「うん、」
「あとはおれたちに任せて」

頭を撫でる優しい手に、優しい笑顔に、つう、と涙がこぼれる。
目を背けてしまいたくなるほどに残酷な蹂躙。突如撒き散らされた毒ガスはあっという間に広まり、いとも簡単に戦闘力を奪った。そこから始まる拷問、終わらない破壊。
ハートの海賊団の中でも突出した強さから目を付けられ毒ガスで動きが鈍ったところを磔にされてしまい、傷付けられるたび、その者は関係ない、離せ、代わりに自分が受ける、と叫び続けるこの国の王たちの叫びも忘れられない。
この数日間、地獄にいるような気分だった。仲間の故郷を守るため闘ったこと。そのことに悔いはないけれど、さすがに死を覚悟していた。

「よく頑張ったな、シロちゃん」

優しい笑顔に、懐かしい気持ちになる。
だれだっけ。会ったことがあるよね?なんで名前を知っているんだろう。ちゃんと顔が見たい。
聞きたいことはいっぱいあったけれど、極度の緊張状態からようやく解放されて眠るように意識を手放した。



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